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モンテルラン『独身者たち』解説あらすじ

モンテルラン
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始めに

モンテルラン『独身者たち』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

モンテルランの作家性

 モンテルランの根底にあるローマ的な精神は、古典から来ています。​セネカのストイシズムと死の美学は、モンテルランの作風に深い影を落としています。​プルタルコス『英雄伝』に見られる高潔な精神や、個人の卓越性を重んじる姿勢に影響を受けました。​スエトニウス『皇帝伝』などを通じ、権力者の孤独や冷徹な人間観察の手法を学びました。


​ ​17世紀のフランス文学に見られる簡潔さと厳格さを、彼は自らの文体の手本としました。​サン=シモン公爵の辛辣で鋭い人間観察と、貴族的な自尊心に満ちた回想録に深く傾倒していました。​パスカルの信仰と懐疑、そして人間の深淵を見つめる視点に共鳴しました。


​ ​ニーチェは最も重要な影響の一つです。弱者への蔑視、強者の道徳、そして超人に近い貴族的な生き方は、ニーチェ思想の反映と言えます。​スタンダールの心理的な透明性と、情熱を追求するエゴイズムの描き方に影響を受けました。​モーリス=バレスの自我の崇拝やナショナリズムに共鳴しましたが、後にモンテルランはより普遍的で冷徹な視点へと移行していきました。​またダンヌンツィオの唯美主義や、行動と芸術を一致させる姿勢に影響を受けました。

タイトルの意味

 ​物語の中心となるレオンスとエリーの叔父甥は、過去の栄光にすがり、当時のブルジョワ社会に適応できない貴族の末路を体現しています。 労働や金銭管理を卑しいものとみなす古い価値観が、実利的な現代社会に粉砕される過程が描かれます。彼らは何もしないことが貴族の証だと信じていますが、それが結果として経済的・精神的な自滅を招きます。

 ​モンテルランは、社会の歯車になれない、あるいはなろうとしない不適応者の心理を鋭くえぐり出しています。裕福な親族に依存しながらもプライドを捨てきれない姿は、滑稽でありながら痛烈な悲哀を誘います。ここでの独身とは、単に配偶者がいない状態ではなく、他者や社会との有機的なつながりを失い、自己の中に閉じこもった状態を指しています。

ニヒリズム

 この作品には、モンテルランらしい突き放した視点が色濃く反映されています。裕福な銀行家である親族オクターヴが、困窮するレオンスたちを見捨てる様は、人間の本性にある無関心と冷酷さを浮き彫りにします。 読者は登場人物に同情する隙を与えられず、ただ彼らが崩壊していく過程を観察させられます。


 ​物語の終盤にかけて、貧困と病による肉体の崩壊が克明に描かれます。 英雄的な死ではなく、惨めで、誰からも忘れ去られるような孤独な死。これは、モンテルランが終生抱き続けたニヒリズムへの恐怖と直結しています。

物語世界

あらすじ

 舞台は1920年代のパリ。かつての名門、コアティダン家の生き残りである二人の独身男の生活が崩壊していく過程が描かれます。主人公のレオン=ド=コアントレ(50代)は、伯父のエリー=ド=コアティダン(70代)とともに、パリのオートゥイユにある古びた屋敷で暮らしています。彼らは貴族の誇りを捨てられず、仕事もせず、世間から隔絶した生活を送っています。屋敷は手入れもされず荒れ果て、二人は不潔で奇妙な隠遁生活を続けていました。


​ ​彼らの生活を支えていた資金が底をつき、ついに屋敷を手放さなければならなくなります。二人は、親族の中で唯一の成功者であるオクターヴ=ド=コアティダン(エリーの弟であり、裕福な銀行家)に泣きつきます。しかし、実利主義的なオクターヴは、この時代遅れの居候たちを冷淡にあしらい、最低限の援助しか与えようとしません。
 
 ​結局、二人は住み慣れた屋敷を追い出されます。​伯父エリーは寄宿舎のような安宿へ放り込まれます。彼は偏屈で世俗を嫌いながらも、どこか図太く生き延びていきます。甥レオンはより繊細で無能でした。オクターヴから与えられたのは、人里離れた森の中にある、寒々しい狩猟用の小屋での生活でした。


​ ​都会の喧騒からも、かつての誇りからも切り離されたレオンは、極寒の小屋で一人、心身ともに衰弱していきます。彼は自分が誰からも必要とされていないこと、そして自分の人生が全くの無であったことを悟ります。最後は、誰に看取られることもなく、寒さと孤独の中で惨めな死を迎えます。

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