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バルザック『黒い羊』解説あらすじ

バルザック
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始めに

 バルザック『黒い羊』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義、リアリズム

 バルザックはロマン主義を代表する作家で、モリエールやスコットのリアリズムやロマン主義からの影響が顕著です。

 本作などが代表ですが、フランス革命以降の社会の自由主義、封建主義の崩壊、社会のブルジョワジー中心化などを背景に、ブルジョワ化した社会における自己実現をテーマとする内容の作品を多く手掛けました。

 ロマン主義文学の要諦は一個の個人の主体的な自己実現にあると解釈できますが、バルザックは往々にして、個人の現実社会へのコミットメントを徹底的にリアリスティックに描写していきました。

タイトルの意味

​  物語の中心は、イッスードゥンに眠る莫大な遺産を誰が手にするかという泥沼の抗争です。登場人物たちは、血縁や愛情よりも金を優先します。金が人間の道徳をいかに歪め、家族をいかに破壊するかを冷酷なまでに描いています。遺産を狙うフィリップと、それを守ろうとする者、あるいは奪おうとする愛人フロールの間の心理戦は、さながら戦争のようです。

 母親のアガットは、ならず者で自分を食い物にする長男フィリップを溺愛し、誠実で才能ある次男ジョゼフを軽視します。世間的には英雄(軍人)であるフィリップが実は家族を滅ぼす「黒い羊」であり、世間から変人(芸術家)と見なされるジョゼフこそが家族を支える高潔な魂を持っているという皮肉が描かれています。

堕落と飛躍

 ナポレオン失脚後、戦場でのみ価値を発揮できたフィリップのような軍人たちが、平和な市民社会の中でならず者へと変貌していく姿が描かれています。勇気や名誉といった古い価値観が、金と策略が支配する新しいブルジョワ社会に飲み込まれていく過程が象徴的に示されています。


​ 次男ジョゼフは、金に執着する親族の中で唯一、美や真理を追求します。しかし、その価値を理解できる者は周囲に誰もいません。高潔な芸術的精神が、強欲な俗物たちであるフィリップやフロールの策略にいかに無力であるか、という悲哀が漂います。

物語世界

あらすじ

 未亡人アガット=ブリドーには二人の息子がいました。​長男フィリップはナポレオン軍の元大佐。母の溺愛をいいことに、ギャンブルと酒に溺れ、家財を盗み、家族を破滅に追い込む真の黒い羊です。​次男ジョゼフは誠実な画家。母からは軽視されていますが、必死に働いて家族を支えようとします。


 ​フィリップの放蕩によって家計は火の車です。アガットは、故郷イッスードゥンに住む兄ジャンジャック=ルージェが持つ莫大な遺産を頼りにすることにします。


​ ​しかし、兄ルージェの家は、若く美しい愛人フロール(ラ=ラブイユーズ)とその情夫マックスに完全に乗っ取られていました。アガットとジョゼフは遺産を求めて兄を訪ねますが、狡猾なマックスたちの策略により、一銭も得られずにパリへ追い返されてしまいます。


​ ここで、刑務所帰りで行き場を失った長男フィリップが、軍人としての暴力と冷徹さを武器にイッスードゥンへ乗り込みます。


​ ​フィリップは、知略と武力でマックスを決闘の末に殺害し、伯父ルージェを支配下に置きます。伯父が死ぬと、フィリップはフロールを無理やり妻にし、彼女が相続した遺産をすべて自分のものにします。その後、邪魔になったフロールを世間に見捨てさせて破滅させ、彼女の死後、莫大な富を手に入れます。


フィリップは貴族の称号まで手に入れ大富豪となりますが、自分を信じて支え続けた母アガットを完全に見捨てます。アガットは絶望の中で、次男ジョゼフの腕の中で息を引き取ります。


 ​フィリップの栄華は長くは続きませんでした。彼は政治的な変遷の中で地位を失い、最後はアルジェリアの戦場で見捨てられ、悲惨な死を遂げます。物語の最後、フィリップの遺産は、皮肉にも彼が最も軽蔑していた誠実な芸術家、次男ジョゼフの手に渡ることになります。

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