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シュニッツラー『輪舞』解説あらすじ

シュニッツラー
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始めに

シュニッツラー『輪舞』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

シュニッツラーの作家性

 フロイトはシュニッツラーを「自分のドッペルゲンガー」と呼びました。交友のあった2人ですが直接の影響よりも、シュニッツラーは文学的直感によってフロイトと同じ深層心理に到達していました。


​ ​モーパッサンからは、文体や構成の影響を受けています。​ロシア文学、特にドストエフスキーの深い心理洞察は、シュニッツラーに大きな感銘を与えました。


​ ​初期のシュニッツラーは、当時流行していた「自然主義」からも刺激を受けました。ただし、シュニッツラーはそこから象徴主義的方面へ進みます。


​ ​カフェ=グリンシュタイドルに集まった文学グループからの相互影響があり、ホーフマンスタールやヘルマン=バールから刺激されました。

夢と現実。エロスとタナトス

 ​作品全体を貫く問いは現実の行動と、心の中で見た夢にどれほどの差があるのかという点です。​主人公のフリドリンは夜の街で現実の誘惑に晒され、妻のアルベルティーヌは夢の中で残酷で官能的な不実を経験します。夢もまた、経験された現実の一部であるという認識を提示しています。


​ ​表面的には仲睦まじい市民階級の夫婦が、互いに隠し持っていた性的な冒険願望を告白し合うことで、平穏な日常が崩壊する恐怖を描いています。最も親密なはずのパートナーが、実は全く理解し得ない他者であることを突きつけられます。
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 またフロイト的な生と死の結びつきが色濃く反映されています。​フリドリンが迷い込む秘密の仮面舞踏会は、官能的な享楽の場であると同時に、一歩間違えれば命を落とす死の香りが漂う場所です。​性的興奮と死への恐怖が隣り合わせにあることで、人間の生命力が描き出されます。


​ ​物語の中で象徴的に使われるのが仮面です。​仮面を被ることで人は社会的な責任から解放され、抑圧された本能を解放します。​しかし、仮面を脱いだ後の裸の自分をどう受け入れるかという問題が、最後には夫婦に突きつけられます。

物語世界

あらすじ

 ​医師のフリドリンと妻のアルベルティーヌは、幼い娘を持つ誰もが羨む幸せな夫婦でした。しかしある夜、ふとしたきっかけで、二人は過去に他の異性に対して抱いた一瞬の激しい性的な幻想を告白し合います。この告白によって、平穏だった二人の間に亀裂が走り、フリドリンは嫉妬と復讐心に近い衝動を抱えたまま、急患の呼び出しで夜の街へ飛び出します。


​ ​夜のウィーンを彷徨うフリドリンは、現実とも夢ともつかない奇妙な出来事に次々と遭遇します。誘惑してくる娼婦との出会い。怪しげな貸衣装屋の主人の娘とのやり取り。そして、旧友から聞いた「秘密の仮面舞踏会」への潜入。舞踏会は、正体不明の男女が仮面を被り、怪しげな儀式と乱交にふける背徳の場でした。部外者であることが露呈し、危機に陥ったフリドリンでしたが、一人の謎の女性が身代わりになることで解放されます。


 ​フリドリンが現実の夜を彷徨っている間、家にいたアルベルティーヌは恐ろしい夢を見ていました。その夢の中で、彼女は夫フリドリンが拷問され、処刑されるのを冷酷に笑いながら眺め、自分は他の男たちと快楽にふけっています。帰宅したフリドリンは、泣きながら目覚めた妻からこの残酷な夢の内容を聞かされ、現実の自分の行動と妻の夢の中の不実が奇妙に重なり合うことに戦慄します。


​ ​翌日、フリドリンは昨夜の謎の女性の行方を追いますが、遺体安置所で彼女らしき女性の死体を目にし、深い虚脱感に襲われます。


 彼はついに耐えきれなくなり、昨夜の自分の体験をすべて妻に告白します。二人は、自分たちの絆がいかに脆く、同時に人間の精神がいかに複雑であるかを悟ります。​朝の光の中で、アルベルティーヌはこう締めくくります。​「今、私たちはようやく目が覚めたばかりなのよ」と。

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