はじめに
泉鏡花『由縁の女』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
泉鏡花の口語的世界
泉鏡花は、尾崎紅葉の硯友社のメンバーで、そこから江戸文芸の戯作文学を参照しつつも、リズミカルな口語によって幻想的で性と愛を中心とする世界を描きました。
江戸文芸にあった洒落本ジャンルは、遊郭における通の遊びを描くメロドラマでしたが、鏡花も洒落本を継承して、花柳界におけるメロドラマを展開しました。また読本的な幻想文学要素、人情本的な通俗メロドラマからも影響されて、幻想文学、メロドラマをものした鏡花でした。戯作文学の口語的な豊かな語りのリズムを鏡花は継承しました。
本作は、人情本的メロドラマを展開します。
タイトル
タイトルの「由縁の女」ですが、それは主人公の禮吉にとって、複数の人物を指示しています。
まず大きいのはお楊です。ある夜半、露野と2人で出歩く禮吉は、初恋の人お楊と遭遇するものの、斑猫の毒に体を冒されていたお楊は、他人へ醜い顔を見せることを拒絶していました。そして、彼女にまた再び会うために奔走する禮吉は、なんとか彼女にまた会うものの顔をみることは叶わず、彼女を守護する白痴の男に殺されてしまいます。
禮吉の馴染みの露野もまた一人です。彼女を地元の権力者大郷子から助けようとしたせいで、禮吉は苦難を味わいます。
妻のお橘も最後に、夫禮吉とその亡き父母の骨を東京に持ち帰り、汽車で涙する姿が描かれ、由縁の女です。
はとこのお光も、禮吉に過去を回想させます。
物語世界
あらすじ
亡き父母の墓を移すため、東京に妻お橘を残して故郷金沢へ向かう禮吉。そこで、放っておけば墓が取り壊されると手紙をくれた、はとこのお光と再会し、思い出に浸ります。
その後、禮吉の馴染で、禮吉が川へ落とした煙管の夢を見たという露野とも再会し、彼女が地元の権力者大郷子のもとで悲惨な生涯を送っていることを知ります。
大郷子からかくまうため、露野の乳母のもとへ送り届けるものの、これを大郷子は姦通と騒ぎ、禮吉の帰京を邪魔します。
禮吉から墓の移動を託されたお光は、向山の墓前で大郷子一味に襲われます。大郷子との一件はついに部落騒動へと発展するものの、落ち着きを取り戻します。
ある夜半、露野と2人で出歩く禮吉は、初恋の人お楊と遭遇するものの、斑猫の毒に体を冒されていたお楊は、他人へ醜い顔を見せることを拒絶していました。
一度退いた禮吉ですが、お楊がいる場所で、かつ亡き母との思い出の地である魔所白菊谷を目指します。そしてお楊との再会するものの、顔を見ることは叶わず、お楊を守護していた白痴の男甚次郎に殺されます。
夫禮吉とその亡き父母の骨を東京に持ち帰るお橘は、汽車で涙するのでした。



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