始めに
ディケンズ『ディヴィッド=コッパーフィールド』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
等質物語世界の語り手
本作は等質物語世界の語り手デイヴィッドを設定しています。
このような等質物語世界の語り手のティーンエイジスカースは本作、トウェイン(『ハックルベリ=フィンの冒険』)、サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』といったピカレスクの伝統として、英米文学に根付いていきます。
英文学とピカレスクの伝統
英米文学は、ピカレスクというスペインの文学ジャンルからの影響が顕著です。ピカレスクは、アウトローを主人公とする文学ジャンルです。ピカレスクは「悪漢小説」とも訳されますが、傾向としてピカレスクの主人公は悪人ではなく、アウトローではあっても、正義や人情に篤く、その視点から世俗の偽善や悪を批判的に描きます。高倉健のヤクザ映画みたいな感じで、主人公はアウトローだけど善玉、みたいな傾向が強いです。
このピカレスクから英文学は顕著な影響をうけ、しかしフィールディング『トム=ジョーンズ』などを皮切りに、ピカレスクに刺激されつつも、それを英文学固有の表現として継承していきました。デフォー『モル=フランダーズ』なども有名です。
そうした土壌の上で、本作も展開されています。
成長譚
本作は自伝的な側面が強く、苦労人だった作者の分身であるディヴィッドの冒険と成長、それから立身出世が描かれていきます。ピカレスクという伝統の中で、自伝的な物語を展開している感じになっています。
シェイクスピアの影響
ディケンズはまた、シェイクスピアからの影響が顕著です。ディケンズを代表する誇張的なキャラクター、カリカチュアライズやドラマティックなプロットはシェイクスピアにも由来します。本作を彩るバリエーション豊かなキャラクターもシェイクスピア文学を連想させます。
またシェイクスピアの感情や個人を重んじるテイストはゲーテ(『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)などのロマン主義文学の礎ともなりましたが、本作もそうしたテーマは共通します。
物語世界
あらすじ
デイヴィッドが生まれた時、父は死んでいました。デイヴィッドの大伯母ベッツィ=トロットウッドは、女の子を希望していたため、失望して家を出ていきます。
優しい母と乳母ペゴティーらとデイヴィッドは幸せに暮らしていたものの、マードストンに言い寄られて母は再婚します。結婚後マードストンとその姉は家を支配し、母は弱り死亡します。デイヴィッドはこの義父とその姉から暴力を受け、母の死後には学校もやめさせられて、酒屋に出されます。貧乏人ミコーバーのもとで暮らすものの、やがてミコーバーは借金で逮捕され、デイヴィッドは大伯母のいるカンタベリーへ向かいます。
カンタベリーで大伯母に保護されると、その友人である弁護士ウィックフィールドのもとで暮らし、学校に通います。そこではアグニス、ユライア=ヒープらと知り合います。学校を卒業するとかつての旧友スティアフォースに出会い、その後一緒にペゴティー家のもとを訪れます。しかしスティアフォースは幼馴染エミリーと駆け落ちします。
ロンドンで法律を学ぶためデイヴィッドはスペンローの法律事務所を訪れたものの、そこの娘ドーラに一目惚れし、密かに婚約します。ところが大伯母が破産、さらにユライア=ヒープが事務所を乗っ取ろうとしていることが判明します。スペンローが他界すると、デイヴィッドは速記を習得し報道記者として自立、ドーラと二人で暮らし始めます。一方、事務所を乗っ取ったユライア=ヒープに対し、その秘書となっていたミコーバーはユライアの姦計を暴きました。
病弱だったドーラは、病で死亡します。デイヴィッドはヨーロッパ大陸旅行を計画するものの、その出発前にスティアフォースが海で遭難して死んだのを知ります。ヨーロッパを彷徨う中、デイヴィッドはアグニスに惹かれていると自覚します。大陸で作家として成功したデイヴィッドは、イギリスに戻りアグニスと結ばれました。
参考文献
・Forster, John. “The Life of Charles Dickens “




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