PR

大デュマ『モンテ・クリスト伯』解説あらすじ

(大)デュマ
記事内に広告が含まれています。

始めに

大デュマ『モンテ・クリスト伯』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

シェイクスピアとスコットの歴史劇

 大デュマはユゴーなどと並んで、フランスのロマン主義を代表する作家として知られています。

 特にシェイクスピアに影響され、またそのフォロワーであるウォルター=スコットをライバルのように見て影響もされました。

 シェイクスピアの史劇ではフォルスタッフに代表される架空のキャラクターを設定してて虚実を交えたダイナミックな歴史劇が展開されますが、本作も同様のコンセプトになっています。

新聞連載

 フランスではエミール=ド=ジラルダンの『プレス』とアルノー=デュタクの『世紀』が1836年に発行されて、新聞が定着しつつあり、新聞は定期購読者を繋ぎ止めるために連載小説を掲載しました。

 バルザック、ウージェーヌ=シュー、フレデリック=スーリエ、そしてアレクサンドル=デュマは、新聞連載を代表する作家になりました。

モデル

 ピエール=ピコーという靴職人の男が、資産家の女性との結婚を妬んだ友人たちによる偽りの密告で逮捕され、フェネストレル要塞に7年間収監された後、釈放後に変装してかつての友人たちを殺した事件がありました。パリ警察の記録係だったジャック=プシェがまとめた「復讐とダイヤモンド」という犯罪記録にこの事件が記載され、大デュマがこれをもとに本作を手がけました。

 本作は復讐に至るまでの展開は有名ですが、復讐のプロセスパートは人物が入り組んでいて混乱しやすいので、三人のターゲット(フェルナン、ダングラール、ヴィルフォール)の周辺人物とその顛末を整理していきます。

復讐のターゲットと顛末

 フェルナンとその家族

 フェルナン=モンデゴ はカタルーニャ系フランス人の漁師で、従妹のメルセデスに恋し、ダンテスを恋敵として憎んでいました。ダングラールに唆され、虚偽の密告状を提出しダンテスを陥れます。
 その後軍隊で陸軍中将にまで出世し、貴族院議員の地位になります。
 ギリシャ独立戦争時に行った不正義をモンテ=クリスト伯爵の作戦で新聞報道され、貴族院でエデにそれを証明され失脚します。息子アルベールがモンテ=クリスト伯爵との決闘を辞退したと聞くと、伯爵に決闘を申し込むものの、その正体を知って逃げ出します。逃げ帰った自宅で妻子にも見捨てられたことを知り、自殺します。メルセデスを得るためにダンテスを陥れたフェルナンですが、結局彼女と息子アルベールに見放される末路でした。

 フェルナンの妻になったメルセデスはダンテスと和解します。

 フェルナンの息子アルベールはダングラールの娘ユージェニーが許嫁ですが、結婚に乗り気ではありません。ダンテスの父への行動に憤るものの、事情を知って、復讐を認め、母と二人でフェルナンを絶縁します。

ヴィルフォールとその家族

 ヴィルフォールさマルセイユの検事代理です。王党派で権力欲の塊で、ダンテスの無実を知りながら、彼の持っていた手紙が自身の失脚に繋がるため、保身のために手紙を隠滅し、ダンテスを政治犯として重犯罪者が収監される牢獄シャトー=ディフに投獄します。
その後、検事総長に就きますが、モンテ=クリスト伯爵にそそのかされた妻エロイーズが家庭内で連続殺人を犯し、ヴィルフォールに断罪された夫人は、息子エドゥワールと心中します。さらに嬰児(ベネデット)殺害(未遂)の過去の罪をベネデットに暴露されて失脚し、モンテ=クリスト伯爵から正体を明かされた後、発狂するします。身内の暴走のスキャンダルを恐れてダンテスを陥れたのに、身内の暴走と自分のスキャンダルによって破滅する末路でした。

 
 エロイーズ はヴィルフォールの後妻で、実子のエドゥワールを溺愛し、先妻の子ヴァランティーヌを疎み、サン=メラン侯爵夫妻やノワルティエ老を殺害してヴァランティーヌに財産を相続させ、その上でヴァランティーヌを殺害して遺産をエドゥワールに継がせようとしますが、果たせずにエドゥワールと心中し、エドゥワールの死は、ダンテスに罪悪感を与えます。

 ヴァランティーヌはヴィルフォールと先妻の娘です。フランツが婚約者で、父に婚姻を進められますが、マクシミリアン=モレルと恋愛関係にあります。家長である祖父ノワルティエに可愛がられ、母方と父方の双方から財産の相続人に指名されています。彼女とマクシミリアン=モレルのロマンスが、重要なサブプロットで終幕を彩ります。

ダングラールとその家族

 ダングラール はモレル商会の会計士です。ダンテスの出世を妬み、また帳簿の不正を知られていたため、虚偽の密告状を作ってフェルナンに提出させます。
 ダンテスが投獄された後、モレルの紹介でスペインの銀行へ入行し、頭取の娘と結婚します。フランス有数の銀行家になり、妻を亡くした後で貴族の未亡人と再婚し男爵の地位を得ます。
 やがてモンテ=クリスト伯爵の策略にり、融資先が突然破産、安定していた公債を売却するなどし、銀行の経営が傾きます。娘ユージェニーをアンドレア(ベネデット)と結婚させ、彼の実家から送られる結納金を得ようとするものの、結婚式の最中にアンドレアの正体(ベネデット)が発覚し、娘にも捨てられます。
 最後に残った預金をモンテ=クリスト伯爵とボヴィルに同時に引き出されて、不渡りを出し、家族を捨てて夜逃げします。ローマで伯爵の受領証を換金しますが、伯爵に指示されたルイジ=ヴァンバの一味に拉致され、食事と引き換えに金を奪われ、餓死寸前になります。やがてモンテ=クリスト伯爵から彼自身の正体を知らされ、放心状態で解放されます。

 嫉妬から、出世と富のためにダンテスを陥れたものの、ダンテスによって富も地位もすべて奪われます。他方でエドゥワールの死により丸くなりつつあったダンテスにより、命までは奪われずに済みます。

物語世界

あらすじ

 1815年2月、ナポレオン=ボナパルトがフランス帝国の皇帝位を逐われてエルバ島へ追放されていた頃。マルセイユの船乗りエドモン=ダンテスは、航海中に死んだ船長の遺言でエルバ島に立ち寄り、ナポレオンの側近のベルトラン大元帥に小荷物を届け、同席していたナポレオンとも面会します。そしてベルトランから、パリのノワルティエという人物に宛てた手紙を託されます。
 マルセイユへ帰港したダンテスは、船主のモレルから新たな船長への昇格を約束されます。それを聞いた会計士のダングラールはダンテスの出世を妬み、ダンテスの恋敵のフェルナンを唆して、検事のもとに「ダンテスがミュラからナポレオン宛ての手紙を委託されてエルバ島に届け、代わりにナポレオンから支持者に向けた秘密文書を預かった」という嘘の密告書を届けさせます。それを知らないダンテスは、婚約者メルセデスとの婚約披露パーティーの最中に逮捕されます。
 ダンテスを取り調べたのは検事代理のヴィルフォールで、ダンテスはヴィルフォールに対して、船長の遺言に従っただけであって預かった手紙もベルトラン大元帥の私的なものだと弁明します。ヴィルフォールはブルボン王家を支持する王党派でナポレオンを毛嫌いしていましたが、ダンテスは単に船長の遣いをしただけだと見て、安易にナポレオンと面会したことなどを咎めるものの、罰は軽くて済むだろうと話します。
 ところが、ベルトランの手紙の宛先はノワルティエだとダンテスが話すと、ヴィルフォールの態度が一変します。ノワルティエはヴィルフォールの父親で、検閲した手紙の内容はナポレオン軍の再上陸に備えて準備を進めるよう命じる、本当の秘密文書でした。ヴィルフォールは、王政復古の時代に身内にナポレオンの協力者がいることが明らかになると身の破滅につながると考え、ダンテスに手紙をその場で焼却させます。そして宛先を知るダンテスを、政治犯が収容されるマルセイユ沖のシャトー=ディフ(イフ城)に裁判無しで投獄し、生涯閉じ込めようとします。

 土牢の奥でダンテスは無為の日々を過ごします。朦朧とした意識の中で穴を掘る音に気付き、自分も穴を掘って音の主と出会います。それは隣の独房に投獄されていたファリア神父という老人でした。神父はダンテスの身の上話を聞き、ダングラールとフェルナンにはダンテスを陥れる動機と機会があること、ノワルティエとヴィルフォールが父子でヴィルフォールにもダンテスを陥れる動機があることを伝えます。ダンテスは、3人への復讐を決意します。
 神父は無知無学のダンテスに学問を教え、一流の紳士へと育て上げますが、やがて病に倒れ、モンテクリスト島に隠された財宝の在り処をダンテスに託して亡くなります。神父の遺体と入れ替わり、ダンテスはシャトー=ディフから脱出します。1829年2月で、投獄から14年の月日が過ぎ、34歳になっていました。
 ジェノヴァの密輸船に拾われたダンテスは、優れた操船技術と豊富な知識で船員たちに受け入れられ、船で働きます。他の密輸船との待ち合わせに船がモンテクリスト島へ立ち寄った際、ダンテスはひとりだけ島に残ります。そこで神父から教わった洞窟を発見し、財宝が詰まった箱を見つけます。
 戻ってきた船でダンテスはリヴォルノへ渡り、そこで財宝の一部を売却して、自身の船を手に入れます。そして収監される前から現在までの出来事を調査し、自分に襲いかかった謀略はファリア神父が推理した通りであること、ダングラール、フェルナン、ヴィルフォールがそれぞれ財産や地位を手に入れていること、父親は失意の中で死亡し、メルセデスはフェルナンと結婚したこと、そしてダンテスを助けようとしてくれたモレルが、今では破産しかけているとしります。

 ダンテスは「トムソン&フレンチ商会の番頭」を名乗ってマルセイユを訪れ、モレル商会最大の債権者である刑務検察官のボヴィルから20万フランの債権を買い取り、モレルと面会します。そのときモレルの頼みの綱であった、かつてダンテスが乗っていた船のファラオン号が沈没した報告があります。ダンテスはモレルに3か月の弁済猶予を申し出、モレルの娘のジュリーには3か月後に船乗りシンドバッドから指示があったら従うよう告げ、そしてファラオン号の船員を呼び集めます。
 3か月の間、モレルは金策をし、大銀行家になっていたダングラールに融資を求めて拒絶されます。期限の日、モレルの下へ、ジュリーを通じて弁済済みになっている証書が届けられます。モレルはさらに、新しいファラオン号が積み荷を満載して入港した報告を得ます。
 その9年後の1838年初頭、ダンテスはイタリアの貴族モンテ=クリスト伯爵を名乗り、ローマでフェルナンとメルセデスの息子アルベールと知ります。ダンテスはアルベールが盗賊のルイジ=ヴァンパに捕まるように手配し、少年を「救出し」、彼の信頼を得ます。アルベールは伯爵をパリの上流社会に紹介し、伯爵に変装したダンテスは23年ぶりにメルセデスと会い、やがてターゲットのダングラール、フェルナン、ヴィルフォールと出会います。

 伯爵はパリ郊外のオートゥイユに家を購入します。伯爵は召使のベルトゥッチョから、そこはかつてヴィルフォールがダングラールの妻と不倫をし、ダングラールの妻が子供を産んだ家であることを知ります。ヴィルフォールは不倫を隠すためにその子供を生き埋めにしていました。その赤ん坊はベルトゥッチョに救出され、ベネデットと名付けられ、ベルトゥッチョの妹のアスンタに育てられたものの、ベネデットは若い頃に犯罪に手を染め、アスンタを殺害し、自らもガレー船送りになりました。

 伯爵は、ダングラールを説得して600万フランの融資をしてもらいます。ヴィルフォールの2番目の妻エロイーズとさまざまな毒の特性について話し合い、薬品の一部を貸してやります。ダンテスが奴隷から買い取ったアリ=パシャ=オブ=ヤニナの追放された娘で、自分の保護下にあるハイデがフェルナンに会うことを許可し、フェルナンが彼女の父親を裏切って殺害し、財産を盗んだ男だと認識します。ベネデットとカデルースをガレー船から解放し、「ウィルモア卿」という偽名でベネデットを匿名で雇ってイタリアの貴族「アンドレア=カヴァルカンティ子爵」として、パリの社交界に紹介します。ベネデットは電信技師に賄賂を渡して偽のメッセージを送信させ、 金融市場を操作し、ダングラールに数十万フランの損失を与えます。

 一方、ヴィルフォールの娘ヴァレンタインはアルベールの友人フランツと婚約しているものの、密かにモレルの息子マクシミリアンに恋をしています。彼女の祖父ノワルティエは、ノワルティエ自身が決闘でフランツの父を殺したことを明かし、フランツに婚約を破棄するようそそのかします。

 ベネデットはダングラールに気に入られ、ダングラールはアルベールとの婚約を破棄した後、娘ウジェニーを婚約させます。カデルースはベネデットを脅迫し​​、新たに得た富を分け与えなければ過去を明かすと脅します。エロイーズはヴィルフォールの家族を毒殺し始め、家族の全財産が継娘ヴァレンタインではなく息子エドゥアールに相続されるよう目論みます。ノワルティエはヴァレンタインに、毒に対する限定的な耐性を与える薬を密かに投与し始めます。

 カデルースは伯爵の家を強盗しようとしたが、アベ=ブゾーニに捕まり、ダングラールに手紙を書かされ、カヴァルカンティが偽者であることを暴露されます。カデルースは屋敷を去る際、ベネデットに刺されます。カデルースは死の床で殺人犯の名前を口述し、伯爵は死ぬ前にカデルースに正体を明かします。

 伯爵は、フェルナンがアリ=パシャを裏切ったことを匿名で新聞にリークし、貴族院での告発に関する調査で、アイデーが目撃者としてフェルナンに不利な証言をする。アルベールは父の失脚を伯爵のせいにし、決闘を申し込みます。

 後に伯爵はメルセデスの訪問を受けます。メルセデスは初めて会った時に伯爵がダンテスだと気付いたものの、黙っています。メルセデスはダンテスに息子を助けてほしいと懇願し、伯爵もアルベールを殺さないことに同意します。メルセデスはアルベールに真実を明かし、アルベールは伯爵に公に謝罪します。アルベールとメルセデスはフェルナンを絶縁し、称号と財産を放棄して新しい生活を始めるために出発します。アルベールは兵士として入隊し、メルセデスはマルセイユにあるダンテスの古い家に一人で住むことにします。フェルナンはモンテ=クリスト伯爵と対峙し、伯爵は自分の正体を明かします。その後、フェルナンは銃で自殺するのでした。

「カヴァルカンティ」とウジェニー=ダングラールの婚約を祝うパーティーで、警察がカデルース殺害の容疑でベネデットを逮捕するために到着します。ベネデットは逃走するものの、逮捕され、パリに送還されます。ウジェニーもまた、恋人とともにパリから逃走する機会を得ます。

 ヴァレンタインはエロイーズによる最初の毒殺未遂からかろうじて生き延び、マクシミリアンは伯爵に正体不明の毒殺者から彼女を守ってくれるよう懇願します。伯爵は彼女の死を偽装し、毒殺が成功したように見せかけます。ヴィルフォールはエロイーズが殺人者だと推測し、公開裁判か自殺のどちらかを選ぶよう彼女に迫り、その後ベネデットの裁判を進めるために去ります。

 裁判でベネデットは、自分がヴィルフォールの息子であり、ヴィルフォールが生き埋めにした後、ベルトゥッチョから真実を聞き出して救出されたことを明かします。ヴィルフォールは罪を認め、妻の自殺を阻止するために急いで家に帰るが、時すでに遅し。妻は亡くなり、息子のエドゥアールも毒殺していた。伯爵はヴィルフォールと対峙し、正体を明かす。ヴィルフォールは正体に発狂します。ダンテスはエドゥアールを蘇生させようと試みるが失敗し、復讐が行き過ぎたのではないかと疑問を抱きます。

 伯爵の作戦の結果、ダングラールの評判は地に落ち、 500 万フランを失います。伯爵は信用契約の履行としてこの金額を要求し、ダングラールは病院の資金を横領します。ダングラールは伯爵の現金領収書と自分の 5 万フランを持ってイタリアに逃げ、伯爵の銀行口座から 500 万フランを返済されます。ローマを離れる途中、ルイジ=ヴァンパに誘拐されます。盗賊たちはダングラールに法外な値段で食べ物や水を支払わせ、不正に得た利益をゆすり取ります。ダンテスは匿名でその金を病院に返します。ダングラールはついに罪を悔い改め、ダンテスは彼を許し、5万フランを持って去ることを許します。

 マクシミリアン=モレルは、ヴァレンタインが死んだことに絶望し、自殺を考えます。ダンテスは正体を明かし、マクシミリアンに自殺を 1 か月延期するよう説得します。

 1 か月後、モンテクリスト島で、ダンテスはヴァレンタインとマクシミリアンを再会させ、一連の出来事の真相を明かします。平穏を得たダンテスは、島に財産の一部を残して東へ出発し、愛を告白したエデーと新しい生活を始めます。

参考文献

・アンドレ=モーロワ著、菊地映二訳『アレクサンドル・デュマ』

コメント

タイトルとURLをコピーしました