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ホレス・ウォルポール『オトラント城奇譚』解説あらすじ

ホレス・ウォルポール
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始めに

ホレス・ウォルポール『オトラント城奇譚』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ウォルポールの作家性

 ウォルポールにとって最大の文学的影響はシェイクスピアでした。​『ハムレット』における 亡霊の出現や復讐というテーマ、恐怖の演出方法、​『マクベス』における超自然的な要素と心理的な恐怖の融合などから示唆が見えます。


​ ​彼は12世紀から13世紀にかけての中世ロマンスを古代のロマンスと呼び、その超自然的で空想的な要素を高く評価していました。​中世の騎士、呪い、魔法、そして壮大な城といったガジェットは、これら中世文学への憧憬から生まれています。


​ ​ウォルポールは、中世的な空想と、当時の主流だったサミュエル=リチャードソンやダニエル=デフォーのようなリアリズムを融合させようと試みました。


 ​親友であり、共にクアドルプル・アライアンスというグループを作った詩人トーマス=グレイの影響もあります。​グレイの詩に見られる崇高さへの関心や、中世・過去へのノスタルジーを共有します。


​ ​ケンブリッジ大学時代の師である神学者コンヤーズ=ミドルトンからは、思想的な影響を受けました。


​ ​また東洋の物語にも関心を持っており、後に書いた短編集『ヒエログリフィック・テイルズ』などでは、『千夜一夜物語』のような幻想的で風刺的なスタイルを取り入れています。

ゴシック小説としての様式

 ​この作品の根底にあるのは過去の過ちは、時を超えて子孫に報いをもたらすというテーマです。物語は「オトラントの城と領地は、真の持ち主がそこに住めぬほど巨大化した時に今の家族の手を離れる」という不気味な予言に基づいています。主人公のマンフレッドは、祖父が暗殺によって奪い取った地位を守ろうともがき、その執着がさらなる悲劇を招きます。


​ この作品は相反する二つの要素を混ぜ合わせることを大きな意図としていました。中世の騎士道物語に見られるような、巨大な兜、動く肖像画、幽霊といった非現実的な要素と、当時の現代小説が得意とした、登場人物のリアルな感情や会話の融合によって、あり得ない状況下で、人間がどうリアルに恐怖し、反応するかという新しいエンターテインメントが誕生しました。

 ​ゴシック小説の定番となる追いつめられる乙女の構図は、ここから始まりましたが、これはよくリチャードソンからの影響が指摘されます。跡継ぎを失い焦るマンフレッドは、自分の血筋を維持するために息子の婚約者イザベラを無理やり妻にしようとします。


​ 逃げるイザベラを城の地下通路や暗闇が襲います。ここでは、物理的な城そのものが、逃れられない家系的・男性的な支配の象徴として描かれています。


​ 当時流行していた美学概念である崇高、つまり人間の理解を超えた巨大なものや恐ろしいものに接したときに抱く、畏怖を伴う快感がテーマとなっています。突然空から降ってくる巨大な兜や、壁の中の巨大な手など、スケールを逸脱したイメージが読者に圧倒される感覚を与えます。

物語世界

あらすじ

 ​物語の舞台は中世イタリア。​オトラント城の城主マンフレッドは、家系の存続を揺るがす不吉な予言を恐れていました。


 物語は、彼のひとり息子コンラッドの結婚式当日に始まります。しかし、式が始まる直前、空から巨大な羽根飾りのついた騎士の兜が降ってきて、新郎のコンラッドを押し潰して殺してしまいます。


​ ​世継ぎを失いパニックになったマンフレッドは、息子が死んだなら、自分がその婚約者イザベラと結婚して、新しい跡継ぎを作ればいいと考えます。


 彼は長年連れ添った妻ヒポリタを無理やり離縁しようとし、恐怖したイザベラは城の地下通路を通って逃げ出します。


​ ​イザベラの逃走を助けたのは、どこからともなく現れた農民の青年テオドールでした。マンフレッドは彼を捕らえ死刑を宣告しますが、マンフレッドの娘マチルダがテオドールに恋をしてしまい、彼を逃がします。


 城内では巨大な手や動く肖像画といった超自然現象が次々と起こり始めます。やがてマンフレッドは怒りに狂い、暗闇の中でテオドールと一緒にいるのはイザベラだと勘違いして、その女性を刺し殺してしまいます。しかし、刺されたのはイザベラではなく、彼自身の最愛の娘マチルダでした。


​ ​マチルダが息絶えると、城が巨大な衝撃とともに崩れ始めます。そして巨大化した騎士アルフォンソ(かつての正当な城主)の幽霊が姿を現し、テオドールこそがアルフォンソの真の末裔であり、正当な跡継ぎであると宣言します。


 マンフレッドは自分の罪を認め、修道院に隠遁。テオドールが城主となりますが、マチルダを失った悲しみは消えず、物語は重苦しい空気の中で幕を閉じます。

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