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バルザック『ウジェニー・グランデ』解説あらすじ

バルザック
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始めに

 バルザック『ウジェニー・グランデ』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義、リアリズム

 バルザックはロマン主義を代表する作家で、モリエールやスコットのリアリズムやロマン主義からの影響が顕著です。

 本作などが代表ですが、フランス革命以降の社会の自由主義、封建主義の崩壊、社会のブルジョワジー中心化などを背景に、ブルジョワ化した社会における自己実現をテーマとする内容の作品を多く手掛けました。

 ロマン主義文学の要諦は一個の個人の主体的な自己実現にあると解釈できますが、バルザックは往々にして、個人の現実社会へのコミットメントを徹底的にリアリスティックに描写していきました。

欲望のリアリズム

 この作品の核となるのは、父親フェリックス=グランデの異常なまでの執着心です。彼にとって金は単なる交換手段ではなく、信仰の対象です。娘や妻への愛情さえも、金銭的な損得勘定の下に置かれます。当時のフランス社会が、高潔さや家柄よりもいくら持っているかという資本主義的な価値観へ移行していく様子を、バルザックは容赦なく描き出しています。


​ ​ヒロインのウジェニーと、従兄シャルルの対照的な生き方がテーマを深めています。​ウジェニーは打算のない、自己犠牲的な愛を捧げます。彼女にとって金は愛する人を助けるための道具に過ぎません。​シャルルは最初は都会の優雅な青年でしたが、やがて野心に目覚め、地位と金のためにウジェニーを裏切ります。純粋な愛が現実の冷酷さに敗北するという悲劇的な構図です。

 ​バルザックは人間喜劇の一環として、地方特有の空気感を精密に描写しました。​グランデ家の莫大な遺産を巡って、周囲の有力者たちがハイエナのように群がる様子は、人間の浅ましさを浮き彫りにしています。​ウジェニーは、父の暴君ぶりと恋人の裏切りという二重の苦難を味わいます。​しかし、彼女はただの被害者ではありません。最終的に孤独を受け入れ、莫大な富を慈善事業に使う道を選ぶことで、金に支配されるのではなく精神的な勝利を収めるという崇高な結末を迎えます。

物語世界

あらすじ

 舞台はフランスの地方都市ソミュール。元樽屋で元市長のフェリックス=グランデは、町一番の大富豪でありながら、極端なまでのケチで知られていました。


 ​ある日、パリから彼の甥であるシャルルがやってきます。シャルルの父(フェリックスの弟)が破産して自殺したため、彼を頼ってきたのです。都会的で洗練されたシャルルに、箱入り娘のウジェニーは一目で恋に落ちます。


​ 冷酷な父グランデは、一文無しの甥を厄介払いしようと、シャルルをインドへ商売に行かせることに決めます。旅立つシャルルを不憫に思ったウジェニーは、父からこっそりもらって貯めていた金貨のコレクションをすべて彼に手渡してしまいます。


 ​これを知った父は大激怒。ウジェニーを部屋に監禁し、パンと水だけの生活を強います。この心労がたたり、慈悲深かった母親は病に倒れ、亡くなってしまいます。


​ ​月日が流れ、ようやく父と娘は和解しますが、それは父が娘に遺産を相続させ、一族の富を守るためという計算の上でのことでした。父グランデは死の間際まで金への執着を見せ、あの世で俺に勘定を見せてくれという言葉を残してこの世を去ります。​ウジェニーは、フランスでも有数の莫大な富を手にする相続人となりました。


 ​ウジェニーはシャルルからの連絡を何年も待ち続けますが、ようやく届いた手紙は非情なものでした。インドで成功し、すっかり野心家となったシャルルは、地位と名声のために貴族の娘と結婚すると告げ、彼女を裏切ったのです。


 ​絶望したウジェニーですが、彼女は取り乱しません。​彼女を狙って群がっていた求婚者の一人と、夫婦関係を持たないという条件で形だけの結婚をします。​シャルルの借金をすべて肩代わりして払い清め、彼の面目を保ってやります。


 ​夫ともすぐに死別し、若くして未亡人となったウジェニー。彼女は父が遺した莫大な富を自分のためには使わず、慈善事業や教会の修復のために捧げます。愛に裏切られながらも、彼女は金に魂を縛られることなく、静かで気高い孤独の中で生涯を終えるのでした。

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