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H.G.ウェルズ『モロー博士の島』解説あらすじ

H.G.ウェルズ
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始めに

 H.G.ウェルズ『モロー博士の島』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

SFのルーツ

 ウェルズはSFの先駆的作家とされます。

 プラトンの『国家』、トマス・モアの『ユートピア』、ダニエル・デフォーの作品など、多くの古典作品から刺戟されて、創作にフィードバックしました。

 メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』などからも刺激され、独自のSFフィクションをものしました。

進化論の影響

 トマス・ヘンリー・ハクスリーの下で生物学を学び、進化論はウェルズの人生に影響を与え、作品のテーマになり続けました。

 ウェルズは、人間が進化によって野蛮へと堕落してしまうことを懸念し、それを理性と科学によって克服したいと願いました。

 19世紀末、ダーウィンの進化論が浸透した時代背景もあり、人間もいつか獣に逆戻り(退行)してしまうのではないかという当時の人々の不安が反映されています。物語の最後で、主人公プレンディックがロンドンに戻っても周囲の人間が獣に見えてしまう描写は、文明社会の脆さを象徴しています。

進化による退化

 この作品の中心的な問いは何が人間を人間たらしめるのかということです。モロー博士は外科手術と暗示によって動物を人間に作り替えようとしますが、結局彼らは本能に抗えず獣へと戻っていきます。これは、人間の知性や道徳が、単に野生の本能の上に薄く塗られたメッキに過ぎないのではないか、という恐怖を描いています。


 ​モロー博士は、自らの知的好奇心を満たすために生命を弄び、被造物の痛みを全く顧みない人物として描かれています。科学が宗教に取って代わり、人間が創造主のように振る舞うことへの警鐘です。


​ ​島で獣人たちが唱える掟は、文明社会や宗教に対する強烈な風刺です。​「四つ足で歩かぬこと、それが掟だ。我らは人間ではないか」​といった呪文のような掟は、本能を抑制するために社会が課すルールを象徴しています。しかし、そのルールが恐怖によってのみ維持されているという点は、当時の権威主義的な社会構造への批判でもありました。

物語世界

あらすじ

 貴族の青年エドワード=プレンディックは、公海上で遭難し、通りかかった船に救助されます。その船には、獣医のモントゴメリーと、奇妙な風貌をした使用人が乗っていました。


 ​船は、ある孤島に物資を届ける予定でした。プレンディックは行き場を失い、結局その島へと上陸することになります。そこで彼は、高名な生理学者でありながら、残酷な動物実験を理由にロンドンを追放されたモロー博士と出会います。


​ ​島には、奇妙に歪んだ姿をした住民たちが大勢暮らしていました。プレンディックは最初、彼らをモローの手によって獣に改造された人間だと思い、恐怖します。


 ​しかし、真実は逆でした。モロー博士は、生体解剖と外科手術によって、動物を人間に作り替えるという狂気的な実験を行っていたのです。島にいるのは、豚や犬、ヒョウなどをベースに作られた獣人たちでした。


​ ​モローは自らを神のように崇めさせ、獣人たちに「掟(ザ・ロウ)」を叩き込んでいました。​四つ足で歩かぬこと、​生肉を食べぬこと、​樹を傷つけぬこと。​これらは、彼らの動物としての本能を抑え込むための規律です。獣人たちは、モローが手術を行う苦痛の家への恐怖によって、かろうじて人間としての理性を保っていました。


​ ​ある日、一頭の獣人が掟を破って殺生をしてしまいます。これをきっかけに、潜在していた獣の血が目覚め、島の秩序が崩れ始めます。​ついに、実験材料にされていたピューマの獣人が脱走し、モロー博士を殺害してしまいます。さらに、唯一の協力者だったモントゴメリーも酒に溺れた末に獣人たちとの争いで命を落とします。


​ ​プレンディックは島に一人取り残されます。指導者を失った獣人たちは、時間の経過とともに言葉を忘れ、身体が退行し、次々と完全な獣へと戻っていきました。


 ​1年近くを島で過ごした後、プレンディックは偶然流れ着いた小舟で島を脱出します。しかし、イギリスに戻った彼を待っていたのは、平穏な生活ではありませんでした。


​ プレンディックは、街を行き交う人々が、いつか獣に戻ってしまうのではないかという強迫観念に囚われます。人間の顔が獣の仮面に見え、話し声が唸り声に聞こえるようになった彼は、人里離れた田舎で星を眺めながら、孤独に余生を過ごすことになるのです。

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