PR

泉鏡花『縷紅新草』解説あらすじ

泉鏡花
記事内に広告が含まれています。

はじめに

泉鏡花『縷紅新草』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

泉鏡花の口語的世界

 泉鏡花は、尾崎紅葉の硯友社のメンバーで、そこから江戸文芸の戯作文学を参照しつつも、リズミカルな口語によって幻想的で性と愛を中心とする世界を描きました。

 江戸文芸にあった洒落本ジャンルは、遊郭における通の遊びを描くメロドラマでしたが、鏡花も洒落本を継承して、花柳界におけるメロドラマを展開しました。また読本的な幻想文学要素、人情本的な通俗メロドラマからも影響されて、幻想文学、メロドラマをものした鏡花でした。戯作文学の口語的な豊かな語りのリズムを鏡花は継承しました。

 本作も、中国幻想文学(志怪小説、伝奇小説、白話小説)を思わせる、とくに伝奇小説を思わせる、枠物語的構造が設定されています。

語りの構造とタイトル

 本作は異質物語世界の語り手で、焦点化を辻町糸七におく枠物語です。

 初老の辻町糸七は、何十年かぶりに訪れた故郷の金沢の燈籠寺で、妖艶な三十路の女お米と墓参りに来ていました。お米は、辻町の従姉お京の娘(姪)で、お京は一昨年亡くなっています。お米との会話から、自殺した初路という女工の記憶が会話の中で回想され、現在の外枠のパートと連動していく、という内容です。

 題名の縷紅新草とは、ヒルガオ科の草花、縷紅草の新種を意味する鏡花の造語で、作中で亡くなっている女たちを縷紅草にたとえます。

モデルと背景

 本作は泉鏡花が亡くなる2か月前に発表され、鏡花の故郷の金沢を舞台となっています。

 鏡花が病床にあったのを背景に、墓参りと死者の幽霊のことを描く内容になっています。

 亡き従姉の「お京」は、鏡花の従姉で恋人でもあった目細家の「てる子」のことです。

職人の物語

 本作は職人の物語です。硯友社の紅葉のライバルだった露伴も、『五重塔』など、職人の世界を描きました。

 本作は初路という女工のことが語られます。元は藩の姫でしたが、廃藩以来お邸が退転し両親も亡くなり遠縁に引き取られ、ハンカチに刺繍を施す女工となっていました。初路の刺繍の腕前は一流で、初路が考案した2匹の赤蜻蛉の図案も輸出先の外国で評判になります。しかし周囲に妬まれ、初路の図案の赤蜻蛉を中傷するいじめを受け、千羽ヶ淵で入水自殺します。

 終盤の外枠では、赤蜻蛉の幽霊らしきものが現れ、2人の女の影がそこに見えたのでした。おそらく初路とお京でしょう。

物語世界

あらすじ

 初老の辻町糸七は、何十年かぶりに訪れた故郷の金沢の燈籠寺で、妖艶な三十路の女お米と墓参りに来ていました。お米は、辻町の従姉お京の娘(姪)で、お京は一昨年亡くなっています。

 お米は辻町に、「むかし心中をしようとした、婦人のかた」の墓参りなのか、と辻町が他にも或る女性の墓に昼提灯を供えたい気持があるのを悟り、訊ねます。

 それは20歳だった30年前の花の盛りのある夜、辻町は貧苦のために千羽ヶ淵に身投げしようとしました。辻町は死ねず、しかしその時刻とほぼ同じ時、本当に身投げをして死んだ20歳の美しい娘がいました。娘は初路という名で、もとは千五百石のお邸の姫だったものの、廃藩以来お邸が退転し両親も亡くなり遠縁に引き取られ、ハンカチに刺繍を施す女工となっていました。

 初路の刺繍の腕前は一流で、初路が考案した2匹の赤蜻蛉の図案も輸出先の外国で評判になります。しかし容姿に恵まれ仕事も上手な初路は周囲に妬まれ、初路の図案の赤蜻蛉を中傷するいじめを受けます。初路はいじめから、千羽ヶ淵で入水自殺します。

 辻町とお米は、お京の墓参りをした後、初路の墓参りもしようとすると、男達が蜻蛉の幽霊が出た、と慌てています。

 辻町とお米が初路の墓のある場所にいくと、荒縄で縛られている石塔が転がっていました。お米は自分の羽織を石塔に掛けます。

 その後に縄は切られ、下山する辻町とお米の前に、蜻蛉が現われ、お米は膝をついて手を合わせます。裏山の風が一つ通り、赤蜻蛉がそっと動いて、遠景に女の影が、2人見えたのでした(初路とお京か)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました