はじめに
泉鏡花『婦系図』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
泉鏡花の口語的世界
泉鏡花は、尾崎紅葉の硯友社のメンバーで、そこから江戸文芸の戯作文学を参照しつつも、リズミカルな口語によって幻想的で性と愛を中心とする世界を描きました。
江戸文芸にあった洒落本ジャンルは、遊郭における通の遊びを描くメロドラマでしたが、鏡花も洒落本を継承して、花柳界におけるメロドラマを展開しました。また読本的な幻想文学要素、人情本的な通俗メロドラマからも影響されて、幻想文学、メロドラマをものした鏡花でした。戯作文学の口語的な豊かな語りのリズムを鏡花は継承しました。
本作は人情本的メロドラマと、洒落本的玄人との恋愛を描きます。また、芸者との恋愛は、泉鏡花自身伝記的背景が手伝っています。
モデル
泉鏡花は、芸者だった伊藤すずを妻としました。彼女が本作のお蔦のモデルです。
吉田賢龍の紹介によって知った芸妓の伊藤すずが台所を手伝いにきて、1903年1月、2人は牛込神楽坂に転居し同棲を始めます。4月、同棲が師匠で尊敬する尾崎紅葉に知られ叱責を受け別離するものの、交際が続きます。10月30日に紅葉が急逝し衝撃を受けますが、それによってすずと結ばれることになります。
物語の展開は、そのあたりの経緯を踏まえる内容です。
物語世界
あらすじ
ドイツ文学者の早瀬主税は恩師の酒井俊蔵に隠して芸者であったお蔦と結婚していました。その酒井の娘の妙子に静岡の名家の息子河野英吉との縁談が持ち上がります。
河野家は妙子の素行調査で主税のところにも来るものの、高圧的な態度に怒った主税は縁談を壊そうとします。
しかしその結果、彼がお蔦と結婚していることが酒井の知るところとなり、酒井により2人は別れさせられます。
その後、巻き込まれたスリ事件に絡んで早瀬は勤め先を解雇されることになるのでした。
その後静岡に向かった主税は、河野家の野望や女性たちとの複雑な関係に巻き込まれます。家の繁栄のために手段を選ばない河野家の姿勢に、主税は家制度の矛盾を痛感します。
主税は河野家の秘密(妻の不貞と長女が不義の子であること)を掴み、河野家の当主英臣を自殺に追い込んで復讐を果たします。その後皆既日食のなか、すべてを終えた夜に愛するお蔦を思いながら自ら命を絶つのでした。



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