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エドガー=アラン=ポー「盗まれた手紙」解説あらすじ

エドガー=アラン=ポー
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始めに

 エドガー=アラン=ポー「盗まれた手紙」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ドイツロマン主義の影響

 ポーはドイツロマン主義からの影響が顕著です。具体的にはホフマン、シラー、ゲーテ(『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)などの作品から影響を受けました。

 ポーにはそこから幻想文学作品も多いですが、本作はそうした要素は希薄です。

ゴシック文学の系譜

 作家ホレス・ウォルポールの『オトラント城奇譚』がゴシック小説の先駆となり、以降はこのジャンルが連綿と継承されました。

 ポーもこの『アッシャー家の崩壊』など、このジャンルを代表する作品を多く手掛けたほか、本作もゴシック小説や墓地派を思わせる暗いムードやグロテスクな要素が特徴的です。

因果推論の美

 本作の特徴は因果推論の機知が喚起するエモーションに着目した点です。本作では、さながら自然科学や社会科学における因果推論のような推理を探偵が展開します。残された痕跡から展開される推論に見える機知にエモーションが喚起されます。

 しばしば我々は数学などに触れたとき、そこに見える定理などの伝統のなかでの実践や、問題解決のアプローチの鮮やかさに感銘や感動を覚えます。ここにおいては、数学という学究の中に見える、その歴史性の中での実践に見える戦略性や合理性に見える機知にエモーションが喚起されていると言えます。つまるところ、学術やその中における規約における必然性に裏付けられた論理性や合理性は、美的経験の対象になると言えます。

 例えば、モダニズム文学ではT=S=エリオットの『荒地』などを皮切りに、フォークナー(『アブサロム、アブサロム!』『響きと怒り』)、ジョイス(『ユリシーズ』)、三島由紀夫(『奔馬』)、大江健三郎(『万延元年のフットボール』『取り替え子』)など、神話的象徴の手法を取り入れるようになりました。これは神話の象徴として特定の対象が描写され、新しい形で神話や特定の対象が発見される機知が喚起する想像力に着目するアプローチです。これはさながら、数学において特定の問題解決のために定理や公理によるトートロジーが用いられるように、神話という既存の世界観の体系が、新しい形で発見され、その戦略性の機知にわれわれのエモーションが喚起されます。このように、我々は文学や科学の伝統において戦略性や合理性をしばしば発揮し、それは第三者の美的経験を促します。

 本作が描くのもおよそそのような部分で、探偵役の推論に見える既知が喚起するエモーションがあります。

物語世界

あらすじ

 とある秋の夕暮れ時、語り手が寄宿しているオーギュスト・デュパンの屋敷に、パリ市警の警視総監G-が訪ねてきます。彼はある事件についてデュパンの助言を請いに来ました。

 ある高貴な貴婦人が閨房で私的な手紙を読んでいるとき、その手紙のことを知られたくない男性が入ってきたので、やむを得ずテーブルの上において誤魔化していたところ、そこにさらにD-大臣が入ってきます。彼はすぐにテーブルの上の手紙がどういう性質のものであるかを理解し、その手紙とよく似た手紙を取り出して読み、その後でテーブルの上に置いたのでした。そして帰り際に女性の手紙をまんまと持ち去ってしまいました。大臣はこの女性の弱みを握り、宮廷で力を得て、困り果てた女性は警察に捜索を依頼しました。

 すぐ取り出したり廃棄できるように、間違いなく大臣の官邸内にあるはずです。また身体調査がありうるので、大臣が肌身離さず持ち歩いていることはないと思えます。しかし警察の捜査は成功しません。

 事件のについて聞いたデュパンは官邸を徹底的に調査することだ、と助言してG-を帰したのでした。

 一ヵ月後、再びG-が語り手とデュパンのもとを訪ねます。いまだに手紙は見つからず、懸賞金は莫大になっているそうです。G-の言葉に反応して、デュパンは小切手を出して5万フランを要求し、サインと引き換えにあっさり件の手紙を渡します。

 G-が帰っていくと、デュパンは語り手に、自手紙を手に入れた経緯を説明します。
 デュパンは事件の経緯や大臣の知性を考え、大臣はあえてそれを隠さない手段に出たと考えました。デュパンは官邸の大臣のもとを、目が悪いのだという口実のもと緑色の眼鏡で訪ね、壁にかかっているボール紙でできた安物の紙挿しを見つけます。そこには一通の手紙があり、それは件の手紙とは似つかないボロボロの手紙で、大臣宛の宛名もありました。

 しかしデュパンはこれがあの手紙で、裏返しにされて別の手紙に見せかけていると確信します。

 そして後日、煙草入れを忘れたという理由で再び官邸を訪れ、雇った酔っ払いに騒ぎを起こさせ、大臣の注意を引きつけさせ、偽の手紙とすりかえたのでした。

参考文献

・佐渡谷重信『エドガー=A=ポー』

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