始めに
ウェルズ『透明人間』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
SFのルーツ
ウェルズはSFの先駆的作家とされます。
プラトンの『国家』、トマス・モアの『ユートピア』、ダニエル・デフォーの作品など、多くの古典作品から刺戟されて、創作にフィードバックしました。
メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』などからも刺激され、独自のSFフィクションをものしました。
進化論の影響
トマス・ヘンリー・ハクスリーの下で生物学を学び、進化論はウェルズの人生に影響を与え、作品のテーマになり続けました。
ウェルズは、人間が進化によって野蛮へと堕落してしまうことを懸念し、それを理性と科学によって克服したいと願いました。
成立背景
アーサー・コナン・ドイル、ロバート・ルイス・スティーブンソン、ラドヤード・キップリングなどの影響でものされています 。
本作の直接の着想はW・S・ギルバートの『バブ・バラッド』の一つ「透明人間の危難」から得ていて、ここに見えなくなる男の話があります。
『透明人間』に影響を与えたもう一つの作品はプラトンの『国家』で、この本を青年時代に読んだウェルズに大きな影響を受けています。『国家』の第二巻でグラウコンはギュゲスの指輪の伝説を語るのですが、この指輪は姿を消す魔力を持った金の指輪です。
物語世界
あらすじ
ジャック=グリフィンという名の男が吹雪の中、イギリスのウエスト=サセックス州イピング村のホール夫妻が経営する宿屋にやってきます。つばの広い帽子、長袖の厚手のコート、手袋を身につけており、顔は人工鼻を除いて包帯で隠されています。彼は放っておいてほしいと要求し、ほとんどの時間を部屋で化学物質や実験器具を扱って過ごし、夜しか外出しません。よく事故を起こすものの、ホール夫人がこれに対処すると、グリフィンは損害賠償を請求書に載せるよう要求します。宿屋に滞在中、何百ものガラス瓶が届きます。その奇妙な行動は村中の話題となり、多くの人が彼の出自について推測します。
一方、村で強盗事件が起きるものの、容疑者は見つかりません。お金がなくグリフィンは宿泊費や食費を払えません。家主が彼を追い出すと脅すと、彼は怒りから透明人間であることを明かします。警察が逮捕しようとするものの、服を脱ぎ、捕らえようとする者たちと格闘して逃げ出してしまいます。
サウスダウンズで、グリフィンは浮浪者のトーマス=マーベルを強引に自分の助手にします。マーベルと村に戻り、実験の記録が書かれた3冊のノートを取り戻します。マーベルはグリフィンを裏切ろうとするものの、グリフィンは彼を殺すと脅します。マーベルは海辺の町ポート=バードックに逃げ、グリフィンに追われて宿屋にたどり着くものの、バーの常連客の1人に撃たれます。
グリフィンは近くの家に避難するものの、その家は医学部時代の知り合いケンプ博士の家でした。グリフィンはケンプに自分の正体を明かします。
グリフィンは、体を透明にする化学物質を発明し、最初は猫に試し、次に自分自身に試したこと、痕跡を隠すために滞在していた下宿を焼き払ったこと、ドルリー=レーンの演劇用品店から服を盗んだこと、そして透明化を解除しようとイピンに向かったことなどを語ります。すっかり正気を失ってしまったグリフィンは、ケンプを共犯者にできると想像し、彼の透明化を利用して国を恐怖に陥れる計画を語ります。
ケンプはポート=バードックの警察署長アディ大佐率いる地元当局にグリフィンを告発しており、この突飛な提案を聞きながら助けが来るのを待っています。アディと彼の部下が到着すると、グリフィンは抵抗しながら脱出し、翌日、ケンプが「恐怖政治」で最初に殺される男になるだろうと告げるメモを残します。
ケンプは透明人間を罠にかけるために自分を餌に使う計画を立てようとするものの、彼が送ったメモはグリフィンによって召使いから盗まれます。追跡中、グリフィンは鉄棒で武装し、通行人を殺害します。
グリフィンはアディを撃ち、ケンプの家に押し入ります。ケンプは町へ逃げます。そこで地元の人々が彼を助けに来ます。ケンプを殺すことに執着するグリフィンは、彼を絞め殺そうとするものの、激怒した群衆に追い詰められ、捕らえられ、殴打され、慈悲を求める叫びが最後の言葉となります。
ケンプは群衆に離れるよう促し、グリフィンの命を救おうとするものの、果たせません。グリフィンが死ぬと、傷ついた体が見えるようになります。
後にマーベルがグリフィンのノートを密かに保管し、盗んだ金の力を借りて「透明人間宿」を経営するようになったことが明らかになります。しかし、宿を経営していないときは、マーベルはノートを解読し、いつかグリフィンの発明を再現したいと願っています。しかし、ページは誤って洗われ、残ったノートはギリシャ語とラテン語で暗号化されており、マーベルには理解が及びません。
参考文献
・ジーン=デイジー=マッケンジー (著), ノーマン=イアン=マッケンジー『時の旅人―H.G.ウェルズの生涯』




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