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三島由紀夫『鏡子の家』解説あらすじ

三島由紀夫
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始めに

 三島由紀夫『鏡子の家』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ジャン=コクトー、ラディゲ流の新古典主義。シュルレアリスム

 三島由紀夫は私淑したラディゲ(『ドルジェル伯の舞踏会』肉体の悪魔』)、コクトー(『恐るべき子供たち』)流の新古典主義が特徴です。端正な線で対象を流離に描く姿勢はここでも発揮されています。

 ラディゲはコクトーなどのモダニスト、シュルレアリストと親交があって、前衛的な文学的潮流と接触していたものの、本人はフランスの心理小説(コンスタン『アドルフ』、ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』)やロマン主義文学(ミュッセ)に習いつつ、古典的な小説スタイルでもって小説を展開していきました。『ドルジェル伯の舞踏会』もクラシックな心理小説『クレーヴの奥方』の翻案として、王宮文学としてのメロドラマを展開します。 

ニヒリズム

 『鏡子の家』の元になったのは短編『鍵のかかる部屋』で、これは戦後日本における一青年の頽廃的な内面を描いた作品です。

 『鍵のかかる部屋』とは戦後の青年のニヒリズムを描く点や、アブノーマルな性的行為などのモチーフが共通しています。他方でオムニバスの群像劇的デザインは『鏡子の家』固有の特徴です。

語りの構造  

 物語は主人公同士が接点を持たずに並行的にストーリーが進んでいくオムニバスになっていて、モームの作品にちなんで「メリーゴーラウンド方式」と田中西二郎が名付けたので知られます。一般にはグランドホテル形式などともよばれます。

 本作に先駆けて『幸福号出帆』で、同様の語りの手法を用いています。『幸福号出帆』の前半部分は「グランド・ホテル形式」に基づいた構成を取り入れています。

 『鏡子の家』では、4人の青年たちがそれぞれ成功し、破滅し、また再起していく姿を、鏡子のサロンを中心にして描きます。 

モデル

 鏡子の家は、三島の幼馴染の友人湯浅あつ子の家をモデルにしています。湯浅あつ子の家には、様々な俳優、女優、脚本家などがサロンのように集まって交流していました。

 また小説の描写にでてくる〈鏡子の家〉は、信濃町に実在した西洋館、デ・ラランデ旧邸がモデルともされます。

物語世界

あらすじ

 夫と別居し、8歳の娘の真砂子と四谷東信濃町の洋館で暮らす30歳の友永鏡子は、戦後の焼け跡の時代を忘れずにいます。彼女の家に出入りする年下の友人たち、商社マンの杉本清一郎、私大の拳闘部の深井峻吉、売れない舞台俳優の舟木収、日本画家の山形夏雄らにも、鏡子は焼け跡や廃墟の残映を感じます。娘の真砂子は父が戻ってきてほしいと望み、父の写真をときどき眺めていました。

 4人はみなニヒリズムを抱え「壁」の前に立っていました。壁を破ると峻吉は思っています。壁を鏡にしようと、収は思います。その壁を描くんだ、と夏雄は思っています。清一郎は、俺はその壁になるんだ、と思っています。清一郎は世界が必ず滅びる確信を抱いています。

 4人は「鏡子の家」に集う仲間ですが、関わりはあまりありません。

 清一郎は副社長の令嬢の藤子と結婚し、ニューヨークへ転勤になります。峻吉はプロになり、第一戦をKO勝ちします。収は、ボディビルで筋肉を手に入れます。夏雄の描いた「落日」は展覧会で評判になり、新聞社の賞も受賞します。

 しかし夏雄は突然スランプになって絵が描けなくなります。そして霊能者の許に出入りし、節食と不眠に苛まれます。収は自堕落な母の借金のカタに高利貸しの中年女社長に身売りし、マゾフィスティックな行為に溺れ、この女と心中します。峻吉は全日本チャンピオンになった晩に、チンピラと諍いとなり拳を砕かれ、右翼団体に入ります。清一郎は、ニューヨークでの孤独に耐えられなかった妻を、同じアパートの同性愛者の米人男性に寝取られます。

 夏雄は水仙の花を見つめ、自分と水仙とが堅固な一つの同じ世界に属していると感じ、それにより立ち直ります。そして、メキシコに絵の勉強に向かうことにし、別れに鏡子は、童貞の夏雄と交わります。

 財産を使い尽くした鏡子の許に、夫が帰ります。鏡子は人生という邪教を生きる決意をしてます。鏡子の夫は、七匹のシェパードとグレートデンを連れて帰ってきたので、広い客間はたちまち犬の匂いに充たされます。

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