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H.G.ウェルズ『月世界最初の人間』解説あらすじ

H.G.ウェルズ
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始めに

 H.G.ウェルズ『月世界最初の人間』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

SFのルーツ

 ウェルズはSFの先駆的作家とされます。

 プラトンの『国家』、トマス・モアの『ユートピア』、ダニエル・デフォーの作品など、多くの古典作品から刺戟されて、創作にフィードバックしました。

 メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』などからも刺激され、独自のSFフィクションをものしました。

進化論の影響

 トマス・ヘンリー・ハクスリーの下で生物学を学び、進化論はウェルズの人生に影響を与え、作品のテーマになり続けました。

 ウェルズは、人間が進化によって野蛮へと堕落してしまうことを懸念し、それを理性と科学によって克服したいと願いました。

文明批評。帝国主義批判

 この物語は、対照的な2人の主人公の関係性が軸になっています。​ケイヴァーは科学者で、純粋な知識の追求、知的好奇心、そして科学の進歩そのものを象徴しています。彼は月世界に対しても理解したいという動機で動きます。​ベドフォードは事業家で、 富、名声、独占、そして利用価値を重視します。彼は月を金儲けのチャンスや植民地の対象としてしか見ていません。

 ​月世界の住民セレナイト(月人)の社会は、ウェルズによる痛烈な社会風刺です。​彼らは生まれた時から役割(労働者、学者、兵士など)を決められ、その役割に適した身体へと物理的に改造されます。これは、産業革命後の人間が機械の一部のように扱われることへの皮肉であり、効率を極限まで追求した社会がいかに非人間的で恐ろしいものになるかを描いています。


 ​ウェルズは、イギリスが当時行っていた帝国主義的な拡大を、鏡に映すように描いています。​ベドフォードが月で最初にとった行動は、現地の資源を奪い、武力で制圧しようとすることでした。


 ​逆に、月の王(グランド・ルナ)が地球の戦争や混乱の歴史を聞いて地球人は危険だと判断するシーンは、文明とは何か、どちらが野蛮なのかという問いを読者に投げかけます。​物語の終盤、月からの通信が途絶えるシーンは、異なる文明や価値観が完全には理解し合えない悲劇を象徴しています。科学的な成功を収めながらも、最終的には圧倒的な孤独と断絶が残るという結末は、非常に示唆に富んでいます。

物語世界

あらすじ

​ ​借金から逃れるためにケント州の田舎に引きこもっていたベドフォードは、隣人の風変わりな科学者ケイヴァー博士と知り合います。博士は、あらゆる重力を遮断する驚異の新素材ケイヴァライトを発明していました。ベドフォードはこの発明に巨大なビジネスチャンスを見出し、2人は球体の宇宙船を作って月へと旅立ちます。


​ ​月に到着した2人が目にしたのは、太陽が昇ると同時に爆発的に成長する植物と、高度な文明を持つ昆虫型の知的生命体セレナイト(月人)でした。2人はセレナイトに捕らえられてしまいますが、好戦的なベドフォードは武力で強引に脱出を図ります。一方、知的好奇心の強いケイヴァーは、彼らの社会に深い関心を抱きます。


​ ​逃走の最中、2人は離ればなれになってしまいます。​ベドフォードは宇宙船を見つけ出し、かろうじて一人で地球へ帰還します。しかし、船を不注意で紛失してしまい、月へ戻る手段を失います。​ケイヴァーは月に取り残されますが、持ち前の知識でセレナイトの信頼を得て、月の王グランド・ルナとの対面を果たします。


 ​後日、ベドフォードは無線を通じて月からの通信を受け取ります。ケイヴァーは月世界の驚くべき社会システムを報告しますが、同時に地球人がいかに戦争を好む危険な種族かを月の王に正直に話してしまいます。


 それを聞いた月の王が地球を警戒したのか、あるいはケイヴァーが処刑されたのか。通信は突如として途絶え、物語は不穏な静寂の中で幕を閉じます。

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