始めに
春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
巡礼の旅
主人公の多崎つくるは高校時代、名前に「色」の漢字が入った4人の友人と行動を共にしていました。しかし大学二年生の頃、友人のグループから追放され、死しか考えられない時期が続きました。多崎が36歳のとき、沙羅という女性と上司が開催したパーティで出会い、親密な関係になります。肉体関係を持つものの、沙羅にあなたの心には問題がある、抱かれているとき、どこかよそにいるみたいに感じられる、と言われます。そして沙羅のサポートのもと、友人たちのグループから追放された理由を聞くために、3人の友人に会いに巡礼の旅に出ることを決めます。
これがタイトルになっている巡礼の旅です。
一人称視点のリアリズムを生かした心理劇
本作品とコンセプトとして重なるのは漱石『こころ』やロブグリエ『嫉妬』、谷崎潤一郎『卍』『痴人の愛』、芥川『藪の中』、フォークナー『響きと怒り』、川端『眠れる美女』、リンチ監督『ブルーベルベット』などと言えます。
集合行為における一部のアクターを語りの主体にしたり、または一部のアクターにしか焦点化をしないために、読者も登場人物と同様、作中の事実に不確かな認識しか得られるところがなく、限定的なリソースの中で解釈をはかっていくことしかできません。
シロの謎
白根 柚木という友人5人組グループの一員、愛称はシロが本作では重大な謎を残します。グループメンバーが主人公と絶縁するきっかけを作ったのは、彼女でした。
つくるにレイプされたという告発によってグループを追放されたことを多崎つくるはやがて知ることになります。しかしつくるにはレイプした記憶がありません。しかしシロは実際に妊娠しており、クロは堕胎手術にも付き添ったそうです。そのおよそ10年後、浜松に移ったシロは他殺体で発見されます。
このシロのレイプ事件と、他殺事件が重大な謎となっています。とはいえ、これには明示的な答えは示されていません。つくるの多重人格や記憶の抑圧か。それともシロへの父親の虐待が匂わされていることから、父親に殺されたのか。解釈は読者に委ねられています。
つくる犯人説
本作はシロを殺した犯人が謎です。これは解釈に委ねられていますが、まずつくるが犯人候補です。
つくるにはシロをレイプした記憶も殺した記憶もありませんが、春樹文学では『ダンス=ダンス=ダンス』や『騎士団長殺し』でも、僕の無意識の加害性などが描かれていたため、無意識に殺しているのかもしれません。あるいは、なにかファンタジックな作用につくるが関わって、それでシロは死んだのかもしれません。
とはいえ、タイトル「巡礼の年」も、フランツ=リストの「巡礼の年」や、その下敷きになったゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』などに由来していて、内容的にも成長小説、教養小説としてのテイストを帯びることから、この解釈はやや腑に落ちません。
父親犯人説
正直、シロの父親が犯人というのが、一番スッキリする解釈です。
シロが父親を毛嫌いしていたことなど、さまざまな要素が、シロの父親の犯人説を後押しします。
『ダンス=ダンス=ダンス』の五反田くんのように、満たされないフラストレーションの解消のため、DVの苦悩から逃れるため、シロはつくるを陥れたのではないかと解釈できます。
『海辺のカフカ』のような、ファザーコンプレックス、グレートファーザーの呪いを描くドラマとして、本作はシロを殺した犯人を父親と設定している印象です。
また『ねじまき鳥クロニクル』や『カラマーゾフの兄弟』的な、家族の悲劇としても解釈できます。
そもそも犯人とかいない説
それとそもそも犯人とかいないという説もあります。つまり、具体的に誰が犯人とかは設定していなくて、単にシロの悲劇的な死を演出するだけという解釈もできます。
物語世界
あらすじ
多崎つくるは高校時代、名前に「色」の漢字が入った4人の友人と行動を共にしていました。しかし、彼の名前だけ色の漢字がないことに疎外感を覚えていました。5人は名古屋市の郊外にある公立高校で同じクラスでした。友人4人はいずれも地元の大学に進んだものの、多崎は駅を設計する仕事に就きたいと、東京の工科大学に進みました。
しかし大学二年生の頃、友人のグループから追放され、死しか考えられない時期が続きました。その後、決まったリズムで生活していく中、大学の後輩の灰田という男性の友人ができまふ。彼は「巡礼の年」というアルバムのレコードを聞かせてくれました。その中には、高校時代の友人のうちの一人が弾いてくれた「ル=マル=デュ=ペイ」という曲が入っていました。
ある夜、多崎が高校時代の友人と性交をする夢を見て目を覚ますと、灰田が口淫をしていて多崎はショックを受けます。その後彼は実家に帰るが二週間で戻ると言い、レコードも置いていくが戻ることはありませんでした。
多崎が36歳になったとき、沙羅という女性と上司が開催したパーティで出会い、親密な関係になります。肉体関係を持つものの、沙羅にあなたの心には問題がある、抱かれているとき、どこかよそにいるみたいに感じられる、と言われます。そして沙羅のサポートのもと、友人たちのグループから追放された理由を聞くために、3人の友人に会いに巡礼の旅に出ることを決めます。
白根 柚木という校時代の友人5人組グループの一員、愛称はシロが本作では重大な謎を残します。グループメンバーが主人公と絶縁するきっかけを作ったのは、彼女でした。
つくるにレイプされたという告発によってグループを追放されたことを多崎つくるはやがて知ります。しかしつくるにはレイプした記憶がありません。しかしシロは実際に妊娠しており、クロは堕胎手術にも付き添ったそうです。そのおよそ10年後、浜松に移ったシロは他殺体で発見されます。
その死をつくるはなんとか受け止めて乗り越えますが、死の真相は明かされません。




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