始めに
ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
語りの構造
本作は書簡体小説です。
最初の4章は、ジョナサン=ハーカーの日記です。ほかにジョナサンの婚約者ミナ、ルーシーの婚約者アーサーや主治医のセワード、またジョン=セワード、などの日記としてテキストが展開されます。
ルーシーは饒舌な語り、セワードはビジネス調の語り、ハーカーは礼儀正しい語りを展開します。
モデル
ドラキュラ伯爵のモデルは特定されていません。ハリー=ラドラムなどによる、15世紀のワラキア公国の君主であるヴラド=ツェペシュ(ヴラド3世)がモデルであるとする説が世間的に有名です。ブダペシュト大学の教授であったヴァーンベーリ=アールミンが、ストーカーに、ヴラド三世について教えていた可能性があるとされます。
しかしストーカー自身が明かしているわけではないため、モデルは依然明らかでありません。
侵略文学
ドラキュラ伯爵のヴィクトリア朝イングランドへの移住は、侵略文学、人種汚染の象徴として解釈されやすいです。
侵略文学(Invasion literature)は、イギリスの『The Battle of Dorking: Reminiscences of a Volunteer』(1871年)などが皮切りになって定着しました。これはドイツによるイングランド侵攻を描いたものです。
本作も、同様にドラキュラのイギリス侵略を描きます。
病と吸血鬼
吸血鬼の伝承の例からしてそうなのですが、吸血鬼は本作でも病と結びつけられて解釈されやすいです。
にんにくなど栄養価の高いものに弱いなど、吸血鬼における病の象徴性が垣間見えます。
また本作における吸血による衰弱などは性感染症、梅毒の特性と重なります。ストーカーも梅毒で亡くなったのではないかとされています。
ゴシック文学
作家ホレス=ウォルポールの『オトラント城奇譚』がゴシック小説の先駆となり、以降はこのジャンルが連綿と継承されました。
このジャンルで有名なのはポー『アッシャー家の崩壊』などで、ポーはこのジャンルを代表する作品を多く手掛け、ゴシック小説や墓地派を思わせる暗いムードやグロテスクな作風が特徴的です。また古典主義的建築をモチーフにしました。
本作もドラキュラ伯爵の住まう古典主義建築の居城が印象的です。
物語世界
あらすじ
イギリスの若い弁護士ジョナサン=ハーカーは上司の命令で、ロンドンの不動産を購入して移住しようとしているトランシルヴァニアの貴族ドラキュラ伯爵の元へ派遣されます。ジョナサンはカルパティア山脈の麓にある伯爵の居城で伯爵から歓待され、貴族としての振舞いや、博識さに惹かれます。一方で彼や城に不安も覚えます。
滞在は数日になり、好奇心旺盛な伯爵はイギリスのことやジョナサンのことをあれこれ尋ね、ジョナサンは婚約者のミナのことなどを話します。やがてジョナサンは城内で3人の女吸血鬼と出会い、伯爵が不死の怪物で、イギリスに向かおうとしていることに気づくも城に閉じ込められ、伯爵はイギリスに向けて旅立ちます。
数ヶ月後、イギリスに船長の遺体のみが残る無人のロシア船が入港します。ドラキュラ伯爵が乗り込み、船員全員を殺害していました。ドラキュラはジョナサンと取引した不動産を拠点にロンドンで活動し、ミナやその友人である若い女性ルーシー=ウェステンラを狙います。
毎夜、ドラキュラはルーシーの部屋に忍び込んでは生き血を吸い、彼女は衰弱していきます。ルーシーの婚約者アーサーや主治医のセワード、またルーシーに恋慕するモリスの3人は彼女を助けようとするものの、原因は分かりません。
やがてセワードから相談を受けた彼の恩師で、博識なオランダ人老学者エイブラハム=ヴァン=ヘルシング教授は、これが吸血鬼の仕業だと看破します。アーサーらは、ヘルシングの助言に従い、吸血鬼が嫌うニンニクをルーシーの家に飾るものの、ドラキュラはこれをかいくぐり家人を殺害し、ルーシーに吸血を行って死なせます。
一方、ジョナサンは城から脱出するものの、その時の怪我でブダペストの病院に入院します。ミナはジョナサンを探して現地を訪れ、彼から伯爵や城のことについて聞きます。また、2人は正式に結婚し、イギリスへ帰国します。
ヘルシングやアーサーらはルーシーの仇を討とうと、彼女を襲った吸血鬼の正体を探ります。そんな折、ヘルシングは帰国したミナよりジョナサンの話を教えられ、ドラキュラ伯爵について知ります。また、そこからルーシーが吸血鬼化したと判断し、アーサーらは不死の怪物となった想い人を討伐します。
一方ドラキュラは、精神障害者のレンフィールドを操ったり、デ=ヴィル伯爵という偽名でロンドン各所に不動産を購入し、そこに故郷の土を運んで安全なねぐらを増やします。ヘルシングらはドラキュラの隠れ家を見つけ出しては、そこに隠された土を浄化していきます。
やがてドラキュラはミナを狙い、レンフィールドを操作して彼女を襲います。しかし、吸血の最中にヘルシングらに踏み込まれ、黒い霧に姿を変えて逃亡します。ミナはドラキュラを討伐しなければ死後に吸血鬼化する呪いをかけられますが、それによってテレパシーでドラキュラと繋がりました。ヘルシングはミナに催眠術を掛け、ドラキュラの居場所を探ります。追い詰められたドラキュラはトランシルヴァニアへと逃亡します。
ジョナサンの案内でヘルシング一行はトランシルヴァニアの伯爵の城へと向かいます。先回りしてヘルシングは城内の女吸血鬼らを討伐し、他の仲間は下僕のジプシー達によって城内に運び込まれるドラキュラを急襲します。ジプシー達は抵抗するものの、一行はドラキュラが眠る箱を開け、ジョナサンがククリ刀でその首を切り落とし、モリスがその心臓にボウイナイフを突き刺します。
するとドラキュラの身体は粉々になり、塵と化します。ミナの吸血鬼化の呪いは解けるものの、モリスは最後の戦いで致命傷を受け、神に感謝して息絶えます。
最後に7年後に言及され、生き残った者たちは幸福になり、またジョナサンとミナは息子を授かり、その子にはモリスのファーストネームであるクインシーと名付けています。
参考文献
・風間賢二『ホラー小説大全』




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