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マンディアルグ『余白の街』解説あらすじ

マンディアルグ
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始めに

マンディアルグ『余白の街』解説あらすじをかいていきます。

背景知識、語りの構造

マンディアルグの作家性

 マンディアルグの文学的出発点となったのはアンドレ=ブルトンです。1943年にブルトンと出会い、シュルレアリスム運動に参加しました。客観的偶然や、夢と現実が交差する感覚、驚異を追求する姿勢を継承しました。


​ マンディアルグの作品に通底する、冷徹なまでのエロティシズムと暴力性は、マルキ=ド=サドの影響を強く受けています。


​ ​幻想文学要素は​ドイツ・ロマン派のノヴァーリスやルートヴィヒ=ティークのほか、ポー、​ルイス=キャロルから感化されました。


​ ダンディズムや腐敗の中にある美を見出すボードレールの視点は、マンディアルグのバロック的な文体に反映されています。

タイトルの意味

 タイトルの「余白」作品のテーマです。主人公シジスモンは、妻の自殺を示唆する不吉な手紙を受け取りますが、その中身を完全には確かめず、バルセロナの旧市街を3日間彷徨います。絶望的な事実が確定するまでの執行猶予のような時間、​日常から切り離されたこの3日間こそが人生の余白であり、彼はその空白の中に身を隠そうとします。

 ​性と死の対比が、ここでは非常に鋭く描かれています。​死の影は故郷で死んだかもしれない妻セルジーヌ、​生の奔出はバルセロナで出会う娼婦アントニーナとの情事に代表されます。 シジスモンが娼婦の肉体にのめり込むのは、背後に迫る死の冷たさから逃れ、生を実感しようとする儀式的な行為でもあります。

記述の文体

 ​バルセロナの街そのものが、シジスモンの精神状態を映し出す迷宮として描かれています。​猥雑で活気に満ち、どこか腐敗の臭いがするチャイナタウンなどの迷宮を彷徨うことで、自分が抱える問題を意識の底に沈めようとします。街の細部に対する執拗なまでの描写は、現実を直視したくない彼の眼差しの裏返しでもあります。


​ ​ヌーヴォーロマンの影響も感じさせる、冷徹で緻密な視線がテーマの一つです。​シジスモンは周囲の風景やオブジェを、まるでカメラのレンズのように詳細に観察します。この観察者の視点を維持することで、彼は悲劇の当事者ではなく、ただの通行人であろうと足掻きます。

物語世界

あらすじ

​ 主人公のシジスモンは、仕事のためにフランスからスペインのバルセロナへやってきます。ホテルにチェックインした彼を待っていたのは、従姉で妻あるセルジーヌからの一通の手紙でした。​その封筒の端から少しだけ見えた文面には、「セルジーヌが自殺した」という衝撃的な事実が記されていました。しかし、シジスモンは反射的に手紙を封筒に戻し、あえて内容を最後まで読まないことを選択します。


 ​彼は手紙をポケットにねじ込み、バルセロナの旧市街のチャイナタウンへと繰り出します。手紙を完全に読んで事実を認めてしまえば、彼の日常は終わります。しかし、読まないふりをしている間だけは、自分はまだ自由な余白の中にいられます。自分を欺きながら、彼は猥雑な街の迷宮を彷徨います。


​ 彼は街で出会った娼婦アントニーナと情事を重ねます。死の予感から逃れるように、肉体の快楽に耽溺します。


​ ​しかし、どれほど歩き回り、快楽に浸ろうとも、ポケットの中の手紙の重みが消えることはありませんでした。ついに3日目の終わり、彼はカフェで手紙を最後まで読み、現実を直視します。そこには、幼い息子も事故で亡くなり、絶望した妻が命を絶ったという、救いようのない真実が書かれていました。


​「余白」を使い果たした彼は、静かにバルセロナを去る決意をします。彼はタクシーを雇い、フランス国境へと向かわせます。しかし、途中のガソリンスタンドで車を停めさせ、トイレの中で自らの胸を銃で撃ち抜きます。現実に戻ることを拒絶した彼の人生は、そこで完結します。

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