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オブライエン『第三の警官』解説あらすじ

フラン=オブライエン
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始めに

 オブライエン『第三の警官』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

オブライエンの作家性

 ジョイスの影響は顕著で、処女作『泳ぐ二羽の鳥』は、ジョイスの『ユリシーズ』に対するパロディであり、オマージュでもあります。多言語使用や意識の流れといった実験的手法を吸収しつつ、それを茶化すような姿勢が特徴です。


​ ​またスターンの代表作『トリストラム・シャンディ』は、オブライエンの脱線だらけの物語構造に多大な影響を与えています。


 ​アイルランドが生んだ偉大な風刺作家スウィフトも、彼の血肉となっています。


​ ​オブライエンはアイルランド語(ゲール語)の達人でもありました。『泳ぐ二羽の鳥』には、中世アイルランドの伝説の王スウィーニー が登場します。古い英雄叙事詩を現代のダブリンの安宿の物語に強引に混ざり合わせる手法を展開しました。


​ ​イタリアの劇作家ピランデッロの『作者を探す六人の登場人物』の影響も指摘されます。

円環する地獄と不条理

​ テーマは円環する時間と空間です。主人公が『罪と罰』さながらの強盗殺人の果てに迷い込む奇妙な世界は、出口がなく、同じ出来事が繰り返される構造を持っています。これはカフカ的であり、同時に自らが犯した罪に対する永遠の報い(地獄)の暗喩でもあります。最後に、物語全体が無限ループであったことが明かされますが、ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』と重なる構造です。

 ​作中で最も有名なのが、分子理論です。荒れた道を自転車で走り続けると、人の分子と自転車の分子が入れ替わり、人間が半分自転車になり、自転車が半分人間になるという珍説です。物質と人間の境界が崩れることで、「自分とは何か」というアイデンティティの根幹が揺るがされます。これは科学的な合理性を極限まで突き詰めた結果生まれる不条理を笑い飛ばす、強烈な皮肉でもあります。

 ​脚注に登場する架空の哲学者デ=セルビィに関する記述は、衒学的な学問の世界への痛烈なパロディです。​「鏡は幻覚である」といったデ=セルビィの奇妙な学説を大真面目に論じることで、人間がいかに理屈をつけて世界を解釈しようとしても、結局は真理から遠ざかってしまうという認識論的な虚無感を描いています。

 ​警官たちが管理する不思議な仕掛けや色に関する議論は、言葉が現実を定義することの危うさを示唆しています。目に見えるものが信じられず、論理だけが独り歩きして暴走する恐怖が、ユーモアとともに描かれています。

物語世界

あらすじ

​ ​物語の語り手は、架空の哲学者デ=セルビィの研究に没頭しています。その研究資金を得るため、彼は悪友のジョン=ディヴニーと共謀し、近所の金持ちの老人オールド=マザースを棍棒で殴り殺し、金の入った箱を奪います。


 ​数年後、ディヴニーは隠していた箱の場所をようやく明かします。語り手がマザースの家の床下にある箱に手を伸ばした瞬間、何かが起きたような奇妙な感覚に襲われます。

 ​箱を手に入れようとした直後から、世界は一変します。語り手は、殺したはずのオールド=マザース(の幽霊のような存在)と奇妙な会話を交わした後、二次元のように平たい不思議な警察署にたどり着きます。

 そこで彼は、二人の警官(プラスク軍曹とマックルイスキン巡査)に出会います。彼らは自転車の分子と人間の分子が入れ替わるといった狂気的な理論を大真面目に語り、語り手を翻弄します。

 語り手はエレベーターで地下にある「永遠」という場所へ連れて行かれます。そこは何でも望むものが手に入る場所ですが、同時に恐ろしいほど無機質で論理が通用しない空間でした。

 ​語り手はマザース殺害の容疑で死刑を宣告され、処刑台に向かうことになります。

 ​語り手はなんとか逃げ出し、かつての相棒ディヴニーのもとへ戻ります。しかし、そこで衝撃の事実を突きつけられます。数日しか経っていないと思っていたのに、現実世界では16年もの歳月が流れていました。ディヴニーは、語り手が床下の箱に触れた瞬間に仕掛けた爆弾が爆発し、語り手はその場で即死していたことを叫びます。つまり、物語は死後の世界での出来事だったのです。
 
 語り手は自分が死んでいることに気づかないまま、奇妙な警察署へと戻っていきます。そこには第三の警官が待ち受けており、物語は再び最初から繰り返されるのでした。

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