始めに
レーモン=ルーセル『アフリカの印象』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ルーセルの作家性
ルーセルにとって、ジュール=ヴェルヌは単なるお気に入りの作家ではなく、生涯を通じての崇拝対象でした。ルーセルはヴェルヌの想像力を愛しました。彼は現実の旅行には興味がなく、豪華な移動車に閉じこもり、外の景色を見ずにヴェルヌ的な空想の世界に浸ることを好みました。
ヴェルヌに次いでルーセルが愛したのが、ピエール=ロティです。ロティの描く異国への憧憬は、ルーセルの作品におけるどこでもない場所の設定に影響を与えました。
ユゴーからも、詩的な構成や壮大なビジョンの面で影響を受けています。ルーセルの初期の詩作品には、ユゴーのような古典的な韻律への執着が見られます。この形式への拘泥が言語遊戯へと進化していく土壌となりました。
ルーセルはこれらの作家から内容を借りたのではなく、彼らの作品から得た驚きやイメージを、全く別の機械的な言語操作で再現しようとしました。彼は、発音が似ているが意味が異なる2つの文章を選び、その2つの間を埋めるように物語を構築する「手法(プロセデ)」を編み出しました。
プロセデ
この作品の最大のテーマは、内容そのものよりも、その生成プロセスにあります。 ルーセルは、発音が同じで意味が異なる2つのフレーズを最初に用意し、その2点をつなぐために物語を紡ぎました。作家が書きたいことを書くのではなく、言葉の響きが次に書くべきシーンを強制的に決定するのです。
この本は大きく二つのパートに分かれていますが、これが謎とその解明というテーマを形作っています。前半(第1〜9章) 読者は、何の説明もなく提示される奇怪な光景を、ただ困惑しながら見せつけられます。後半(第10章〜)はなぜその光景が生まれたのか、登場人物たちの過去や因縁が説明されていきます。
物語の前半は、難破して捕らえられたヨーロッパ人たちが、身代金を待つ間に開催する祝祭の描写に費やされます。巨大なミミズが琴を弾いたり、切断された頭部がしゃべったりといった、異常なまでに精緻でナンセンスな発明品やパフォーマンスが次々と登場します。ルーセルは自然界の美しさには興味を示さず、あくまで人間が作り出した不自然な驚異を執拗に描写しました。
物語世界
あらすじ
前半:豪華客船リンセー号がアフリカの架空の国ポニュケレの海岸で難破します。乗客たちはその地の王タルー7世に捕らえられ、身代金が届くまでの間、自分たちの身の安全を保障してもらう代わりに、「比類なき者たちの祝祭(ガラ)」を開催し、王を喜ばせることを約束します。捕らえられたヨーロッパ人たちは、各自が持てる知識、技術、あるいは異常なまでの執念を注ぎ込み、信じられないようなパフォーマンスや発明品を披露します。 巨大なミミズが自分の分泌液でできた糸を操り完璧な音楽を奏でたり、溶液に浸された死者の頭部が生前と同じように語り出したり、太陽の熱に反応して複雑な交響曲を自動で演奏する巨大な機械を用いたり。
後半:身代金が届き、捕虜たちが解放された後、物語は一転して、なぜあのような奇妙な光景が生まれたのかという背景を説明し始めます。登場人物たちの複雑な家系図、過去の因縁、愛憎劇、王位継承をめぐる陰謀。それらのエピソードが組み合わさり、前半に登場した不条理な小道具や行動のすべてに理由が与えられていきます。最後は、無事に解放された乗客たちが船でヨーロッパへ帰り、物語は唐突に終わります。




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