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オースター『ムーン=パレス』解説あらすじ

ポール=オースター
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始めに

オースター『ムーン=パレス』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

オースターの作家性

 オースターはモダニズムの作家です。

 ​ベケットからは大きな影響があります。ミニマリズム、書くことに対するこだわりなどを継承します。またカフカの幻想文学における不条理やナンセンスからも影響が見えます。​またアイデンティティを巡る主題にも共通性があります。

​ ポーの影響も大きいです。​オースターの作品にはしばしば「探偵」が登場しますが、それはポーから続くゴシックの伝統でもあります。『ウィリアム・ウィルソン』的な実存的テーマも多いです。

 他にもホーソーン、ソローのロマン主義、クヌート=ハムスンの影響も見て取れます。

​偶然性のドラマ

 オースター文学の真骨頂である”偶然”が、この作品ではよりダイナミックに機能します。

 どん底の生活、奇妙な老人エフィングとの出会い、そして自身のルーツの発見など、偶然に見える出来事が繋がっていきます。物語は、マルコ、その父ソロモン=バーバー、そして祖父トーマス=エフィングという、お互いを知らぬまま生きてきた三世代の男たちの歴史を遡る旅でもあります。自分が誰の息子であるかを知らないマルコにとって、アイデンティティを確立することは、失われた父を見つけ出すことと同義です。3人はみな孤独で、家族を形成することに失敗していますが、物語の終盤でその系譜が一本の線に繋がります。

 物語の冒頭で、マルコはアパートに引きこもり、餓死寸前まで自分を追い込みます。すべてを失い、肉体的な限界まで飢えることで、彼はこれまでの自分を一度脱ぎ捨てます。

タイトルの意味と月

 1969年のアポロ11号の月面着陸を背景に、物語は「開拓時代のアメリカ」と「現代のアメリカ」を対比させます。

 月は不毛の地であり、届かない理想であり、すべてを照らす鏡でもあります。エフィングがかつて迷い込んだアメリカ西部の荒野は、人間の精神の奥深さや、文明から切り離された剥き出しの自己を象徴していて、その点で月と等価です。

物語世界

あらすじ

  マルコ=スタンリー=フォッグ(MS)は、エミリー=フォッグの息子です。彼は父親を知りません。11歳の時、母親は交通事故で亡くなりました。彼は叔父のビクターのもとに引っ越し、シカゴの寄宿学校に入学するまでビクターに育てられました。大学進学年齢に達すると、ニューヨーク市のコロンビア大学に進学します。1年間を大学の寮で過ごした後、ニューヨークでアパートを借ります。

 ビクター叔父が亡くなり、マルコは途方に暮れます。葬儀費用を支払った後、ビクター叔父からもらったお金がほとんど残りません。マルコは世間から遠ざかり、お金を稼ごうともしません。電気は止められ、体重は減り、ついにはアパートから出て行かなければならないと言われます。追い出される前日、マルコは連絡が取れなくなっていた大学時代の友人ジマーに助けを求めることにします。ジマーは別のアパートに引っ越していたので、マルコがジマーの古いアパートに到着すると、見知らぬ人たちに朝食に誘われます。その朝食で、マルコはキティ=ウーに初めて会います。彼女はマルコに惹かれます。翌日、マルコはフラットを出て、マンハッタンの路上に出ます。

 マルコはマンハッタンの喧騒から逃れるために、セントラルパークに身を寄せます。マルコは、訪れる人々が残した新聞を読むことで、世界の動向を把握しようします。セントラルパークでの生活は決して快適なものではないものの、孤独を楽しみ、内なる自分と外なる自分とのバランスを取り戻すことで、彼は安らぎを感じています。

 最初は天気がとても良かったので、どこに泊まるかは大きな問題ではありませんでした。しかし、数週間後、天候が一変します。激しい雨の中、マルコは体調を崩し、セントラルパークの洞窟に引きこもります。数日間の譫妄状態の後、彼は洞窟から這い出し、外で横たわりながら激しい幻覚に襲われます。そこで、ずっと彼を探していたジマーとキティ=ウーにようやく発見されます。熱のせいで、マルコはキティをネイティブアメリカンと勘違いし、「ポカホンタス」と呼んでしまいます。

 ツィンマーは良き友人で、マルコを自分のアパートに泊め、費用を全て負担し、回復を手伝ってくれます。しかし、マルコが軍隊の身体検査を受けることになった時、彼の身体的・精神的状態は依然として悪く、不適格と判定されてしまいます。ツィンマーに生活費を負担させられることに罪悪感を抱いたマルコは、ツィンマーを説得してフランス語の翻訳をさせてもらい、お金を稼ぎます。そんな時、キティと再会し、ツィンマーと別れることを決意します。二人は連絡が途絶え、13年後、繁華街で偶然再会した時には、マルコはツィンマーが結婚して典型的な中流階級の人間になったことを知ります。

 翻訳の仕事が終わった後、マルコは別の仕事を探します。エフィングのところで仕事を見つけ、エフィングに本を読んであげたり、目が見えない障害のあるエフィング老人を車椅子に乗せてニューヨーク市内を運転したりする仕事に就きます。

 マルコは老人を運転しながら、見えるものすべてをエフィングに説明しなければなりません。こうしてマルコは周囲のものを非常に正確に見る術を学びます。後に、エフィングはマルコに、自分が雇われた主な仕事である自分の死亡記事を書くように言います。

 エフィングは有名な画家ジュリアン=バーバーとしての人生と、トーマス=エフィングへの改宗についての事実をマルコに話します。バーバーは、地形学者のバーン、ガイドのスコアズビーとともにユタ州に行き、広大な土地を描くことにします。バーンは高所から落ちてガイドは逃げ、バーバーは砂漠の真ん中に一人残されます。バーバーは隠者が住んでいた洞窟を見つけ、そこで暮らし始めます。盗賊のグレシャム兄弟を殺害し、その金をサンフランシスコへ持ち帰り、正式に「トーマス=エフィング」と名乗るようになりました。裕福になったバーバーですが、ある日、失踪した著名な画家ジュリアン=バーバーに酷似していると告げられ、憂鬱と恐怖に沈み、チャイナタウンに通い、薬物に手を染めます。しかし、ある日何者かに襲撃され、逃げ出したバーバーは街灯にぶつかり、下半身不随になりました。そんな不摂生な生活に終止符を打ち、フランス行きを決意したのです。そして1939年、ナチスから逃れてアメリカへ帰国しました。


 ソロモン=バーバーはマルコの父であり、エフィングの息子です。彼は極度の肥満体型で、父親の存在も、息子がいることも知りません。ソロモンはエフィングの財産の大半を相続します。エフィングの死後、ソロモンは父親について知るためにマルコと出会い、息子を見つけます。マルコは、バーバーが父親であることを知りません。バーバーは生徒の一人であるエミリーと関係を持っていましたが、彼女が妊娠していることを知りませんでした。マルコは、エミリーの墓の前で泣いているバーバーを見て、真実を知るのでした。

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