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アン・ラドクリフ『ユードルフォの秘密』解説あらすじ

アン・ラドクリフ
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始めに

アン・ラドクリフ『ユードルフォの秘密』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ラドクリフの作家性

 ウォルポール 『オトラント城奇譚』の中世の城、地下通路、呪いといったゴシックの舞台装置の基礎を彼から学びました。ウォルポールが超自然現象をそのまま描いたのに対し、ラドクリフは最後には合理的な説明がつくという説明された超自然の手法を確立しました。


​ ソフィア=リーの歴史小説『休閑地』は、ラドクリフに強い影響を与えました。迫害される女性主人公、歴史的な背景、そして恐怖を内面的な心理描写として描く手法などを継承します。


​ 哲学者バークの美学論『崇高と美の観念の起源に関する哲学的探究』は、彼女の創作の柱となっています。荒れ狂う自然や巨大な山々、深い霧などが、人間に恐怖と同時に畏敬の念を抱かせるという崇高の理論を、彼女は風景描写に完璧に落とし込みました。


 またラドクリフは古典文学への造詣が深く、特にシェイクスピアとミルトンを愛読していました。


​ 画家では​サルヴァトル=ローザ、​クロード=ロランから刺激されました。

感性と理性

​ 主人公エミリーは非常に感受性豊かな女性として描かれます。しかし、父セント=オーバートは死の間際、彼女に「感情に振り回されず、理性で自分を律しなさい」と遺言を残します。


​ 読者はエミリーと共に、想像力が生み出す根拠のない恐怖に立ち向かうことになります。ラドクリフは、過剰な感受性が人をいかに盲目にするかを警告し、最終的には理性が勝利するプロセスを描いています。

ゴシック的様式

 前述のエドマンド=バークの理論が、この物語の風景描写に完全に組み込まれています。エミリーがピレネー山脈やアペニン山脈を旅する際、その壮大な景色は彼女を圧倒し、同時に慰めを与えます。広大な自然の崇高と、閉鎖的で暗いユードルフォ城監禁の対比によって、人間の小ささと、それに抗う精神の強さを表現しています。

 ゴシック小説において、城はしばしば女性を閉じ込める男性社会の象徴です。幽霊よりも恐ろしいのは、悪役モントーニがエミリーの相続財産を奪おうとする法的・肉体的な支配です。当時、女性には財産権がほとんどありませんでした。エミリーがモントーニの脅迫に屈せず、最終的に自らの権利と家を奪還する物語は、当時の女性読者にとって一種の解放の物語でもありました。


​ 説明された超自然は、ラドクリフの最大の特徴です。物語の中で幽霊かと思われる現象は、最後には物理的な理由で説明されます。迷信を否定し、世界は理性的科学的に理解できるものであるという啓蒙主義的な立場を貫いています。

物語世界

あらすじ

 ​主人公エミリー=セント=オーバートは、南フランスの美しい邸宅で両親と穏やかに暮らす、感受性豊かな美少女でした。しかし、最愛の両親が相次いで病死してしまいます。


 ​独り身となったエミリーは、叔母のマダム=シェロンに引き取られることになります。この叔母がなかなかの曲者で、エミリーの恋人ヴァランクールとの仲を引き裂き、自分は野心家のイタリア人貴族モントーニと再婚してしまいます。


​ ​モントーニはエミリーと叔母を連れ、イタリアのアペニン山脈にそびえ立つ、荒廃したユードルフォ城へと向かいます。城は暗く、迷路のような廊下や隠し扉だらけ。

モントーニは実は没落貴族で、エミリーの叔母の財産を狙う冷酷な男でした。

 夜な夜な聞こえる奇妙な物音、動く影、そして黒いベールの向こう側にある秘密の謎が描かれます。
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 モントーニは財産を譲るよう叔母を虐待し、ついには彼女を死に追いやります。次に標的となったエミリーは、数々の恐怖体験に耐えながらも理性を保ち、味方の助けを借りてなんとか城を脱出することに成功します。
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 エミリーはフランスに戻り、紆余曲折を経て恋人ヴァランクールと再会します。そして、物語を彩った数々の超自然現象の真相が明かされます。幽霊だと思っていたものは、実は泥棒だったり、ただの風の音だったり、あるいは人間が仕組んだ仕掛けだったことが判明します。​黒いベールの向こう側にあったのは、死体ではなく、ただの不気味な蝋人形でした。


 ​エミリーは正当な遺産を取り戻し、愛する人と結ばれます。

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