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森茉莉『甘い蜜の部屋』解説あらすじ

森茉莉
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はじめに

 森茉莉『甘い蜜の部屋』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

森鴎外の娘

 森茉莉は、森鴎外の長女です。

 茉莉は、鷗外を始め多くの人に囲まれ、大事にされました。特に鷗外は溺愛していました。

 東京女子高等師範学校附属小学校(現・お茶の水女子大学附属小学校)に入学したものの、10歳の時に教師と衝突して中退し、仏英和尋常小学校(現・白百合学園小学校)に転校。1919年3月、仏英和高等女学校(現・白百合学園高等学校)卒業。同年11月、鷗外の紹介でフランス文学者の山田珠樹と結婚します。1922年に1年間渡仏してパリに住みますが、この旅の途中、日本で父が亡くなります。

 茉莉のファザコンぶりは有名で、本作も自分をモデルのヒロインと、父との濃密な関係がえがかれます。

高踏派の作家鴎外の娘

 森茉莉の父、森鴎外は、高踏派の作家とされています。

 これは“l’école parnassienne”の,上田敏の訳語で『現代高踏詩集』(Le Parnasse contemporain)の詩人のことです。芸術のための芸術たる芸術至上主義を唱道したゴーティエとルコント・ド・リールの下に詩人が集い、この詩華集が刊行されたのでした。

 鴎外もこうした詩人の翻訳を手がけて影響されたため、高踏派と呼ばれます。

 高踏派は傾向としてロマン主義、象徴主義の特徴があり、主知主義的な理想主義をテイストとしています。

 森茉莉の作家性も、父からの感化が大きいため、高踏派的な、ロマン主義、象徴主義的世界を展開します。美少年をしばしば描き、「お耽美」と揶揄されることもあります。

 本作も象徴主義の代表作ワイルド『サロメ』的な、蠱惑的ヒロインを描きます。

タイトルの意味と、モイラ

 タイトルの甘い蜜の部屋とは、父親との濃密な愛の部屋です。近親相姦ではなく、深い精神的交情を、父林作とモイラは結びます。

 モイラと林作のモデルは当然(?)、森茉莉と森鴎外です。幼い頃から男を惑わせ、己の快楽のみで生きている美少女モイラのファムファタール的振る舞いが描かれます。

 名前のモイラは、おそらくギリシア神話における「運命の三女神」であるクロートー、ラケシス、アトロポスから取っていると思われます。モイライはゼウスの権威に従っていることから、ファザーコンプレックスを象徴する名前と思われます。

個人的評価

 個人的には、あまり本作は面白くないです。

 正直、森茉莉は発達障害ではないかと思っていて、生活力のなさ、極端な整理整頓の苦手さ、こだわりの強さ、などにそれが表れていると思っています。

 発達障害なので、こだわりの強さが耽美的方面で、そのジャンルの中では美的に洗練されたものに昇華されている部分はあって、やおいとか耽美、BL文脈で評価する向きがあるのも理解します。

 ただ、本作は極端な夢小説で、幼い頃から、フランス人のピアノ教師をその独特の芳香のような魅力で惑わせ、快楽のみで生きている美少女モイラが主人公でこれが森茉莉の分身なのですが、やっぱりこのあたり自己評価が周囲のそれとズレていて、自分を相対的に捉えるのはあまり得意でない作家という気がします。

 正直、趣味で書いたごく私的なものを読んでいる気持ちになります。

物語世界

あらすじ

 既に幼い頃から、フランス人のピアノ教師をその独特の芳香のような魅力で惑わせ、そして己の快楽のみで生きている美少女モイラが主人公です。

 モイラは父林作だけを、ただ深く愛しています。
 常安(ドミィトリィ)、ピータァ、天上守安ら男性達は、次々と虜になっていくものの、モイラに弄ばれるばかりでした。誰一人としてモイラの心を手にすることは叶いません。

 夫となった天上守安は、破滅していきます。モイラは自分に限りなく深い愛を注いでくれる最愛の男性、父林作の許へと戻るのでした。

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