始めに
ポー「黄金虫」解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ドイツロマン主義の影響
ポーはドイツロマン主義からの影響が顕著です。具体的にはホフマン、シラー、ゲーテ(『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)などの作品から影響を受けました。
ポーにはそこから幻想文学作品も多いですが、本作はそうした要素は希薄です。
ゴシック文学の系譜
作家ホレス・ウォルポールの『オトラント城奇譚』がゴシック小説の先駆となり、以降はこのジャンルが連綿と継承されました。
ポーも『アッシャー家の崩壊』など、このジャンルを代表する作品を多く手掛けたほか、本作もゴシック小説や墓地派を思わせる暗いムードやグロテスクな要素が特徴的です。
物語世界
あらすじ
名前のわからない語り手に、ウィリアム・ルグランという友人があます。ルグランはユグノーの一族の生まれで、かつての財産を失ってからサウスカロライナ州沖のサリバン島で、召使の黒人ジュピターをと隠遁生活を送っています。
あるとき、語り手が彼のもとを訪れると、ルグランは新種の黄金虫を発見したと、興奮していました。貸していた昆虫のその代わりと言ってルグランは語り手に昆虫のスケッチを描いて見せます。しかしそのスケッチは語り手には髑髏を描いたようにしか見えません。語り手がそう伝えるとルグランは気を悪くし、スケッチを描いた紙を捨てようとします。しかしその前に絵を見るとそこに釘付けになり、やがて紙をしまって、うつつを抜かした状態になります。様子が変だと思った語り手は、そのまま辞去します。
それから1か月後、語り手のもとにルグランの召使ジュピターがやってきます。彼いわく、主人ルグランはあの日から黒板に妙な図形を書いたり、どこかへ一日中外出したりしているそうです。彼の持ってきたルグランの手紙には、語り手に「重要な仕事」があるから来るように書いてあります。
語り手がジュピターに連れられてルグランのもとに向かうと、ルグランは「黄金虫が財宝をもたらす」という伝え、本土の丘陵地帯の探検を手伝うように頼みます。彼の精神が錯乱していると語り手は思うものの、とりあえず彼の言うままに従います。
本土に着いた一行は、やがて巨大なユリの木を見つけます。ルグランはジュピターをその樹に登らせます。すると、その枝の先には髑髏が打ち付けてありました。ルグランはジュピターに、髑髏の左目から紐をつけた黄金虫を垂らさせ、その黄金虫が落ちたところを目印にして杭を打ちます。そしてそこから最も近い木からその杭までを巻尺でつなぎ、さらにその延長上をしばらく行ったところに目印をつけて、皆でここを掘るように頼みます。しかし何も見つかりません。実はジュピターが右と左を取り違えていたと、ルグランは気が付きます。
一行はもう一度ユリノキに戻って正しく先の手順をくりかえすと、再び掘り始めます。やがて大量の人骨といくつかの硬貨が見つかり、さらにその下には6つの木箱がありました。木箱の中身は大量の硬貨や黄金、宝石や装飾品の類でした。
ルグランはどのようにして財宝を見つけたか説明します。あの日、ルグランが黄金虫をスケッチした紙は、黄金虫を発見したのと同じ場所で見つけた羊皮紙でした。ルグランが語り手に紙を手渡したとき、語り手が暖炉の近くにいたので、熱の化学反応で隠された絵がスケッチの裏側に炙り出されていました。ルグランはさらに羊皮紙を調べ、山羊(キッド)のマークからそれが海賊キャプテン・キッドの財宝のありかを示すものだと考えます。またその紙には暗号が記されていました。
暗号に詳しかったルグランは、まず暗号内の記号の登場頻度を調べます。一番多いのは「8」の32回である。英語の文章で最もよく使われるアルファベットはeであるから、「8」は「e」を表している。そして英語の文章で最もよく使われる単語は「the」なので、暗号内で最も多く登場する文字列「;48」は「the」を表しています。こうして暗号を解読します。
「主教の宿にある悪魔の玉座には上等のガラスがある
四十一度十三分―北東で北よりの方角
東側の主な枝、七番目の大枝―髑髏の左目から撃て
木から狙撃地点を経て五十フィート向こうまで直進せよ」
ルグランはまず「主教(ビショップ)の宿」を探し、やがてサリバン島の近隣に「ベソップの城」と呼ばれる岩壁があるのを突き止めます。その岩壁は落ち窪んで玉座の形になっている場所がありました。「上等のガラス」は望遠鏡ぇ、ルグランはその場所に座って指示通りの方角に望遠鏡を向け、そこから木の枝に打ち込まれた髑髏を発見したのでした。
参考文献
・佐渡谷重信『エドガー=A=ポー』




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