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ドストエフスキー『ステパンチコヴォ村とその住人』解説あらすじ

ドストエフスキー
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始めに

 ドストエフスキー『ステパンチコヴォ村とその住人』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

ゴーゴリからバルザック風のリアリズムへ

 ドストエフスキーはキャリアの初期には特に初期から中期のゴーゴリ(「」「外套」)の影響が強く、『貧しき人々』も書簡体小説で、繊細かつ端正なデザインですが、次第に後期ゴーゴリ(『死せる魂』)やバルザック(『従妹ベット』)のリアリズムから影響されつつ、独自のバロック的な、アンバランスなリアリズム文学のスタイルを確立していきます。

 本作はそうした作風が固まる前の前期の作ですが、作家性の萌芽が見えます。

 本作はゴーゴリ、バルザックのほか、ゴーゴリのルーツとしてのプーシキンや、シェイクスピアの艶笑喜劇の影響が見えます。そのあたりは『伯父様の夢』と重なります。

艶笑喜劇

 本作は、シェイクスピアの喜劇のような、デウス・エクス・マキナ的なハッピーエンドを迎える喜劇です。

 語り手は等質物語世界の、一人称の語り手ですが、彼は主人公というよりも語り手で、その伯父イェゴールが主人公です。

 語り手の伯父イェゴール=イリイッチ=ロスターニェフ大佐は、最愛の妻を亡くしてから祖父等からの遺産としてステパンチコヴォ村を相続すると、軍務を退き娘と息子とともにその村に住み着きます。やがて彼の母親も二度目の夫クラホートキン将軍が亡くなり、取り巻きを引き連れて息子の所に移ります。母親はエゴイストで、息子にも厳しいですが、善良で心優しい伯父は母親に対しても従順です。また、将軍夫人の取り巻きの一人に夫の書生をしていたファマー=フォミッチ=オピースキンという男がいたものの、将軍夫人はこの男を崇拝しており、彼が移って来てからすぐに、この男は伯父の家で大きな力を持ちます。

 このマザコンで、母の崇めるファマーに頭の上がらない伯父が、いろいろあって、家族の家庭教師のナスターシャへの愛に目覚め、彼女のために主体性を発揮して戦おうとし、ファマーも何の気まぐれかイェゴールとナスターシャの愛を認め、正式に2人が結ばれて、ハッピーエンドとなります。

物語世界

あらすじ

 私の伯父イェゴール=イリイッチ=ロスターニェフ大佐は、最愛の妻を亡くしてから祖父等からの遺産としてステパンチコヴォ村を相続すると、軍務を退き娘と息子とともにその村に住み着きます。やがて彼の母親も二度目の夫クラホートキン将軍が亡くなり、取り巻きを引き連れて息子の所に移ります。母親はエゴイストで、息子にも厳しいですが、善良で心優しい伯父は母親に対しても従順です。また、将軍夫人の取り巻きの一人に夫の書生をしていたファマー=フォミッチ=オピースキンという男がいたものの、将軍夫人はこの男を崇拝しており、彼が移って来てからすぐに、この男は伯父の家で大きな力を持ちます。

 私は10歳の頃に孤児となり、伯父の家に引き取られます。ペテルブルグの大学を卒業してから伯父の家から離れ、都会暮らしていたものの、最近伯父から手紙を受け取ります。それには伯父の子供達の家庭教師をしている娘を紹介するから早く結婚するようにとあります。

 私は実家に帰ることにしたもよの、その途中、偶然伯父のかつての同僚の一人からステパンチコヴォ村での話を聞きます。大佐が家庭教師の娘に恋をしているので、この娘を家から追い、大佐をある金持ちの女性と結婚させようと母親の将軍夫人とファマー=フォミッチが企んでいるというのです。

 自分の目で真相を確かめるべく、私はペテルブルグを発つことにします。ステパンチコヴォ村に向かう途中で隣村の地主スチェパン=アレクセーイッチ=バフチェーイェフから聞いた話では、1年ほど前にファマー=フォミッチたちがあの家に来てからというもの、今では近隣在住の者たちはファマー=フォミッチに腹を立てて、一家とは縁切り状態になっているそうです。

 ステパンチコヴォ村に着き、久しぶりに会った伯父は、不安そうで、何かを恐れています。翌日、私は伯父の家の者に紹介されたものの、家の者たちにはあまり歓迎されません。その場にいたのは伯父とその家族である娘と息子と母親と叔母の他に、母親の取り巻きの婦人連や二人の若い青年と家庭教師の女性でした。家庭教師は若く美人です。

 しばらく経って家庭教師の父親も現れ、最後にファマー=フォミッチが姿を現します。この家では、母親の将軍夫人が大きな権勢を振るっており、母親はこのファマー=フォミッチに額ずいているので、元書生の彼がこの家の事実上の支配者でした。伯父も彼に遠慮し、怖れていました。彼は、みんなの前で老侍僕のガヴリーラにフランス語を喋る試験をしたり、若い侍僕のファラレイには下品な踊りを踊っていると吊し上げたりします。

 私はファマー=フォミッチの態度に我慢できず、その場で彼に楯突きます。私の思わぬ態度に伯父は動揺します。

 その日、家庭教師のナスターシャと直接話ができる機会があり、彼女に自分との結婚話について尋ねるものの、ナスターシャはその気持ちはないようです。この家の誰とも結婚するつもりはないし、明日にでも父と一緒に出ていくつもりだそうです。

 それから私は伯父に呼ばれます。伯父は、ファマー=フォミッチと別れる事にしたと言ったものの、その直後、ファマー=フォミッチに手切れ金のような形で莫大な金と住まいを提供するとまで申し出たのにあっさり拒絶され、その潔い態度に伯父はファマーにひれ伏したのでした。そこで伯父は、母親とファマーを納得させるためには、私を家庭教師のナスターシャと結婚させて、自分は資産家のタチヤーナ=イワノーヴナと結婚するしかないと考えたのでした。

 しかし私が、ナスターシャは私と結婚するつもりはないし、明日父親とこの家を出ていくと言っていた、と伝えると伯父は仰天します。そこで伯父は、その晩ひそかにナスターシャと庭のはずれで密会し、私と結婚するよう説得したものの、ナスターシャは伯父に抱きつき、伯父を愛している、自分は誰とも結婚しないで修道院に入る、と言ったそうです。しかも二人が抱き合って接吻する瞬間をファマーに目撃されたのでした。伯父は、ナスターシャにきちんと結婚を申し込む、と決めます。私も、伯父の本心を見抜いていたので賛成します。

 伯父は翌朝手紙で、ファマーに自分の本心を伝え、二人の結婚を認めて欲しいと頼んだそうです。その日は息子の命名祝が行われたものの、祝いの会が終わらないうちに、ファマーは自分はこの家から出ていく、永遠にお別れです、と伝えます。止める伯父に、ファマーは、どうかあなたの情欲の炎を抑えてほしい、あなたは汚れない娘を堕落させた、と叫びます。怒った伯父はファマーをこの家から追放します。

 ファマーは雷鳴こなかを馬車で出ていきます。そのあと伯父は、ナスターシャに結婚の申し込みをしたものの、ナスターシャはお母様や他の皆さんに認めてもらえないので結婚はできない、実家に帰る、と断ります。将軍夫人とその取り巻きはファマー=フォミッチを戻して欲しいと伯父に懇願します。伯父は、ファマーが彼女を侮辱したことを認め謝罪するならと言って、自らファマーを連れ戻しに行きます。

 十分ほどでファマーは家にもどります。ファマーは、しばらく休んでから、謝罪どころか伯父に対して非難の言葉を浴びせますが、途中で一転、大佐、とにかくあなたの愛が純粋なものであったばかりか、高尚なものでさえあった、ということを確信するに至ったので、二人を祝福します、ウッラー、と叫びます。これで、伯父とナスターシャはめでたく結婚することになります。

 将軍夫人は結婚から三年後に亡くなったものの、ファマーは二人が結婚したあとも、相変わらずで、それが彼が亡くなるまで七年間も続きます。娘のサーシャは立派な青年と結婚し、息子イリューシャはモスクワで勉学に励みます。伯父夫婦は子宝には恵まれず、水入らずの生活を楽しんでいます。                           

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