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オーウェル『1984』解説あらすじ

ジョージ=オーウェル
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始めに

オーウェル『1984』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ユートピア文学、ディストピア文学

 本作はユートピア文学、ディストピア文学の作品です。

 ユートピアという言葉は、1516年に出版されたイギリスの思想家トマス=モアの著作『ユートピア』(Utopia)で初めて用いられました。ユートピアという言葉は、ギリシア語の outopos(存在しない場所)と eutopos(良い場所)の両者を踏まえ、理想的な国家に関する両義的で皮肉なモデルをそこで提起しました。これがその後のユートピア文学、ディストピア文学のモードに影響します。

ピカレスクと英米文学

 英米文学は、ピカレスクというスペインの文学ジャンルからの影響が顕著です。ピカレスクは、アウトローを主人公とする文学ジャンルです。ピカレスクは「悪漢小説」とも訳されますが、傾向としてピカレスクの主人公は悪人ではなく、アウトローではあっても、正義や人情に篤く、その視点から世俗の偽善や悪を批判的に描きます。高倉健のヤクザ映画みたいな感じで、主人公はアウトローだけど善玉、みたいな傾向が強いです。

 このピカレスクから英文学は顕著な影響をうけ、しかしフィールディング『トム=ジョーンズ』などを皮切りに、ピカレスクに刺激されつつも、それを英文学固有の表現として継承していきました。デフォー『モル=フランダーズ』なども有名です。

 そうした土壌の上で、ディケンズ『デイヴィッド=ゴッパーフィールド』、トウェイン『ハックルベリー=フィンの冒険』も展開されましたが、トウェインはオーウェルも好んだ作家でありました。

 本作もトウェイン『ハックルベリー=フィンの冒険』の冒険のように、ふとしたことから周囲の不正義に気が付き、抗おうとし始める主人公が描かれます

モーム、スウィフト的サタイア

 オーウェルはサマセット=モーム(『人間の絆』『月と六ペンス』)やスウィフト(『ガリヴァー旅行記』)の作品を好んでいました。ふたりとも風刺的な作品を特徴としています。

 スウィフトには『ガリヴァー旅行記』があり、あれが異世界冒険譚でありディストピアめいた世界をも描いていたのが印象的ですが、本作も全体主義がもたらすディストピアを描いています。

ロレンス、フォースター的なリベラリズム

 またD.H.ロレンス(『チャタレイ夫人の恋人』)やE.M.フォースター(『インドへの道』)のリベラリズム、自由主義からもオーウェルは影響され、自身も自由のためにファシズムに抗い、スペイン内戦への参加の中で『カタロニア讃歌』をものしました。

 本作は監視社会によって自由が損なわれた全体主義社会がもたらす悲劇を描きつつ、最後は歴史への希望も見え隠れします。

物語世界

あらすじ

 1950年代に第三次世界大戦の核戦争を経て、1984年現在、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの超大国に分割統治されています。

 舞台となるオセアニアでは、市民は常に「テレスクリーン」という双方向テレビジョン、また町に仕掛けられたマイクでほぼすべての行動が当局に監視されています。

 オセアニアの構成地域である「エアストリップ・ワン(旧英国)」の最大都市ロンドンに住む主人公ウィンストン・スミスは、真理省の下級役人として歴史記録の修正作業をしています。やがてウィンストンは、古道具屋で買ったノートに自分の考え整理する、禁止された行為をします。また抹殺されたはずの3人が載った新聞記事を見つけ、体制に疑いを強めます。

「憎悪週間」に遭遇した同僚のジュリアから手紙で告白され、相愛になります。チャリントンという老人の店を隠れ家としてジュリアと過ごします。さらに、党内局の高級官僚であるオブライエンと出会い、現体制への疑問を告げます。エマニュエル・ゴールドスタインが書いた禁書をオブライエンより渡され、体制の裏側を知ります。

 ところが思想警察だったチャリントンの密告により、ジュリアとウィンストンは思想警察に逮捕され、「愛情省」で尋問と拷問を受けます。最終的に彼は、愛情省の「101号室」で信念を砕かれて党の思想を受け入れ、処刑される日を想って心から党を愛しました。

 しかしラストに『ニュースピークの諸原理』とされた解説文が附されて、標準的英語の過去形で記されていることなどから、未来においてはこの支配体制が崩れていると読み解けます。

参考文献

・Crick, Bernard. ”George Orwell: A Life”

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