始めに
ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
心理小説
物語は当時の1世紀前、16世紀のアンリ2世の王宮が舞台です。ヒロインほか数人を除く登場人物は実在の人物で、歴史小説となっています。
本作は多くのサブプロット、現実的なプロットとキャラクターの心理描写を特徴とし、後世のテクストに影響しました。
サロン文化、プレシオジテ
若い頃、ラファイエット夫人はランブイエ邸やマドレーヌ=ド=スキュデリーの高級サロンによく通っていて、プレシオジテの文化に影響されました。
プレシオジテは、17世紀フランス王国の上流社交界における、言語や作法に洗練を求める風潮です。特にサロンにて発展し、モリエールの戯曲『才女気取り』などに風刺されます。
プレシオジテの運動の代表作であるオノレ=デュルフェの『アストレー』の影響も見受けられる『クレーヴの奥方』です。
ジャンセニスム
当時ジャンセニスムが流行を見せました。ラ=ロシュフーコーもこれに感化され、その友人であるラファイエット夫人もジャンセニスムに触れました。
神学思想としてのジャンセニスムは、後期アウグスティヌスの恩寵観を踏まえ、神の預定と恩寵の絶対性をとき、原罪以後の人間の無力を強調します。
よく知られる、修道院に籠るようになるクレーヴの奥方の最後の描写など、この思想の影響が見えます。
物語世界
あらすじ
シャルトル嬢は16歳の美しい女相続人です。父親は早くに死に、母親の手で厳格に育てられます。その母親に連れられ宮中に行った時、クレーヴ公が彼女を見そめ、結婚を申し込みます。シャルトル嬢は惹かれなかったものの、母親の薦めでクレーヴ公と結婚します。
結婚してから、奥方はルーヴル宮で催された舞踏会でヌムール公と出会います。2人はたちまち惹かれ合いますが、お互いの思いを打ち明けられません。
そんな時、母親が危篤になります。母親は奥方がヌムール公に好意を持っているのに気づき、夫に尽くす義務を忘れぬよう言い残して亡くなります。それから奥方はヌムール公を避けます。
奥方の肖像画が盗まれます。犯人はヌムール公で、奥方はその現場を目撃するものの見逃し、ヌムール公は奥方の好意に感謝します。
ヌムール公にスキャンダルがあります。ヌムール公がある女性に宛てた手紙が見つかりました。それを聞いた奥方は混乱するものの、それが嫉妬だと気が付きません。しかし、実はその手紙は奥方の叔父であるシャルトル侯のもので、安堵します。ヌムール公は叔父の窮地を救い、2人はさらに親密になります。
夫のクレーヴ公が奥方を不審に思い、問い詰めます。奥方は潔白を証明するために、相手の名を伏せて、好きな男がいることを打ち明けます。夫は激しい嫉妬におそわれ、相手はヌムール公に違いないとあたりをつけ、近侍に探らせます。確かに、ヌムール公は夜中に奥方の元に忍んで訪ねていました。この時、奥方はヌムール公と会うことを拒んだものの、夫は絶望のあまり病に倒れます。死の床で夫は奥方の不義を責め、身に覚えのないことで咎められ、奥方は悲しみます。
クレーヴ公の死を受けてヌムール公は、奥方に告白します。奥方もヌムール公への愛を認めるものの、それ以上のことはできないとヌムール公の元から去ります。
奥方はその後、修道院で若くして亡くなりました。



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