PR

泉鏡花『日本橋』解説あらすじ

泉鏡花
記事内に広告が含まれています。

はじめに

 泉鏡花『日本橋』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

泉鏡花の口語的世界

 泉鏡花は、尾崎紅葉の硯友社のメンバーで、そこから江戸文芸の戯作文学を参照しつつも、リズミカルな口語によって幻想的で性と愛を中心とする世界を描きました。

 江戸文芸にあった洒落本ジャンルは、遊郭における通の遊びを描くメロドラマでしたが、鏡花も洒落本を継承して、花柳界におけるメロドラマを展開しました。また読本的な幻想文学要素、人情本的な通俗メロドラマからも影響されて、幻想文学、メロドラマをものした鏡花でした。戯作文学の口語的な豊かな語りのリズムを鏡花は継承しました。

 本作も、中国幻想文学(志怪小説、伝奇小説、白話小説)を思わせる、とくに伝奇小説を思わせる、幻想的なテイストがやや見えるメロドラマになっています。また、洒落本のように花柳界を描きます。

タイトルの意味

 日本橋を舞台に、芸者お孝と清葉、医学士葛木晋三、商人五十嵐伝吾(赤熊)ら、四人の男女が交錯する物語で、舞台から名前をとっています。

 葛木晋三の姉は、親を早く失った貧しさからひとの妾となって葛木が医学士となるのを援助しましたが、今は弟を避けて失踪しています。姉を求める葛木は姉そっくりの芸者清葉に思いをよせるものの、旦那のいる清葉は義理があるため葛木の恋を退けます。お孝はこれまで清葉が拒んだ男なら、清葉が拒んだという理由からすべて自分のものにしました。葛木に恋をしたお孝は、五十嵐伝吾(通称赤熊)という男を捨て、葛木もまたお孝に惹かれます。この四角関係の果てに、赤熊はお孝を殺そうとするものの、誤ってお孝の妹分の千世を切りつけ、お孝はその刀で赤熊の口と咽喉をえぐって殺し、自ら硝酸を仰いだあと、清葉に葛木を託して死にます。

物語世界

あらすじ

 日本橋元大工町、幽霊が出るという噂のある露地の細道に稲葉家は移転。女あるじお孝は雛妓お千世を始め抱妓九人を持つ日本橋の芸者です。美人芸者清葉と張合い、清葉に振られたためお孝と出来た客も一人、二人でありません。赤熊こと五十嵐伝吉もその一人です。

 かつて雛祭りの翌日の夜、医学士の葛木晋三は、一石橋の上から栄螺と蛤を川に放していました。これは、かつて自分を医者にするために身を売り、今は行方知れずとなった最愛の姉の志を継いだものでした。​不審がる巡査に問い詰められた葛木を救ったのは、名妓として知られる芸者・お孝です。​葛木は、失踪した姉に生き写しの芸者・清葉に想いを寄せていました。しかし、清葉は自身のパトロンへの義理を重んじ、葛木の求愛を拒み続けます。​一方、清葉に激しい対抗心を燃やす芸者・お孝は、清葉が拒んだものはすべて自分のものにするという執念から葛木に接近します。やがてお孝は、かつての愛人である赤熊を捨て、葛木に深い恋心を抱くようになりました。


 ​お孝に執着する赤熊(伝吾)の醜悪な姿に嫌気がさし、また姉への思慕を断ち切れない葛木は、ついに決断します。彼は僧のような姿となり、姉の形見である京人形を抱いて、姉を探す放浪の旅へと出かけました。最愛の人を失ったお孝は、絶望のあまり狂気へと陥っていきます。


​ ​時が流れ、葛木が再び日本橋に戻った日、街は清葉の置屋から出た火事で混乱に陥っていました。その騒ぎの中、嫉妬に狂った赤熊がお孝を殺そうと刃を振るいますが、誤ってお孝の妹分・千世を斬り殺してしまいます。​逆上したお孝は、その刀を奪い取り、赤熊の口と喉をえぐって殺害。その後、自ら硝酸を煽り、駆けつけた清葉に葛木を頼むと言い残して息絶えました。


​ ​その後、清葉はお孝の置屋があった場所に自らの店を再興します。葛木は医学を修めるためドイツへと留学していきました。清葉の家には芸者の13人が残ります。


 

コメント

タイトルとURLをコピーしました