始めに
ナボコフ『アーダ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
詩人としてのキャリアとモダニズム
ナボコフはもともとロシアのシンボリズムなどの前衛詩から影響されて詩作を試みていました。
そのため、ナボコフの文章は詩的に構築され、洗練されたデザインになっています。
またルイス=キャロル(『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』)やジョイス(『ユリシーズ』)のアフォリズム、言語的遊戯からの影響も顕著に受けています(ジョイスからはやがて離れます)。またシェイクスピアやプーシキン(『大尉の娘』『スペードの女王』)の詩作や演劇からも影響が大きいです。
プーシキン流自由主義
ナボコフは男の作家では珍しい(ほかに堀口大学とか)ですが、すごいファザコンで、お父さんを超素朴に尊敬しています。そして、父の影響で、自由主義の信奉者となりました。
大おじと繋がりがあり、自由主義を体現するロシアのロマン主義の作家であるプーシキン(『大尉の娘』『スペードの女王』)は、ナボコフにとって終生大切な存在となり、プーシキンを巡る下らない小競り合いでエドモンド=ウィルソンと絶交しました。
本作は主人公のヴァン・ヴィーンのロマンスを皮肉を交えて展開していきます。
語りの構造
本作はヴァン・ヴィーンという名の男の生涯と、その妹のアーダとの情事について、異質物語世界の語りによって語ります。
物語は、ヴァンが90代のときに書いた回想録の形をとっており、彼自身とアーダの欄外書き込みが散りばめられ、一部には無名の編集者による注釈があり、原稿が未完成であることを示唆しています。
物語世界
あらすじ
第1部: (1863–1888)
1884年、ヴァンとアーダは14歳と12歳で恋に落ちます。本書は、2人が実は従兄弟ではなく兄妹であることに気づくところから始まります。
アーダの母親はアーダが生まれる11か月前の1871年8月の日付が付けられた結婚式の写真を持っていて、屋根裏部屋の箱の中に、1871年12月の結婚式の日付を記した新聞広告が見つかります。またダンはその春から海外にいたことが、彼のフィルムリールから証明されていて、彼はアーダの父親ではありません。さらに、1869年から1870年にかけてマリーナが保管していた注釈付きの花アルバムが見つかり、そこには彼女がアクアと同じ時期に妊娠し、療養所に収容されていたことが、記されています。ヴァンの誕生日に、マリーナにデーモンから 99 本の蘭が届けられたこと、アクアがスキー事故で流産したこと、マリーナは失った子の代わりに妹に子供を預けたことが後に判明し、つまりマリーナはヴァンの母親で、デーモンとの情事はエイダが妊娠するまで続いたのでした。こうしてルセット (ダンとマリーナの子供) は両者の異母姉妹となります。
ヴァンは 1888 年の夏に 2 度目の訪問でアルディスに戻ります。ヴァンはアーダに別の愛人がいるのではないかと疑っており、また、ルセット が 2 人の情事に介入したりしてきます。
ヴァンはアーダが実は浮気をしていたことを知り、彼が知っている「ライバル」たちに復讐するためにアルディスから出ていきます。ライバルとは、アーダの年上で気の弱い音楽教師フィリップ=ラックと、粗野な隣人パーシー=デ=プレイです。
ヴァンは、タッパーという名の兵士とあらそい、決闘を挑んで負傷します。病院で、彼はフィリップ=ラックに偶然出会うが、彼は死にかけており、ヴァンは復讐する気にはなれません。その後、パーシー・デ・プレイがクリミア戦争で射殺されたという知らせがヴァンに届きます。
ヴァンは完全に回復するまで、パーシーの従妹であるコルデュラ・デ・プレイのマンハッタンのアパートで暮らします。二人の間には肉体関係があり、ヴァンはアーダへの感情による精神的ストレスから解放されます。
第2部: (1888–1893)
ヴァンは心理学の研究を深め、上流階級の売春宿「ヴィラ ヴィーナス」を何軒か訪れて過ごします。1892 年の秋、ヴァンへの愛を告白したリュセットは、アーダからの手紙をヴァンに持ってきます。手紙には、裕福なロシア人、アンドレイヴィンランダーからプロポーズを受けたと書かれていました。ヴァンが一緒に住もうと誘うなら、彼女はプロポーズを断るといいます。ヴァンはそうしてアーダと、ヴァンがアーダの古い学校の友人で、かつての恋人、コルデュラ=デ =プレイから購入したアパートで一緒に暮らすことにします。
1893 年 2 月、彼らの父であるデーモンが、彼の従兄弟 (アーダの父親とされているが、実際の義父) のダンが、恐ろしい幻覚発作の最中に自宅近くの森に裸で逃げ込んだことによる寒さで死亡したという知らせを持ってやって来ます。ヴァンとアーダの状況を把握したデーモンは、ヴァンに、アーダを「手放した」方がアーダは幸せになるだろう、そうしなければヴァンを勘当すると話します。
ヴァンはそれを承諾し、家を出て自殺を図るが、未遂になります。その後、彼はマンハッタンのアパートを出て、アーディスの元使用人キム・ボーアルネを追い詰めようとします。
第3部: (1893–1922)
アーダがアンドレイ・ヴィンランダーと結婚したため、ヴァンは1901年まで旅行や勉強をしていましたが、その年にリュセットが再びイギリスに現れます。彼女は、ヴァンがアメリカに帰るために乗船するのと同じ大西洋横断定期船、アドミラル・トバコフ号に自分も予約を入れていました。
彼女は航海中に彼を誘惑しようとしたものの、船上で見た映画「ドン・ファンの最後の情事」にアーダが登場したため、誘惑は失敗に終わります。その後、リュセットは睡眠薬を数錠服用し、トバコフ号から大西洋に身を投げ自殺します。
1905 年 3 月、デーモンは飛行機事故で死亡します。その年の後半、アーダとアンドレイはスイスに到着します。ヴァンは彼らと会い、リュセットの財産 を暴くことに取り組んでいるふりをしてアーダと情事を持ちます。彼らはデーモンの死により、アーダにアンドレイを捨てさせる計画を立てます。
しかし、スイス滞在中にアンドレイは結核にかかり、アーダは彼が回復するまで彼を捨てることはできないと考えます。ヴァンとアーダは別れ、アンドレイは結局結核でなくなります。
アーダはヴァンと会うためにスイスに戻ります。
第4部: (1922年)
この部分はヴァンの講義「時間の質感」から成り、ヴァンがアドリア海からヨーロッパを横断してスイスのモンルーでアーダに会うために車を走らせているときにテープレコーダーに録音したものと思われます。この録音は編集され、ヴァンとアーダの実際の出会いの描写と混合します。
ヴァンとアーダは最終的に再会し、一緒に暮らし始めます。
第5部: (1922–1967)
小説のこの部分は 1967 年に設定されています。
ヴァンは、アーダの変わらぬ存在とアーダへの愛情について語っています。ヴァンとアーダは死について会話を交わし、ヴァンは、基本的に完成しているがまだ完全には洗練されていないと考えている作品の修正を中断します。この本は、ヴァンとエイダが「ヴァニアダ、ダヴァ、またはヴァダ、ヴァンダ、アンダ」に融合するところでクライマックスを迎えます。
参考文献
・Brian Boyd”Vladimir Nabokov: The American Years”



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