始めに
泉鏡花『歌行灯』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
泉鏡花の口語的世界
泉鏡花は、尾崎紅葉の硯友社のメンバーで、そこから江戸文芸の戯作文学を参照しつつも、リズミカルな口語によって幻想的で性と愛を中心とする世界を描きました。
江戸文芸にあった洒落本ジャンルは、遊郭における通の遊びを描くメロドラマでしたが、鏡花も洒落本を継承して、花柳界におけるメロドラマを展開しました。また読本的な幻想文学要素、人情本的な通俗メロドラマからも影響されて、幻想文学、メロドラマをものした鏡花でした。戯作文学の口語的な豊かな語りのリズムを鏡花は継承しました。
能の物語
本作は能の世界を描く物語です。
恩地喜多八は能のシテ方宗家の甥でしたが、謡の師匠宗山と腕比べを行い自殺に追い込んでしまって勘当されます。宗山には娘お三重がいたものの、親の死によって芸者となりました。能を封印して放浪していた喜多八は偶々お三重と会い、二度と能をしないとの禁令にもかかわらず、お袖に舞と謡を教えます。
喜多八の伯父源三郎の前で喜多八に学んだお三重が『海人』の「玉之段」を舞う場面が終盤に展開されます。
『海人』は、房前大臣が、幼少のころに亡くした母が讃岐国志度津の人であったことから、弔いにそこを訪ねて、その浦の海女が登場する話です。そしてその海女は房前の母の幽霊で、龍宮に奪われた「面向不背の珠」をとりかえした経緯を物語ります。後半では房前が妙法蓮華経で母の追善供養をし、龍女に姿をかえた母が供養に感謝する流れです。
物語世界
あらすじ
主人公の恩地喜多八は、謡を師匠である宗山から習っています。ある日、師匠と謡の技量を争い、喜多八が勝ちます。師匠は敗北に耐えかねて憤死してしまいました。そのせいで喜多八は叔父の恩地源三郎から勘当され、各地を放浪します。
旅先の桑名で芸者のお三重に会います。お三重の悩みを聞いた喜多八は、舞を教えます。鼓ヶ岳の松風と五十鈴川の流れの音が聴こえる森の中で稽古をします。鼓ヶ岳は師匠が憤死した場所で、喜多八は人目を避けなくてはいけません。また、お三重が師匠の娘であることも、喜多八はわかっていました。
他方、源三郎らが見世物を演じた帰りに、湊屋という桑名の宿屋に泊まります。お三重は芸者として源三郎の宴席に招かれ、源三郎らに昔話を語ります。それを聞いた源三郎らは、お三重に舞を教えたのは、喜多八であると悟ります。
お三重の話を聞き終えた源三郎らは、お三重に舞うように求めます。源三郎らも江戸流の謡と囃子を奏でます。お三重はそれらに合わせて踊ります。
江戸流の謡と囃子を聴いた喜多八も、それに引きつけられて謡に加わります。喜多八の謡とお三重の舞が合わさるのでした。




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