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バルザック『知られざる傑作』解説あらすじ

バルザック
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始めに

 バルザック『知られざる傑作』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義、リアリズム

 バルザックはロマン主義を代表する作家で、モリエールやスコットのリアリズムやロマン主義からの影響が顕著です。

 本作などが代表ですが、フランス革命以降の社会の自由主義、封建主義の崩壊、社会のブルジョワジー中心化などを背景に、ブルジョワ化した社会における自己実現をテーマとする内容の作品を多く手掛けました。

 ロマン主義文学の要諦は一個の個人の主体的な自己実現にあると解釈できますが、バルザックは往々にして、個人の現実社会へのコミットメントを徹底的にリアリスティックに描写していきました。

出世の戦略的コミュニケーション

 本作ではバルザックが好んだスコットのルーツとしてあるシェイクスピアや、自身が好んだモリエールさながらのダイナミックな登場人物の戦略的コミュニケーションが展開されていきます。それぞれの登場人物の、自己実現のための思惑が交錯していきます。

 こうした心理劇としてのデザインセンスはバルザック狂のドストエフスキー(『罪と罰』)、H=ジェイムズ(『ねじの回転』『鳩の翼』)に継承されていきます。

ロマン主義の破綻

 主人公の画家フランホーフェルはロマン主義的です。天才の孤独、自然や生命の本質を直接つかもうとする志向制度や慣習への軽蔑など、これらは典型的なロマン主義的芸術家像です。その意味で、エゴと社会的慣習の衝突が描かれます。


 フランホーフェルの破綻は社会に理解されなかった悲劇だけでなく、芸術を他者性から完全に切断したこと自体が破局を内包していた点にあります。彼のエゴは、表現=伝達という側面を消去し、芸術をほぼ独我論的な内的体験にまで押し縮めます。その結果、社会と衝突する以前に、作品そのものが作品である条件を失っているのです。
一方で、若い画家のプッサンらも決して完全に正しいわけではなく、古典的・社会的芸術観の限界を体現します。

 フランホーフェルの絵は、社会が理解する準備がなかった「時代錯誤の天才作」ではなく、最初から他者に向けて成立していない、純粋に私的な完成に近いものです。

 だからそれは傑作ではあるが、ただし作者にとってのみという逆説になります。傑作の条件は、内的完全性と外的承認の交差点にあるという事実がここに描かれます。フランホーフェルは前者を極限まで高め、後者をゼロにしたため、芸術的真理は本人の内部では最大化され、芸術作品としての存在条件は消滅する、という致命的な非対称が生じたのでした。

物語世界

あらすじ

 当時まだ無名だった若きニコラ=プッサンが、画家ポルブスの工房を訪ねます。彼には老巨匠フレンホファーが同行しており、フレンホファーはポルブスが仕上げたばかりの大きなタブローについて巧みに論評します。その絵はエジプトのマリアを描いたもので、フレンホファーは彼女を褒め称える一方で、作品が未完成のようだと仄めかします。

 わずかに筆を走らせるだけで、フレンホファーはポルブスの絵を変貌させ、エジプトのマリアが彼らの目の前で生き生きと動き出すように見えます。フレンホファーは技法を習得していたものの、自身の傑作に適したモデルを見つけられなかったのでした。その傑作はラ=ベル=ノワズースとして知られるカトリーヌ=レスコーという名の美しい娼婦を描いたものです。彼は10年間、まだ誰も見たことのないこの未来の傑作に取り組んでいたのでした。

 プッサンは自身の恋人ジレットをモデルとして提供します。ジレットは非常に美しかったため、フレンホファーはプロジェクトを早く完成させようと奮起します。

 プッサンとポルビュスは絵画を鑑賞しに来たものの、目に映ったのは色の渦に埋もれた足の一部だけでした。二人の失望はフレンホファーを狂気に駆り立て、彼は絵画を燃やし、その夜息を引き取ったのでした。

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