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マルグリット=デュラス『太平洋の防波堤』解説あらすじ

デュラス
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始めに

マルグリット=デュラス『太平洋の防波堤』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造 

デュラスの作家性

 デュラスが最も初期に影響を受けたのがスタンダールです。登場人物が抱く情熱や、心理描写、ロマン主義はスタンダール譲りと言えます。

​ ヘミングウェイからは、ハードボイルド風の端正な描写に影響が見えます。プルーストからは代表作『ラマン(愛人)』に見られるような、過去と現在が混濁し、記憶の断片を繋ぎ合わせる手法における影響が見えます。

​ またデュラスはアラン=ロブグリエらを中心としたヌーヴォーロマンの運動に一時的に身を置き、影響されます。

タイトルの意味

​ タイトルにもなっている「防波堤」は、母が全財産を投じて築いたものですが、最初の高潮であっけなく崩壊します。


​ 太平洋という圧倒的な力に対し、人間が作る粗末な木の防波堤はあまりに無力です。堤防が壊れた後も、母はその現実を認められず、狂気的な執着を見せます。これは報われないと分かっていても抗わなければならない人間の悲劇を象徴しています。

​ デュラスはこの物語を、当時のフランス領インドシナ(ベトナム)の腐敗した社会構造への告発として描いています。政府の土地管理局は、塩害で耕作不可能な土地であることを知りながら、貧しい入植者に売りつけました。植民地において支配者であるはずの白人が、現地の人々よりも貧しく、泥にまみれて生活する姿を描くことで、植民地神話の崩壊を浮き彫りにしています。

​ 堤防が崩れた後、一家である母・兄・妹は逃げ場のない貧困の中に閉じ込められます。子供たちは狂っていく母を哀れみながらも、彼女の支配と貧困から逃げ出したいと強く願います。 主人公のシュザンヌ(妹)は、金持ちの男ジョー氏からの求愛を受けますが、そこにあるのは愛ではなく、家族を救うための取引のニュアンスです。

物語世界

あらすじ

 ​舞台は1930年代、フランス領インドシナのカンボジア国境に近い海岸地帯です。​かつて植民地学校の教師だった「母」は、夫に先立たれた後、長年の節約で貯めた全財産を投じて政府から広大な土地を払い下げられます。しかし、その土地は毎年7月の高潮で海水に浸かってしまう、農業には全く適さない塩害地でした。植民地政府の役人たちは、土地が使い物にならないことを知りながら、貧しい入植者である母にそれを売りつけたのです。


​ ​絶望に直面した母は、村の農民たちを説得し、海水を食い止めるための巨大な木造の防波堤を築き上げます。これが一家にとって唯一の、そして最後の希望でした。


 ​しかし、完成直後の最初の高潮で、防波堤は無残にも海虫に食い荒らされ、あっけなく崩壊します。母の夢は一瞬にして消え去り、一家(母、奔放な兄ジョゼフ、美しい妹シュザンヌ)は、泥を啜るような極貧生活へと転落していきます。


​ ​そんなある日、一家の前にダイヤモンドの指輪をはめた成金、ジョー氏が現れます。彼は10代のシュザンヌに一目惚れし、彼女を手に入れようと近づきます。 ジョー氏の富を利用して、借金を返し、再び土地を立て直そうと画策します。


  彼女はジョー氏を毛嫌いしながらも、彼がもたらす贈り物やここではないどこかへの脱出の可能性に揺れます。妹を金で買おうとするジョー氏に嫌悪感を示しながらも、兄は自身も退屈と貧困に窒息しそうになっています。


​ ​結局、ジョー氏との関係は愛に発展することなく、彼は去っていきます。母は絶望と狂気の中で次第に衰弱し、ついに息を引き取ります。


 ​母という重石がなくなったことで、兄妹はついにその呪われた土地を捨てる決意をします。兄ジョゼフは都会の女と共に去り、シュザンヌもまた、自らの人生を歩み出すために、泥沼のような植民地生活に別れを告げるのでした。

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