始めに
マン『ワイマルのロッテ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
リアリズムの影響
トーマス=マンは、リアリズム文学からの影響が顕著です。
特に影響を受けたのが、フォンターネというドイツの詩的リアリズムの作家で、シニカルでリリカルなリアリズムを特徴とします。
またロシアの写実主義からも影響が大きく、ニコライ=ゴーゴリ、イワン=ゴンチャロフ、イワン=ツルゲーネフ(『父と子』『初恋』)に見える自己批判は、本作にも顕著に見えます。
ドイツなどのロマン主義の影響
マンはゲーテ(『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)を終生尊敬していました。ゲーテは古典や形式を重視する古典主義者であると同時に、作家や個人の主体性や形式主義的実験を重んじるロマン主義者としての側面があり、どちらかというとマンは前者の古典主義者としてのゲーテからの影響が顕著で、守旧的なスタイルを特徴とします。
本作も『若きウェルテルの悩み』のロッテのモデルになったシャルロッテとゲーテの再会を描く物語です。
またゲーテのロマン主義を継承するレフ・トルストイからも影響が顕著です。
語りの構造
ヒロイン=ロッテのモデルとなったシャルロッテとゲーテとの40年越しの再会を扱ったのが本作です。
宮廷顧問官夫人となっていたシャルロッテ=ケストナーは1816年に実際にヴァイマルを訪れゲーテと会っているものの、ゲーテの日記には9月25日にわずかに触れているだけで詳細は書かれておらず、マンはそれ記事をもとに本作を作りました。
作中では老いたシャルロッテのもとを訪れる様々な人物がゲーテについて語り、それぞれの章の中心となります。ゲーテの秘書をしていたリーマー、ショーペンハウアーの妹アデーレ、そしてゲーテの息子のアウグストなどの口を通してゲーテの人物像が多面的に浮かびあがります。
物語世界
あらすじ
シャルロッテ=ケストナーは、1816年9月22日の8時過ぎに、娘のシャルロッテとメイドのクララとともに駅馬車でワイマールに到着し、広場の最初の家である旅館「ツム=エレファンテン」に滞在します。シュトゥルム=ウント=ドラング時代の最も成功した小説『若きウェルテルの悩み』におけるロッテの「原型」としてのシャルロッテの評判は、数十年にわたって彼女の周りにありました。
シャルロッテは、旅行の表向きの目的である妹のアマーリエ=リーデルを訪ねる前に、短い手紙で「尊敬する友人」ゲーテに到着を知らせます。シャルロッテが旅行の疲れから休んでいる間、若いゲーテとその婚約者ヨハン=クリスチャン=ケストナーとの三角関係を思い出します。
シャルロッテがチェックインするとすぐに、彼女が小さな住宅街に到着したという噂が広まり、訪ねてきます。熱狂的なゲーテ愛好家であるウェイターのメーガー、若いアイルランド人のイラストレーター。他にゲーテの息子の元家庭教師リーマー、サロンニエールと作家ヨハンナの19歳の娘アデーレ=ショーペンハウアー、ゲーテの友人たち、そしてアウグスト=フォン=ゲーテ(ゲーテの息子)などです。シャルロッテと同様、彼らの人生はゲーテに深い影響を与えました。
ゲーテは小説の終盤にのみ登場し、シャルロッテを昼食に招待します。ここでシャルロッテは、絶え間ない変化を経て、友人で遠い存在でもあるゲーテに出会います。個人的な会話は最後にのみ行われ、二人はゲーテの馬車の中で超現実的で夢のような出会いをします。
参考文献
・村田 經和『トーマス=マン』



コメント