始めに
ポー「ライジーア」解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ドイツロマン主義の影響
ポーはドイツロマン主義からの影響が顕著です。具体的にはホフマン、シラー、ゲーテ(『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)などの作品から影響を受けました。
ポーにはそこから幻想文学作品も多いです。
また、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』など、語り手や視点人物の内的世界の混乱、混沌はシェイクスピアなどより継承する、ロマン主義文学に典型的モチーフですが、ポーも継承します。
またホフマンは『砂男』で信頼できない語り手を導入し、ポーもこれを得意としました。
ゴシック文学の系譜
作家ホレス・ウォルポールの『オトラント城奇譚』がゴシック小説の先駆となり、以降はこのジャンルが連綿と継承されました。
ポーも『アッシャー家の崩壊』など、このジャンルを代表する作品を多く手掛けたほか、本作もゴシック小説や墓地派を思わせる暗いムードやグロテスクな要素が特徴的です。
語りの構造と復活
レジイアの死後も、彼女の記憶は語り手の人生を完全に支配し、次の妻であるロウィーナを愛することを許しません。
ロウィーナは語り手にとってほとんど実体のない存在であり、レジイアの記憶と比較されるだけの存在です。レジイアがロウィーナの体を乗っ取る結末は、この感情的な現実の具現化とも言えます。
語り手はレジイアの死後、アヘンに溺れています。物語の終盤の復活は、本当にレジイアが蘇ったのか、それとも薬物による幻覚や語り手の狂気の産物なのか、読者に判断を委ねています。
また語り手はレジイアの姓や出会った場所を思い出せないなど、不自然な記憶の欠落があり、彼が信頼できない語り手であることを示唆しています。
物語世界
あらすじ
物語は語り手による回想形式です。
語り手はライジーアとの出会いを思い出せないと言い、また妻となった彼女の父方の姓すら思い出せないものの、最初の頃はライン川沿いの古都で彼女との逢瀬を繰り返したそうです。
ライジーアは大鴉のような漆黒の髪を持つ背の高い美女で、古典語や現代語にも明るく、学識も深く、語り手は彼女に対して幼児のように全幅の信頼を置き、結婚後は彼女に導かれて、形而上学的な探究へと進みます。
しかし結婚から数年後、ライジーアは病に倒れ、「人は天使にも死神にも屈することはない、ただ衰えた意志の弱さがそうさせるのでない限り」と遺して亡くなります。
ライジーアを失って絶望した語り手は、彼女が残した遺産をもとに放浪をはじめ、イングランドの辺鄙な場所にある僧院を買い取って装飾を施し、屋敷に金髪碧眼の美女ロウィーナを迎え入れます。
しかし彼女は結婚後一月経っても彼を愛そうとせず、語り手の思いは亡き妻ライジーアの方へと引かれます。そして結婚から二ヵ月後、ロウィーナも病に臥せり、回復と再発とを繰り返します。
ある晩、語り手はロウィーナに飲ませるためのワインを取りにいこうとして、そのとき横切った部屋に奇妙な影が横たわっているのを目にします。そしてロウィーナがワインを飲んだときには、そのグラスにどこからか赤い液体の雫が入りこんだのを見ます。その日から彼女の容態は悪化し、数日後に彼女ものくなります。
ロウィーナの遺骸をベッドに横たえてその晩を過ごしていた語り手は、すすり泣きのような声が聞こえてきて、それがベッドの方からだったと感じ、しばらくベッドの上の遺骸を見守ります。
すると、ロウィーナの頬に赤みが差し、生気を取り戻しています。語り手は彼女を甦らせようとするものの、また生気を失いもとの死骸に戻ります。
そうして何度も生気を失い、また取り戻すのを繰り返すうち、その体は変貌を遂げています。
やがて彼女が死の床から起き上がり、彼の眼前に立つと、それは漆黒の髪を持つライジーアでした。




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