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バージェス『時計じかけのオレンジ』解説あらすじ

バージェス
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始めに

 バージェス『時計じかけのオレンジ』解説あらすじを書いていきます。

 

背景知識、語りの構造

バージェスの作家性

 ​ジョイスはバージェスにとって決定的な影響源です。ジョイスの『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』に見られる多言語を織り交ぜた言葉遊びや、意識の流れの手法は、バージェスの文体に深く刻まれています。
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 また​エリザベス朝時代の文学、特にシェイクスピアには並々ならぬ愛着を持っていました。ジェラルド=マンリ=ホプキンズという​19世紀の詩人のスプラング・リズム(跳躍韻律)は、バージェスの散文のリズムに大きな影響を与えました。
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 カトリック作家であるグレアム=グリーン、イヴリン=ウォーなどからも刺激を受けました。
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 ほかに​ナボコフの持つ言語的技巧、皮肉、そして言葉で世界を再構築するという姿勢に共鳴していました。

自由と悪と善と管理社会

 「自由意志と道徳的選択」が本作のテーマです。主人公のアレックスは、極悪非道な悪ですが、それは彼が自らの意志で選んだものです。対して、政府が行うルドヴィコ療法は、条件反射を利用して彼から悪をなす能力を奪い、強制的に善(というより従順)な存在に変えてしまいます。ここでは自ら選んだ悪は、強制された善よりも人間的であります。


​「時計じかけのオレンジ」とは、外見はジューシーで自然なオレンジ(人間)なのに、中身はゼンマイで動く時計じかけ(機械)になってしまった状態を指します。

 ​物語の中で、政府はアレックスを治癒させるためではなく、単に刑務所の過密問題を解決し、自らの支持率を上げるための政治的な道具として彼を利用します。個人の人格や魂を犠牲にしてでも社会の平穏を優先する国家の恐ろしさが描かれています。

語りの構造

 ​読み始めは、意味不明な単語のオンパレードで誰でも混乱します。しかし、作者のアンスニー=バージェスはあえて注釈をつけません。読者の脳は強制的に単語の意味を紐付けさせられます。読み終える頃には、辞書なしでホラーショー(最高)な気分を理解できるようになってしまいます。

​ ​ナッドサット(主にロシア語ベース)を使うことで、残酷な暴力描写が最初はどこか異世界の出来事のように中和されて聞こえます。言葉に慣れてくると、中和されていたはずの暴力がダイレクトに脳に響くようになります。この気づいた時には言葉をマスターしているという感覚が、読者が受ける条件付けの正体です。

 それによって、読者もアレックス同様に条件づけられ、自由を奪われています。

結末

 ​映画版(キューブリック監督)と原作小説では、結末が大きく異なります。
​原作では、第21章でアレックスは最終的に、暴力に飽き、家庭を持ちたいと願うようになります。暴力は若さゆえのエネルギーの誤用であり、時間が経てば自然に卒業するものである、という成長と成熟の視点が含まれています。


 ​映画版では、ラストの第21章がカットされているため人間は本質的に変われないというよりニヒリスティックな結末になっています。

​​物語世界

あらすじ

 ​アレックスは3人の仲間(ディム、ピート、ジョージー)と共に、ナッドサットと呼ばれる独特の若者言葉を操り、夜な夜な「超暴力(ウルトラバイオレンス)」に明け暮れていました。


 ​彼らは「コロヴァ=ミルク=バー」で麻薬入りのミルクを飲み、気分を高揚させてから、老人を襲い、商店を略奪し、作家F=アレグザンダーの家に押し入って彼を打ちのめし、その妻を暴行します。

 ​アレックスはクラシック音楽、特にベートーヴェンの第九)を愛する知的な一面もありましたが、その情熱は常に暴力的な興奮へと結びついていました。

 ​しかし、アレックスの独裁的な態度に不満を持った仲間たちが彼を裏切ります。ある邸宅への侵入時に警察に通報され、アレックスだけが逮捕されてしまいます。

 ​アレックスは殺人罪で2年の刑務所生活を送ります。早く出所したい一心で、政府が試行する新しい治療法「ルドヴィコ療法」の被験者に志願します。これは薬物を投与された状態で、目を固定され、残酷な暴力映画を何時間も見せ続けられる条件づけであり、洗脳でした。


​ アレックスは暴力の衝動を感じるだけで、耐え難い吐き気に襲われるようになります。さらに、治療中に流れていたベートーヴェンの音楽までもが吐き気の対象になってしまいました。悪をなす自由を奪われ、物理的に善であることしか選べなくなった彼は、予定通り出所します。

 ​社会に戻ったアレックスを待っていたのは、かつての被害者たちからの残酷な報復でした。​親からは家を追い出され、かつて襲った老人に袋叩きにされ、さらに警察官になっていた元仲間のディムたちにリンチを受けます。

 ​命からがら逃げ込んだ先は、かつて自分が襲撃した作家アレグザンダーの家でした。しかし作家は彼が犯人だと気づきません。作家はアレックスを政府の犠牲者として政治利用しようとしますが、彼が犯人だと気づくと、第九を大音量で流して彼を自殺未遂に追い込みます。

 月日が流れ、18歳になったアレックスは、暴力に飽き、ふと自分も家庭を持ち、子供を育てるべきではないかと考え始めます。暴力は若さゆえの病であり、人間は自発的に成長・選択するものだと思うのでした。

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