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ポー「ウィリアム=ウィルソン」解説あらすじ

エドガー=アラン=ポー
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始めに

 ポー「ウィリアム=ウィルソン」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ドイツロマン主義の影響

 ポーはドイツロマン主義からの影響が顕著です。具体的にはホフマン、シラー、ゲーテ(『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』)などの作品から影響を受けました。

 ポーにはそこから幻想文学作品も多いですが、本作もそうした幻想的な物語になっています。

 また、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』など、語り手や視点人物の内的世界の混乱、混沌はシェイクスピアなどより継承する、ロマン主義文学に典型的モチーフですが、本作も語り手の強迫観念を描く内容です。

 またホフマンは『砂男』で信頼できない語り手を導入し、ポーもこれを得意としました。

分身譚

 本作は傲慢不遜なウィリアム=ウィルソンが、自らの分身であるウィリアム=ウィルソンというドッペルゲンガーに付きまとわれて、滅ぼされてしまうという物語です。

 ストーリーはワシントン・アーヴィングのエッセイ「バイロン卿の未完の戯曲」に由来し、これはジョージ・ゴードン・バイロンが友人シェリーの持ち込んできたスペインの戯曲を元に独自の戯曲を書こうとして挫折したことについて書いたものでしたが、これを下敷きにポーは本作をものしたのでした。

 おなじくドッペルゲンガーをテーマとする作品に、E.T.A.ホフマン『大晦日の夜の冒険』ドストエフスキー『分身』、ワイルド『ドリアン=グレイの肖像』などがあります。

ゴシック文学の系譜

 作家ホレス・ウォルポールの『オトラント城奇譚』がゴシック小説の先駆となり、以降はこのジャンルが連綿と継承されました。

 ポーも『アッシャー家の崩壊』など、このジャンルを代表する作品を多く手掛けたほか、本作もゴシック小説や墓地派を思わせる暗いムードやグロテスクな要素が特徴的です。

物語世界

あらすじ

 語り手はまず「ウィリアム・ウィルソン」と名乗り、これがあくまで自分の本名という「汚点」を原稿に記さないための仮の名前だと説明します。

 語りては自分の人生の晩年において破滅に陥ったと伝え、続いて自分の幼少期の回想に移ります。親に甘やかされたウィルソンは、とあるイギリスの村にある、エリザベス朝風の屋敷を持つ寄宿学校にいました。

 この学校でウィルソンは傲岸な性格から権勢を振るうものの、彼の意のままにならない者が一人だけいて、それが語り手自身と同姓同名のウィリアム・ウィルソンでした。彼は名前だけでなく、入学した日も生年月日も同じ、また姿形もよく似ており、そのために周りからは兄弟と噂されました。

 語り手は、自分よりも彼のほうが優れているのだと負い目を感じます。それに語り手は、自分が嫌う「ウィリアム・ウィルソン」という名前(仮名前らしいが、本名は似た名前であるといいます)が、彼がいることで二重に反復されるのも嫌でした。

 語り手と同じ名を持つウィリアムは、次第に語り手の癖を故意に真似して嫌がらせをします。しかし囁くような声しか出せず、そのために大声だけは真似できないものの、それ以外はそっくりまねてみせます。彼は語り手を庇護しているような態度で、遠まわしに語り手に助言を与えることもしました。

 ある時、語り手は夜にもう一人のウィリアムの寝室に忍び込み、彼の寝顔をランプで照らします。するとそこには自分自身としか思えないもう一人のウィルソンの姿がありました。驚愕して、語り手は学校を去るのですが、後に同じ日にもう一人のウィルソンも学校を去ったと知ります。

 その後、語り手は名門イートン校に入学、さらにオックスフォード大学へと進学しますが、放蕩生活にはまります。イートン校時代には、ウィリアム・ウィルソンの訪問を受けて驚かされ、オックスフォードではある貴族をイカサマ賭博でハメようとしたところ、突如もう一人のウィリアム・ウィルソンに暴露され、退学になります。

 語り手は彼から逃げるように次々と移っていくものの、どこまでも彼の追跡を受けて台無しにされます。

 そして語り手がローマでの仮面舞踏会に公爵夫人を誘惑しようと参加すると、同じ仮装をしたウィリアム・ウィルソンが現れます。語り手は逆上し、控えの間へ彼を連れ込んで刺してしまいます。

 そのとき、一瞬語り手はその部屋に巨大な鏡が現れたと錯覚するものの、それは死の間際にいるウィリアム・ウィルソンであり、彼ははっきりとした口調で伝えます。お前は私の中に存在していたのだ、私を殺すことによって、お前がいかにお前自身を殺してしまったのかを見るがいい、と。

参考文献

・佐渡谷重信『エドガー=A=ポー』

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