始めに
鴎外『山椒大夫』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
高踏派の作家
森鴎外は、高踏派の作家とされています。
これは“l’école parnassienne”の,上田敏の訳語で『現代高踏詩集』(Le Parnasse contemporain)の詩人のことです。芸術のための芸術たる芸術至上主義を唱道したゴーティエとルコント・ド・リールの下に詩人が集い、この詩華集が刊行されたのでした。
鴎外もこうした詩人の翻訳を手がけて影響されたため、高踏派と呼ばれます。
高踏派は傾向としてロマン主義、象徴主義の特徴があり、主知主義的な理想主義をテイストとしています。
原作「さんせう太夫」
本作は説経節の「五説経」の「さんせう太夫」を原話としています。
「さんせう太夫」では、岩城の判官正氏の御台所、その子安寿とつし王(厨子王)が、帝から安堵の令旨を賜るために都へ向かっていた途中、人買いに親子離れ離れに売られ、姉弟は丹後の長者「山椒太夫(三庄太夫)」のもとで奴隷となります。姉の安寿は弟を脱走させ、山椒太夫の息子・三郎に拷問ののちに殺されます。
厨子王は丹後の国分寺に逃げ、寺僧に救われ、京都七条朱雀の権現堂に送られます。やがて梅津某の養子となり、一家没落の経緯を朝廷に伝えます。すると判官正氏の罪が赦され旧国を与えられ、讒言者の領地は没収されて厨子王に下賜されます。
安寿姫の霊は母と弟を守ります。厨子王は、領主となった丹後に行き、山椒大夫とその子三郎とを鋸挽きの刑にし、越後で山岡太夫を殺します。
厨子王は、母を探して佐渡に行くと、片辺鹿野浦で瞽女が鳥を追う唄を歌っています。これが母と気が付きます。母の眼は開き、母子は抱き合います。
脚色の方向。復讐譚、仇討物としての要素をオミット
鷗外は小説化にあたり、山椒大夫の処刑などの要素をオミットしています。全体的に、本作は原作にあった復讐譚、仇討ものとしての要素が廃されています。また、拷問、殺人などの残酷要素を廃しています。
残酷な要素を廃するコンセプトというよりは、歴史のリアリズムを重視して、当たり障りのないラインに脚色した感じのようです。
物語世界
あらすじ
平安時代の末期、丹後の国守の父・平正氏が筑紫にとばされ、母玉木、その子安寿と厨子王の姉弟、女中姥竹は母の故郷に向かいます。人買いの山岡太夫に襲われて捕まります。女中は身を投げ、母は佐渡に売られ、姉弟は丹後の荘園領主・山椒大夫の奴隷になります。
姉と弟は虐げられ、やがて安寿は厨子王に逃亡を勧め、自分は弟を逃がして入水自殺をします。厨子王は中山国分寺に隠れ、父の所業を悲しんで家出した大夫の息子である寺僧に匿われます。
それから都で関白に直訴します。一度は投獄されるものの、正氏の嫡子と分かり、丹後の国守になります。着任すると人身売買を禁じ、右大臣の私領たる大夫の財産を没収します。そして国守を辞めて佐渡に行き、盲目で足の不自由な母と再会します。
参考文献
・小堀桂一郎『森鴎外: 日本はまだ普請中だ』




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