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ナタリア・ギンズブルグ『ある家族の会話』解説あらすじ

ナタリア・ギンズブルグ
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始めに

 ナタリア・ギンズブルグ『ある家族の会話』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ギンズブルクの作家性

 ギンズブルクにとって最も重要な仕事の一つは、プルーストの『失われた時を求めて』第1篇(スワン家の方へ)をイタリア語に翻訳したことです。翻訳作業を通じて、彼女は過去の細部をどう記述するかを学びました。


​ ​ギンズブルクはチェーホフを深く愛し、彼についての評伝的エッセイも残しています。


​ ​ギンズブルクは、戦後イタリア文学の重要拠点であるエイナウディ出版社で働いており、そこで作家チェーザレ=パヴェーゼと深く親交しました。


​ ​彼女は特定の誰かというだけでなく、エイナウディ社のサークルそのものから影響を受けています。カルヴィーノは同僚であり友人で、互いに批評し合うことで、戦後イタリアのネオレアリズモを独自の方向へ発展させました。​エルザ=モランテは同時代の女性作家として、その力強い叙事詩的才能に敬意を払っていました。

タイトルの意味

 この本の最大のテーマは、特定の言葉や言い回しが、その家族を一つの共同体にするという点です。家族の間でしか通じない冗談、口癖、独特の呼び名。それらは、たとえ数十年ぶりに再会したとしても、一言発するだけで一瞬にしてあの頃の家族に戻してくれる魔法のような役割を果たします。外部の人には意味がわからない言葉を共有することで、自分たちはこの家族の一員であるという強い帰属意識を確認し合っています。


​ ​ギンズブルクの父ジュゼッペ=レーヴィは、非常に個性的で厳しい人物として描かれます。彼は気に入らないものすべてを独自の言葉で切り捨てます。家族の会話は、父の怒鳴り声や極端な意見を軸に回転します。しかし、そのいつものお決まりのセリフこそが、子供たちにとっては奇妙な安心感をもたらしていました。

記録と過去

 ​物語の背景には、ファシズム、反ユダヤ主義、第二次世界大戦という過酷な現実があります。外の世界でどれほど恐ろしいことが起きていても、家の中ではスープが冷めているとかあの親戚は相変わらずだといった些細で世俗的な会話が繰り返されます。ギンズブルクは、政治的な主義主張を雄弁に語るのではなく、あえていつもの会話を書き連ねることで、激動の時代を生き抜いた家族のたくましさと、失われたものへの哀愁を表現しました。


​ ​彼女にとって、会話を記録することは、亡くなった人々や離れ離れになった人々を言葉の中に閉じ込めて保存する行為でした。プルーストの影響を受けつつも、長い回想ではなく一言のフレーズにその人の魂を宿らせました。

物語世界

あらすじ

 ​1920年代から1950年代にかけてのトリノを舞台にします。物語の主役は、著者の父で著名な解剖学者ジュゼッペ=レーヴィです。彼は短気で、自分の基準に合わないものを「不作法」「くだらん」と一刀両断にします。対照的に、母リディアは天真爛漫で、音楽や物語を愛しています。5人の子供たちは、この強烈な両親の間で、独自のジョークや言い回しを共有しながら育ちます。


​ ユダヤ系の一家であるレーヴィ家にとって、ムッソリーニのファシズム政権下での生活は次第に困難になります。​家族やその友人たちが、次々と警察にマークされ、逮捕されたり亡命したりします。​著者のナタリア自身も、反ファシストの闘士レオーネ=ギンズブルクと結婚。しかし、平穏な日常の裏側には常に弾圧の影がつきまといます。


​ ​第二次世界大戦が激化し、ナタリアは夫レオーネと共に流刑地へ送られ、後に夫を獄中で亡くします。家族は散りぢりになり、かつての賑やかだった食卓は失われてしまいます。しかし、そんな過酷な状況下でも、彼女のペンは悲劇を大げさに嘆くのではなく、淡々と誰が何を言ったかを記録し続けます。


​ ​戦争が終わり、生き残った家族や友人たちは再び集まります。かつての友人たちが有名作家や政治家になっても、家族が集まれば、父は相変わらずくだらんと怒鳴り、母は昔と同じ歌を口ずさみます。

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