始めに
ラブレー『ガルガンチュワとパンタグリュエル』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
典拠となったテクストなど
本作は『ガルガンチュア大年代記』が下敷きになっていますが、これは『アーサー王物語』を原典とした巨人族を描くストーリーです。さらに『アーサー王物語』は『ブリタニア列王史』が下敷きにあります。
『ガルガンチュア大年代記』では、アルチュス王(アーサー王)に仕える魔術師メルラン(マーリン)が、ある日ランスロ(ランスロット)の血をクジラの骨に注ぎ、骨を粉末にします。そこに太陽の熱が加わってガルガンチュアの父と母を生み、やがてガルガンチュアが生まれます。その後いなくなった魔術師メルランを探しに、両親は頭に岩を乗せて家族で旅に出ます。ブリトン人との衝突で両親は亡くなりますが、ガルガンチュアはその後メルランと出会い、雲に乗ってアルチュルス王のもとへ連れていかれ、そこで王のために働きます。メルランに鉄の棍棒を与えてもらい、棍棒でゴーとマゴを殺戮したり、アイルランドとオランダとの戦いで10万人以上の兵を倒します。その後、ゴーとマゴの復讐にやってきた身の丈が12クーデ(1クーデ約50センチ)もの巨人と一騎打ちとなる。ガルガンチュアは例の棍棒を握りしめるものの、相手の巨人は近眼で、間違えて木にふりかかって、その隙にガルガンチュアが折りたたんで巾着にしまい、アルチュルス王の宮廷へ持ち帰ります。大活躍したガルガンチュアは、妖精のガーン(モルガーヌ)に連れられ妖精の国へ行き、そこで暮らします。
このように英雄としての巨人ガルガンチュアの武功を描く内容ですが、ラブレーの本作では、このガルガンチュアを主人公パンタグリュエルの父親として設定し、さらに物語を膨らませています。
風刺文学
ラブレーは、ジャン=デュ=ベレーとの交流を通じて、フランソワ1世の宮廷の動向、イタリアのルネサンス文化について学びました。
『ガルガンチュア』の「ピクロコリック戦争」は、イタリアをめぐるフランスとカール5世の戦争などを象徴します。 三の書はコリントの防衛について描き、ハプスブルク家の攻撃を恐れたパリ市のデュ=ベレーが主導した軍事対策を象徴します。
ラブレーの時代、カトリック正統派とカルヴァン主義が対立していました。四の書の「ソーセージ戦争」では、教義がエスカレートしたジュネーブのカルヴァン派の紛争が描かれています。嵐のエピソードは、トレント公会議を風刺します。
語りの構造
本作は作者の分身のような等質物語世界の語り手が設定されていて、それが基本的には物語世界外からガルガンチュアとパンタグリュエルのことを語ります。
ところがこの語り手はしばしばパンタグリュエルの物語世界内に姿を現し、『パンタグリュエル』においては、語り手はパンタグリュエルの口の中に入ってしまいます。
この語り手による豊かでナンセンスな口語的語りは、以降多くの作家に影響し、スターン、セリーヌ、大江など、枚挙に暇がありません。
物語世界
あらすじ
パンタグリュエル物語(二の書)
巨人のパンタグリュエルは、ガルガンチュアを父とします。父親がモルガン=ル=フェイによって妖精の国に送られ、それを聞いたディプソデス族が彼の国に侵入し、都市を包囲している旨の手紙を受け取ると、パンタグリュエルと仲間は出発します。
作戦と怪力、そして尿によって、包囲されていた都市は解放され、住民はディプソデスへの侵攻を目指します。ディプソデスはパンタグリュエルとその軍隊が近づくと、ほとんどが降伏します。土砂降りの雨の中、パンタグリュエルは舌で軍隊を守り、語り手はパンタグリュエルの口の中に入ります。
数か月後、語り手は口のなかから戻ります。
ガルガンチュア(一の書)
ガルガンチュアはその知性で父親 グラングージエを感心させ、家庭教師に預けられます。この教育によりガルガンチュアはバカになり、後に新しい家庭教師とともにパリに送られます。
ガルガンチュアの再教育の後、語りは隣国のパン屋に移り、彼らはフワスを運んでいました。羊飼いたちはパン屋にフワスを売ってくれるよう頼みますが、その要求が戦争に発展します。
ガルガンチュアが呼ばれ、グラングージエは平和を求めます。敵の王ピクロコールは和平に応じず、グラングージエは止むなく戦争に備えます。
やがてガルガンチュアは組織的戦闘で敵国を破りました。
三の書
『パンタグリュエル』の続きです。
パンタグリュエルとパヌールジュはパヌールジュの放蕩について話し合い、パンタグリュエルはパヌールジュに代わって借金を返済しようとします。借金を返済したパヌールジュは結婚に興味を持ち、アドバイスを求めます。
数多くの助言や予言がパヌルジュに何度も提示され、彼はそれを拒否しますが、「徳利明神」に相談したいと思います。
やがて「徳利明神」を訪ねる航海の準備が整います。
四の書
パンタグリュエルと仲間たちは「徳利明神」を訪ねて航海に出ます。
一行は、興味のある場所を訪ねたりしつつ、嵐に遭遇し、ひとまず上陸するまでそれに耐えます。
海に戻った彼らは海の怪物を殺し、それを岸に引きずり上げますが、そこでチタリングに襲われます。激しい料理の戦いが始まりますが、空飛ぶ豚の怪物に邪魔されて平和的に解決されます。
再び航海を続け、最後は船が礼砲を発射し、パヌルジュが身を汚してしまいます。
五の書
リンギング島では、一行はカトリック教会と同じ階級で暮らす鳥たちを見つけます。ツール島では、人々は太りすぎて皮膚を切り裂き、脂肪をふくらませています。次の島では、毛皮の猫に監禁され、謎を解くことで脱出します。その近くには、長引く裁判で生計を立てている弁護士の島があります。気まぐれの女王国では、クインテセンス女王と生きた人形がチェスの試合をするのを、一行は見ています。
彼らはランタンランドの案内人に導かれ、地下深くにあるバクバックの神託所に向かいます。
そしてついにそこで彼らは「徳利明神」に出会います。「徳利明神」は「トリンク」という単語を発します。解釈の書から液体のテキストを飲んだ後、パヌルジュはワインが正しい行動を促すと結論付け、すぐにできるだけたくさん結婚することを誓います。




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