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トマス=ハーディ『ダーバヴィル家のテス』解説あらすじ

トマス=ハーディ
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始めに

トマス=ハーディ『ダーバヴィル家のテス』解説あらすじあらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

自然主義と進化論

 ハーディは主義に括られる作家です。

 ダーウィン『進化論』に触れたことでキリスト教に批判的になり、無神論的な、物理主義的な世界観を獲得し、創作に展開しました。

 往々にしてそうした視座から、ゾラ(『居酒屋』『ナナ』)同様、社会の暗い現実を描きます。

ウィルキー=コリンズの影響

 ジョージ=メレディスの助言により、ヴィクトリア朝を代表する作家であるウィルキー=コリンズを参照するよう勧められました。

 コリンズはディケンズやサッカレー(『虚栄の市』)と並んでヴィクトリア朝を代表する作家で、入り組んだプロットのデザインが特徴的で、それを参考にして物語的因果をふんだんに凝らすハーディのスタイルが生まれました。

 本作も、ダイナミックなプロットの展開が特徴です。

処刑の経験

 ハーディは16歳のとき、夫を殺害したエリザベス・マーサ・ブラウンの絞首刑を目撃しました。

 イングランドのドーセットで公開絞首刑に処された最後の女性がエリザベスで、彼女は、2番目の夫ジョン=ブラウンからDVを受けたとされ、彼を殺害して死刑になりました。

 彼女の死を目の当たりにしたことは、ハーディに大きな影響を与えました。

 本作においても、ヒロインの絞首刑までが描かれます。

社会小説

 本作は社会小説(social novel)と括られます。

 社会小説は社会問題をテーマとする作品ジャンルで、貧困、工場や鉱山労働、児童労働、女性への暴力、犯罪の増加、都市の過密と衛生状態などを批判的に描くものが多いです。

 近代化にともなって18世紀のイギリスに成立したジャンルで、ヨーロッパとアメリカに広がり、ピカレスクなどにその源流を持ちます。

パストラル

 本作はパストラルの影響が顕著です。

 田園地方の美しい自然描写はハーディの特徴ですが、これはパストラルジャンルを背景にしています。

 狭義のパストラルは、田園の理想郷を舞台として牧人たちが恋の歌を競い合う韻文ですが、やがてパストラルロマンス、パストラルドラマといった、散文による田園地帯におけるメロドラマが定着していき、本作もその中に位置づけられます。

 ウィリアム=シェイクスピアの戯曲『お気に召すまま』も田園ロマンスのジャンルで、ハーディもこの作品に『緑樹の陰』にてオマージュを捧げています。

物語世界

あらすじ

 19世紀末のイングランド、ドーセット地方のマーロット村。大酒飲みで貧しく子だくさんのジョン=ダービフィールドは、司祭から名家ダーバヴィルの末裔だと聞かされます。

 長女のテスを親戚だというダーバヴィル家へ奉公に出すものの、テスは放蕩息子のアレックに犯され情婦にされます。 アレックを愛せないテスは村に帰って男児を出産するものの、3ヶ月後に正式に洗礼を施されないまま病死します。

 住み込みで酪農場の乳しぼりをするようになり、そこで知り合った牧師の末息子エンジェル=クレアと恋仲になります。自分の罪を言い出せないままテスはエンジェルのプロポーズを受けるものの、新婚初夜、エンジェルが自分の過ちを告白し、テスも過去をうちあけると、エンジェルは失望してブラジルへ去ってしまいます。 父ジョンの病死後も、実家は困窮します。

 テスは再びアレックにだまされて身をまかせるなか、エンジェルが帰国し、テスはアレックを殺してしまいます。

 やがてテスは絞首台にて死刑になります。

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