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川端康成『舞姫』解説あらすじ

川端康成
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はじめに

 川端康成『舞姫』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

モダニズム(ジョイス,横光利一)、異質物語世界の語り手

 川端康成は新感覚派を代表するモダニズム文学の作家として知られています。ジョイス(『ユリシーズ』)、横光利一(『機械』)は意識の流れの手法を展開し、一人称的視点のリアリズムを展開しましたが、本作も一人称的視点の不確かさ、リアリズムを描く内容と言えます。

 本作における語り手は異質物語世界によるもので、主人公は夢を諦めた元バレリーナ波子の視点から主に物語は描かれます。

時代の移ろいとペシミズム

 全体的にチェホフ『桜の園』 や太宰『斜陽』に似た、時代の移ろいとそのなかでの家族の変容の模様をペシミスティックに描くコンセプトです。

 元プリマ・バレリーナの波子の一家が主人公で、過去の舞姫の母から夢を託された娘の品子、妻の財産にたかる夫の矢木、冷めている息子の高男、優柔不断な元恋人の竹原、といったさまざまな登場人物の模様が描かれます。

家族という関係の網の中での心理劇

 川端康成の作品では、『伊豆の踊子』『雪国』『みづうみ』『眠れる美女』でもそうですが、自分が帰属する共同体やコミュニティから離れたところにいる主人公の視点から展開される心理劇が多いのですが、本作は『山の音』などと近く、家族の中での心理が展開されています。

 心理劇の中心にいる登場人物はそれぞれ異なる信念、選好を持ち、家族のなかで戦略的コミュニケーションを展開していきます。それが交錯する中で物語が展開されていきます。この辺りは川端も好んだドストエフスキーの作品(『罪と罰』)を連想します。

物語世界

あらすじ

 波子は、夫・矢木元男に内緒で、結婚前(20年前)の恋人で友人関係にある竹原と会っていました。竹原とはプラトニックな関係でしたが、波子は竹原を愛し、実家の土地を売る相談の口実などで密会しています。

 かつてバレリーナだった波子には、21歳の娘と大学生の息子がいます。娘の品子も舞姫を目指し、波子は娘に夢を託しています。夫の矢木は国文学者で、貧乏書生上りで波子の家庭教師でした。波子の家は上流階級で、二人の結婚には矢木の母親の打算がありました。戦争中空襲で四谷見附の邸宅が焼け、戦後は北鎌倉の波子の実家の別荘が矢木一家四人の住居となりました。

 矢木は波子の財産を管理します。矢木は波子が竹原と会っていることを薄々知っていたものの、顔には出さずに妻を観察していました。波子はそんな夫におびえ、求めを拒むことができず、竹原の妻への嫉妬も感じます。

 ある日、帝国劇場で竹原と舞踊劇を観た帰りに息子の高男と会った波子ですが、高男から報告を受けた矢木は、子供たちの前で妻の浮気を咎めます。

 その夜、波子ははじめて夫を拒みます。戦時中は愛国的でしたが、戦後は非戦論者となった矢木は、内緒で自分の貯金をし、朝鮮戦争に怯え、共産主義になりそうな息子をハワイの大学へやり、妻や娘は日本に残してアメリカへ逃げようと計画していました。それを知った品子は母にそれを教えます。高男も、母に浮気されている父を尊敬しなくなったものの、ハワイへ行こうとしています。

 品子は同じバレエ団の男性ダンサーの野津に結婚を申し込まれるものの、品子の心には元バレエの先生だった香山への想いが断ち切れません。香山はバレエをやめて伊豆にいるという話です。一方、波子も竹原に心が揺れ、四谷見附の宿屋で迷っています。北鎌倉の家を売って、四谷見附の元の家の焼跡の土地に品子の舞踊研究所を建てようとしていた波子は、竹原にその計画を任せていたものの、北鎌倉の土地はすでに矢木が自分名義に書き換えているのではないかと考えた竹原は、友人として矢木と対決するために、宿屋で一線は越えません。

 日曜日、竹原が矢木家を訪ねますが、矢木は女中に命じ、竹原を追い払います。品子は東京の稽古場に行く支度が出来たので、急いで竹原を追いかけて北鎌倉駅に向かいます。矢木が家の名義を書き換えていたことを調べた竹原は、波子にそれを伝えるように品子に頼みます。品子は次の大船駅で降り、伊東行きの湘南電車にとっさに乗り、伊東駅からバスに乗ります。途中で日が暮れると、品子は思ったのでした。

参考文献

小谷野敦『川端康成伝-双面の人』(2013.中央公論新社)

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