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コクトー『地獄の機械』解説あらすじ

ジャン=コクトー
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始めに

 コクトー『地獄の機械』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

古典主義、心理主義、モダニズム

 コクトーは、ジャン=ロラン、ワイルド、ロスタン、ダンヌンツィオ、ミュッセ、ボードレール、ヴェルレーヌ、フルニエ、スタンダール、ラファイエット夫人、コンスタンなど、古典主義、ロマン主義、象徴主義、心理小説から影響を受けました。

 特にフルニエ『モ―ヌの大将』、ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』、スタンダール『パルムの僧院』、コンスタン『アドルフ』を評価し、その古典的スタイルに影響されました。

 ジッドとも親しくし、そのモダニズムや心理劇に影響しました。

オイディプス神話

 本作はオイディプス王神話をもとにします。以下はそのあらましです。

 テーバイの王ラオスと妃イオカステは、デルポイの神託から「生まれてくる子は父を殺し、母と交わるだろう」と告げられます。息子が生まれると、予言を恐れたラオスは赤ん坊の足首に釘を打ち込み(ここから「腫れ足=オイディプス」という名が生まれる)、捨てさせます。しかし牧人に拾われ、コリントス王ポリュボスと妃メリベアの養子として育てられます。

 成人したオイディプスは、自分の出生に疑念を抱き、神託を求めます。すると「父を殺し母と交わる運命」と告げられ、養父母を本当の両親だと思っていた彼は、それを避けるためコリントスを離れます。そしてテーバイへ向かう道中、見知らぬ老人(実の父ラオス)と口論になり、彼を殺してしまいます。

 テーバイを悩ませていた怪物スフィンクスの謎かけを解いたオイディプスは英雄として迎えられ、未亡人の王妃イオカステと結婚し、王となります。これが母との婚姻です。

 疫病に苦しむテーバイで神託を仰いだ結果、災厄の原因は「父殺し・母婚の罪」にあると判明。やがて真実が明るみに出ると、イオカステは自害し、オイディプスは絶望して自らの目を潰し、放浪の身となります。

脚色の方向性

 本作はオイディプス神話の運命悲劇としての側面にフォーカスした翻案です。

 「運命悲劇」とは、主人公が避けようとしても避けられない運命によって破滅に導かれる型の悲劇を指す言葉です。特にギリシア悲劇の代表的な構造として知られています。ソポクレス『オイディプス王』(神託を避けようとしたオイディプスが、結果的に父を殺し母と結婚してしまう)はその典型です。

 コクトーの戯曲 『地獄の機械』 は、ソポクレスの『オイディプス王』などを下敷きにした作品で、「父殺し」「近親相姦」そのものよりも、それを不可避に導く「運命の仕組み(機械)」に強い関心をもって描いています。タイトルの「地獄の機械」とは、まさにそのような運命に言及するものです。

 ここでの「機械」は、オイディプスを待ち受ける不可避の運命を指します。神託や偶然、そして人間の行為が複雑にかみ合い、一度動き始めれば誰も止められない巨大な仕掛けです。

 またフィクションであるところの「悲劇=逃れられないフィクションのプログラム」を前景化し、観客に「運命悲劇とは演劇的構造にほかならない」と暗示するような節があり、運命悲劇を演劇の自己言及的装置として再演出し、人間一般の矮小さと運命の崇高さのコントラストを強調します。

物語世界

あらすじ

プロローグ

 物語の背景が語られます。

 赤ん坊が山腹に捨てられ、赤ん坊のオイディプスはコリントス王に養子として引き取られたのでした。オイディプスは、父を殺し母と結婚すると告げるデルポイの神託に疑問を呈します。

 十字路で、オイディプスは他の旅人と殴り合いになり、知らず知らずのうちにテーバイ王である父ライオスを殺してしまうのでした。スフィンクスを征服した後、オイディプスはテーバイに入り、イオカステ女王と結婚する褒賞を要求します。またしても彼は神託の予言を実現し、女王と結婚することで母と結婚します。

 母との間に4人の子供をもうけた後、すべてが明らかになります。イオカステは首を吊り、オイディプスは母のブローチで自分の目を潰してしまいます。

 ナレーターはこう締めくくります。 「人の前には、完全に巻き上げられた機械があります。そのゼンマイはゆっくりと、人間の一生を全て解き放ちます。それは地獄の神々が、人間を死により消滅させるために考案した、最も完璧な機械の一つです」と。

第1幕:幽霊

 テーベの城壁を警備していた二人の兵士は、スフィンクスの件とその正体について話し合っています。二人がライオス王の幽霊を目撃し続けているところに、将校が到着します。将校は幽霊の目撃について二人に質問し、任務に戻ります。

 テイレシアースとイオカステが入ってきて、兵士たちにも幽霊の目撃について質問します。イオカステがだんだん信じ始めると、ライオス王の幽霊が現れます。ライオスが妻を呼んでも、他の誰にも姿も声も見えないのでした。夜明けに鶏が鳴いた後、テイレシアースとイオカステは退場します。

 二人が去った後、ライオス王の幽霊は二人の兵士の目にも見え、聞こえるようになります。ライオスは神々に逆らって、兵士たちにオイディプスとイオカステの差し迫った破滅について警告しようとするものの、警告を伝えようとした瞬間に姿を消すのでした。

第2幕:スフィンクス

 美しい娘に変装したスフィンクスとアヌビスはテーベの郊外に座り、街の門が閉まったことを知らせるラッパの音を1回目と2回目どちらで聞いたかについて言い争っています。スフィンクスは、もう殺すつもりはないと宣言しますが、アヌビスは神々に従順であり続けるよう警告します。

 アヌビスが隠れている間に、母親と2人の子供がスフィンクスの行く手を横切ります。その際母親にはもう1人の息子がいて、スフィンクスがその息子も殺したことが明らかになります。

 母親と子供たちが退場するとき、2回目のラッパが鳴ります。アヌビスは、スフィンクスは3回目のラッパが鳴るまで留まらなければならないと言います。

 その時、オイディプスが現れ、アヌビスは再び隠れます。スフィンクスとオイディプスは、スフィンクスとオイディプスのこれまでの旅について話し合います。その後スフィンクスはオイディプスに謎かけをし、オイディプスは正解を答え、スフィンクスは死ぬのでした。

 勝利の証として、オイディプスはアヌビスの首とスフィンクスの遺体をテーベに持ち帰り、褒美を受け取ります。

第三幕:新婚初夜

 オイディプスとイオカステが結婚し、今は新婚の部屋に二人きりです。オイディプスもイオカステも結婚式の日から疲れ果てています。

 結婚式が終わる前に、テイレシアスがオイディプスに結婚への不安を伝えに来ます。オイディプスは侮辱され、テイレシアスの喉元を掴むのでした。オイディプスはテレイシアスの目を覗き込み、イオカステも健康で幸せに暮らす自分の将来を見ます。それ以上見ようとしたその時、おそらくは神々の仕業か、一時的に目が見えなくなります。

 やがてオイディプスは視力を取り戻し、テイレシアスに謝罪し、自分がポリュボスとコリントスのメロペーの一人息子であることを明かします。テイレシアスが退出した後にイオカステが入ってきて、二人はイオカステがライオス王の幽霊を調査した夜のことを話し合います。オイディプスは眠っている間にアヌビスが襲ってくるという悪夢を見ますが、イオカステは母親らしいやり方で彼をなだめます。

第4幕:王

 コリントスからの使者がオイディプスに、父ポリュボス王が亡くなり、母メロペ王妃は老衰のため理解できないという知らせを届けます。使者はオイディプスに、彼が養子であることを告げます。オイディプスは、何年も前に馬車で人を殺したことを明かします。養子であることを知ったイオカステは退場し、オイディプスは新たな情報を整理します。

 妻と話すために退場しようとすると、イオカステが自殺しているのを発見します。オイディプスはライオスとイオカステの息子であることが明らかになひます。アンティゴネーが部屋に入り、母が亡くなり、父に目を刺されたと告げる。オイディプスはイオカステの亡霊に出会い、イオカステに連れ去られるのでした。

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