始めに
ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
オルコットの作家性
エマーソンはオルコットにとって最も重要な影響を与えた人物の一人です。彼女の父ブロンソン・オルコットの親友であり、ルイザはエマーソンの膨大な蔵書を自由に読むことを許されていました。彼女の自立心や自己信頼の精神は、エマーソンの超絶主義から強く影響を受けています。ソローも家族ぐるみの付き合いがあり、ルイザにとっては自然の美しさを教えてくれた教師のような存在でした。
ジョン=バニヤンは作品の構造に最も直接的な影響を与えた作家です。『若草物語』の構造自体がバニヤンの寓話『天路歴程』をベースにしています。四姉妹がそれぞれ自分の欠点を克服しながら成長していく過程は、キリスト教的な巡礼の旅になぞらえられています。
マーガレット=フラーは初期のフェミニスト作家であり、オルコット家の知人でした。女性が知的に独立し、職業を持つことの重要性を説いたフラーの思想は、主人公ジョー=マーチのキャラクター像に色濃く反映されています。
ルイザは若い頃、エマーソンの書庫でゲーテの作品に没頭しました。特に『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』のような教養小説の形式は、彼女が少女たちの成長を描く際の指針となりました。
姉妹の絆と成長
この物語の最大の背骨は、バンヤンの『天路歴程』になぞらえた自己の欠点との闘いです。四姉妹はそれぞれ、怒り(ジョー)、虚栄心(メグ)、わがまま(エイミー)、内気(ベス)といった心の重荷を抱えています。貧しさや病気という試練を乗り越え、いかにしてより良い人間(リトル・ウィメン)になるかという道徳的な成長が描かれています。
主人公のジョーは、当時の女性は家庭を守るものという伝統的な価値観に激しく抵抗します。作家として自立したい、結婚に縛られたくないというジョーの願いは、現代の女性像の先駆けといえます。
伝統的な幸せを求めるメグ、芸術家としての成功を夢見るエイミー、そして家庭の守り神となるベス。四者四様の生き方を通じて、女性にとっての幸せとは何かという問いを投げかけています。
父親が戦場に不在の中、マーチ家は女性だけのコミュニティとして機能します。外部の厳しい社会に対し、家庭が愛と教育の場としていかに強力な砦になるかが描かれています。姉妹間のライバル意識、嫉妬、そしてそれを上回る深い絆。この姉妹の連帯こそが、時代を超えて読者を惹きつける魅力です。オルコット家が実際に貧しかったこともあり、作品にはお金で買えない価値へのこだわりが強く現れています。隣人のローレンス家との対比を通じて、富よりも知性、労働、そして他者への奉仕が尊いと説いています。
物語世界
あらすじ
牧師である父が南北戦争に出征し、母と娘たちだけで迎える質素なクリスマスの朝から始まります。美人で家庭的な長女メグ、作家志望でおてんばな次女ジョー、内気でピアノを愛する三女ベス、おしゃれで絵が得意な末っ子エイミー。彼女たちはぶつかり合いながらも、賢明な母マーミーの指導のもと、自分たちの欠点を克服しようと努めます。
孤独な隣人の少年ローリーと親友になり、彼を家族のように迎え入れることで、彼女たちの世界はより賑やかで温かいものになっていきます。
数年の歳月が流れ、少女たちは大人の女性(リトル・ウィメン)へと成長していきます。メグは家庭教師のジョンと結婚し、ささやかな幸せを掴みます。一方、ジョーはローリーからの求婚を自分たちの道は違うと断り、作家としての道を切り開くためニューヨークへ向かいます。
体の弱かったベスとの永遠の別れの悲しみは家族に深い影を落としますが、同時に彼女たちの絆をより強固なものにします。
芸術を学ぶため渡欧したエイミーは、そこで再会したローリーと結ばれます。ジョーもまた、ニューヨークで出会ったベア教授と心を通わせ、亡き叔母から譲り受けた屋敷で学校を開く決意をします。最後は、成長した姉妹たちが家族とともに再び集い、幸せを噛みしめる場面で幕を閉じます。




コメント