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ドストエフスキー『伯父様の夢』解説あらすじ

ドストエフスキー
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はじめに

 ドストエフスキー『伯父様の夢』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

ゴーゴリからバルザック風のリアリズムへ

 ドストエフスキーはキャリアの初期には特に初期から中期のゴーゴリ(「」「外套」)の影響が強く、『貧しき人々』も書簡体小説で、繊細かつ端正なデザインですが、次第に後期ゴーゴリ(『死せる魂』)やバルザック(『従妹ベット』)のリアリズムから影響されつつ、独自のバロック的な、アンバランスなリアリズム文学のスタイルを確立していきます。

 本作はそうした作風が固まる前の前期の作ですが、作家性の萌芽が見えます。

 本作はゴーゴリ、バルザックのほか、ゴーゴリのルーツとしてのプーシキンや、シェイクスピアの艶笑喜劇の影響が見えます。そのあたりは『ステパンチコヴォ村とその住人』と共通です。

タイトルの意味

 タイトルは「伯父様の夢」ですが、意味するところは何でしょうか。

 マーリヤ=アレクサンドロヴナ=モスカリョーヴァはモルダーソフ市の第一の貴婦人です。彼女は夫が退職したために夫を郊外に遠ざけ、今はジナイーダ=アファナーシイェヴナという絶世の美人で23歳になる一人娘と市内に暮らしています。ジナイーダは、二年ほど前に小学校教師の青年と恋愛関係に落ち、彼女が書いた恋文が人から人に渡ったという噂が立つものの、母親のマーリヤ=アレクサンドロヴナはそれをもみ消します。

 そこで、マーリヤはそろそろ娘を適当な相手と結婚させようとしていたところ、スマートな貴族青年であるパーヴェル=アレクサンドロヴィッチ=モズグリャコフという求婚者が現れます。しかし、娘との結婚話は進まずやきもきしているところ、K侯爵がモルダーソフにやってきてマーリヤ=アレクサンドロヴナの家に寄ります。K侯爵は大地主の名門貴族で、かつては街でもその名を轟かせたものの、一時は親戚の者から狂人扱いされ、今やある中年女に監視されつつ自分の領地で暮らしていたところ、監視女が屋敷を留守にしていて、その留守に屋敷を抜け出したのでした。知り合いの司祭を訪ねる途中に馬車の事故に遭い、そこに侯爵の遠い親戚だというモズグリャコフがたまたま出くわして「伯父様」を助け出し、とりあえずマーリヤ=アレクサンドロヴナの家に連れてきたのでした。

 こうしてドタバタが巻き起こります。

 マーリヤ=アレクサンドロヴナはK侯爵の訪問が大きなチャンスだと思い、うだつのあがらないモズグリャコフよりも侯爵の方がはるかに娘の結婚には有利と見て、二人を結ばせようとします。母親と娘が自宅のサロンで侯爵に接待すると、侯爵はジーナの美貌に心奪われ、その歌声に我を忘れます。そして、お嬢さんを愛している、この場ですぐにでも式を挙げたいと言い出すのでした。

 しかし、モズグリャコフは2階で休んでいる侯爵の部屋に忍び込み、娘に結婚の申し込みをしたと浮かれる侯爵に、伯父さんまた夢を見たんですね、結婚なんて言い出したらまた親戚の者たちに精神病院に入れられてしまいますよと言い、侯爵もかつての悪夢を思い出し、夢を見たことにしようとします。

 これがタイトルになっている「伯父様の夢」の所以です。

物語世界

あらすじ

 マーリヤ=アレクサンドロヴナ=モスカリョーヴァはモルダーソフ市の第一の貴婦人です。それは彼女が、誰よりも情報通で、抜きんでた政治力をもっていたからです。

 彼女は夫が退職したために夫を郊外に遠ざけ、今はジナイーダ=アファナーシイェヴナという絶世の美人で23歳になる一人娘と市内に暮らしています。ジナイーダは、二年ほど前に小学校教師の青年と恋愛関係に落ち、彼女が書いた恋文が人から人に渡ったという噂が立つものの、母親のマーリヤ=アレクサンドロヴナはそれをまもなくあとかたもなくもみ消します。

 そこで、マーリヤはそろそろ娘を適当な相手と結婚させようとしていたところ、スマートな貴族青年であるパーヴェル=アレクサンドロヴィッチ=モズグリャコフという求婚者が現れます。しかし、それから5か月も経つのに娘との結婚話は進まずやきもきしているところ、K侯爵がモルダーソフにやってきてマーリヤ=アレクサンドロヴナの家に寄ります。K侯爵は大地主の名門貴族で、かつては街でもその名を轟かせたものの、一時は親戚の者から狂人扱いされ、今やある中年女に監視されつつ自分の領地で暮らしていたところ、監視女が屋敷を留守にしていて、その留守に屋敷を抜け出したのでした。知り合いの司祭を訪ねる途中に馬車の事故に遭い、そこに侯爵の遠い親戚だというモズグリャコフがたまたま出くわして「伯父様」を助け出し、とりあえずマーリヤ=アレクサンドロヴナの家に連れてきたのでした。

 マーリヤ=アレクサンドロヴナはK侯爵の訪問が大きなチャンス到来だと思います。うだつのあがらないモズグリャコフよりも侯爵の方がはるかに娘の結婚には有利です。しかし、母親は娘がまだあの青年のことを忘れられないでいることを知っていました。しかし、あの侯爵なら1, 2年も経たずに亡くなるから、そのあとでは誰と再婚しようと自由だという母親の誘いに乗せられて、結局娘は提案に従うことにします。

 モズグリャコフが出かけてくれたので、母親と娘が自宅のサロンで侯爵に接待すると、侯爵はジーナの美貌に心奪われ、その歌声に我を忘れます。そして、お嬢さんを愛している、この場ですぐにでも式を挙げたいと言い出すのでした。

 しかし、モズグリャコフはその様子を隣の物置部屋の鍵穴から見ていました。出てきたモズグリャコフはジーナを非難するものの、ジーナは突っぱねまふ。母親はそれを見て、モズグリャコフを丸め込みます。侯爵が亡くなったあとで、ジーナが再婚する相手としてはあなたしかいない、というのです。モズグリャコフも、母親の言葉にすがり、一旦は引き下がります。

 しかし、彼はそのあと冷静になって考えた結果、母親は信用できないと思い直します。そして2階で休んでいる侯爵の部屋に忍び込み、娘に結婚の申し込みをしたと浮かれる侯爵に、伯父さんまた夢を見たんですね、結婚なんて言い出したらまた親戚の者たちに精神病院に入れられてしまいますよと言い、侯爵もかつての悪夢を思い出し、夢を見たことにしようとします。

 そして侯爵来訪の噂を聞いて集まってきた社交界の婦人連を前に、マーリヤ=アレクサンドロヴナは、侯爵が娘に結婚の申し込みをした、と発表するものの、侯爵はあれは夢だったようだ、と言い出し、マーリヤ=アレクサンドロヴナと押し問答になります。

 やがてジーナが、突然侯爵に向かって、実は私たちはあなたを騙したのです、侯爵という位に目がくらんで騙そうとしました、と真実を打ち明けます。その正直な告白は侯爵を感動させ、モズグリャコフをも動かします。モズグリャコフは、実は侯爵に夢の話を吹き込んだのは自分である、と告白します。侯爵は混乱して、もう一度さっきのサロンでの出来事を思い出してみようとすると、そこに来ている婦人連の話も飛び出し、その話に婦人連の一人がマーリヤ=アレクサンドロヴナに怒り、それについて侯爵が言った一言から今度は侯爵にも婦人連の怒りの矛先が向けられ、その場は混乱します。侯爵はモズグリャコフに連れられ、その場を逃げ出します。

 この事件でマーリヤ=アレクサンドロヴナの名は地に落ちます。さらにジーナは、翌日あの噂の青年の危篤の知らせを受けて、青年の元に駆けつけます。1年半ぶりに二人は再会を果たすものの、2日後に青年は亡くなります。一方、侯爵も宿屋へ身を落ち着けるとその夜のうちに発病して危篤に陥り、3日目に亡くなります。モルダーソフの人たちは、侯爵を死に至らしめたマーリヤ=アレクサンドロヴナ家の者たちを激しく非難します。侯爵の葬式を出したのは、たまたまそこを訪れた侯爵の本当の甥で、自称甥のモズグリャコフは姿をくらませます。マーリヤ=アレクサンドロヴナ一家もモルダーソフを離れ、一家の郊外と市内の領地は売りに出されます。

 それから3年経ち、モズグリャコフはある学術探検隊に志願して辺境の学術調査に加わります。遠隔の地で探検隊の一行はそこの総督の家の舞踏会に招待されます。総督夫人はジーナでした。

 しかし、ジーナはモズグリャコフにまったく気づかないようでした。母親のマーリヤ=アレクサンドロヴナも健在で、参会者の話では総督夫人は名門出の令嬢で、母親は最上流クラスの出の方だと評判だそうです。

 モズグリャコフはやりきれない気持ちで、そこを後にしたものの、翌日仕事で郊外に出ると、すっかり気持ちも持ち直します。

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