始めに
鴎外『青年』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
高踏派の作家
森鴎外は、高踏派の作家とされています。
これは“l’école parnassienne”の,上田敏の訳語で『現代高踏詩集』(Le Parnasse contemporain)の詩人のことです。芸術のための芸術たる芸術至上主義を唱道したゴーティエとルコント・ド・リールの下に詩人集い、この詩華集が刊行されたのでした。
鴎外もこうした詩人の翻訳を手がけて影響されたため、高踏派と呼ばれます。
高踏派は傾向としてロマン主義、象徴主義の特徴があり、主知主義的な理想主義をテイストとしています。
成長小説、教養小説
本作は漱石『三四郎』などの影響があるとされ、そのようなほろ苦い青春と成長を描く成長物語になっています。アンデルセン『即興詩人』やゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』にも重なる、リリカルな作家の成長小説です。
本作に描かれるのは、主人公の小泉純一の、小説家としての自己実現と、また恋愛における成長です。
純一は作家としての成功を目指しつつもなかなか創作をものせず、そんな中にいて坂井れい子という未亡人と巡り合って彼女に惹かれるものの、やがて幻滅するまでが描かれています。
物語世界
あらすじ
東京へ出てきたばかりの小泉純一は、芝の宿屋から根津の下宿に向かいます。小説家として成功している大石狷太郎に近づこうとしているのでした。
お手伝いさんに大石狷太郎を呼び出させるものの、彼はまだ寝ています。大石が起きてくるまで純一が散歩していると、Y市の中学校で同じクラスだった瀬戸速人と出会います。
その後遊びに来た瀬戸は、大村荘之助という大学生を紹介します。大村の、西片町の下宿を訪ねる約束をします。
11月27日に有楽座でイプセンの戯曲「ジョン・ガブリエル・ボルクマン」が上演されていたために、純一は見にいきます。隣の席の女性から、純一はあらすじの解説を頼まれます。手渡された名刺には坂井れい子とありました。
結婚してまもなく夫の恆は脊髄の病で亡くなるものの、れい子には遺産があります。純一に、れい子は夫の文学全集を見せてくれます。れい子の住まいは根岸にある屋敷です。また純一はれい子の、 瞳に魅了されます。純一はれい子に夢中になり、しばしばれい子の自宅まで足を運びます。
彼女は、箱根の温泉旅館「福住」に滞在することになります。
夜に出発した純一は、3箱根湯本の柏屋という温泉宿に泊まりました。福住に行こうか悩みます。
純一は、宿屋と土産物店がある片側町を散歩します。そして純一は、あの笑い声を耳にします。振り返ると浴衣のれい子が、屈曲な男性と歩いています。四条派の有名な画家だという岡村でした。
純一の胸の内に起こったのは、れい子も生身の肉体を持った人間であるという幻滅でした。翌日には箱根り、れい子から借りていたラシーヌを郵送する、そして彼女とのつながりも絶つ、と決めます。純一は、今まで書けなかった小説が書ける気がします。
参考文献
・小堀桂一郎『森鴎外: 日本はまだ普請中だ』



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