始めに
三島由紀夫『純白の夜』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
古典主義(ラディゲ、コクトー)。リアリズム
三島由紀夫はラディゲ(『ドルジェル伯の舞踏会』『肉体の悪魔』)、コクトー(『恐るべき子供たち』)といったフランスの古典主義文学に影響を受けています。私淑した二人にも相通じる、作品全体が合理的に構造としてデザインされた戯曲、家庭小説には佳品が多いですが、純文学作品には駄作も多いです。また純文学でいいのは『仮面の告白』や本作など初期の作品に多いです。
本作はラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』に似た、宮廷文学になっています。ラディゲはコクトーなどのモダニスト、シュルレアリストと親交があって、前衛的な文学的潮流と接触していたものの、本人はフランスの心理小説(コンスタン『アドルフ』、ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』)やロマン主義文学(ミュッセ)に習いつつ、古典的な小説スタイルでもって小説を展開していきました。『ドルジェル伯の舞踏会』も、クラシックな心理主義文学のラファイエット夫人『クレーヴの奥方』の翻案です。
本作も『ドルジェル伯の舞踏会』に似た、姦通のなかでの悲劇の心理劇を描きます。
心理劇として
昭和23年の秋、ある茶会の帰り。22歳の郁子は、銀行員の35歳の夫である村松恒彦とその同僚の沢田と三人で、ドラクロアのデッサンが出ているという有楽町のS画廊に立ち寄ります。S画廊は恒彦の父の代から村松家と関係がありました。デッサンはすでに売約済みで、買ったのは恒彦の学友の楠です。楠は仕事の取引で恒彦と再び連絡を取り合っていました。この楠と郁子が惹かれあい、密会するにいたり、三角関係になります。
やがて旦那と楠の間で板挟みになり、楠から受けた誤解と拒絶の苦しみの中で、郁子は自殺するのでした。
物語世界
あらすじ
昭和23年の秋、ある茶会の帰り。22歳の郁子は、銀行員の35歳の夫である村松恒彦とその同僚の沢田と三人で、ドラクロアのデッサンが出ているという有楽町のS画廊に立ち寄ります。S画廊は恒彦の父の代から村松家と関係がありました。
デッサンはすでに売約済みで、買ったのは恒彦の学友の楠です。楠は仕事の取引で恒彦と再び連絡を取り合っていました。
楠がドラクロアのデッサンを見せに、渋谷の村松家にやって来ます。恒彦の帰宅が予定より遅くなり雨で女中は駅まで恒彦を迎えに出て行きます。
郁子と楠は応接間での二人での初対面の間に惹かれ合います。次の土曜日に草野井元男爵邸で行なわれるダンス教室の小舞踏会に楠も招待されていました。
ダンスの日、楠は遅れてやって来ます。パートナーのいない楠と郁子は踊ります。楠は積極的にアプローチし、郁子のハンドバッグに恋文を入れます。帰宅後、郁子はそれを読み喜ぶものの、夫にそれを見せ返事は書きません。
1か月後の紅葉の季節、楠の河口湖の別荘の集まりに村松夫婦も招待されます。楠は郁子にまたアプローチします。帰京し、約束の待ち合わせの店に郁子はわざと偶然を装い、夫を伴って来ます。
父親が追放令に該当し東京の家を売却したため、生活に困窮していた独身の沢田が村松家に一時、間借りします。郁子はしだいにデリカシーや皮肉のない沢田に逆に親しみやすさを感じます。
正月の年始の挨拶に恒彦と郁子夫婦は麻布にある楠の家を訪ねます。楠の妻の由良子は病身で寝たり起きたりの身です。
ある日、郁子は夫に訊かれ、楠に呼ばれて2、3度会ったことと、すぐ逃げたことを告げます。しかし郁子はしだいに楠の押しに屈し、接吻を交わすようになっていました。郁子は楠を愛していたものの、最後の一線は許しません。
恒彦は銀行へ楠を呼びます。恒彦は、楠の会社への融資を止めることを告げ、妻から楠への別れの手紙を渡し、公私ともに楠と絶交をすることを言い渡します。
しかし郁子は夫の出張の時に、沢田と一夜を共にしてしまいます。沢田から、それを聞いた楠は傷つき、郁子に手紙を出します。2人は再び、密会しだします。
郁子は楠の疑惑を解き、自分の真心を楠にわかってもらいたいと思います。2人は、郁子が鎌倉の親戚の通夜に行く前の短い間にも、駅で会います。郁子は通夜の後、実家に立ち寄った折に、妹の露子がいつも、おまじないのように持ち歩いている青酸カリを自分のバッグに入れてしまいます。
梅雨明け間近の日、楠はついに強引に郁子を鎌倉の扇ガ谷の懐風苑という宿へ連れて行きます。風呂の後、郁子は家に電話を入れると言うと、楠は、自分と一緒にいることを恒彦に告げるように言います。しかし郁子は女中に、鎌倉の親戚の家に泊まると嘘をついて切ります。
それを聞き怒った楠は黙って宿を出て行きます。
あくる朝、楠が宿に戻ると、警官や泣いている恒彦がいました。郁子は服毒自殺していたのでした。郁子は死ぬ前の夜中の3時に夫へ電話をかけ、子供のように泣きじゃくり、その声は不思議な鳥の啼き声のようだったのでした。




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