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ザミャーチン『われら』解説あらすじ

ザミャーチン
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始めに

ザミャーチン『われら』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ザミャーチンの作家性

​ ザミャーチンはウェルズを非常に高く評価しており、彼についての評伝も執筆しています。ウェルズの『タイム・マシン』や『眠れる人が目覚める時』から、未来社会の設定を使って現代を批判する手法を学びました。


 ドストエフスキーからの精神的影響は大きいです。​『カラマーゾフの兄弟』における「大審問官」の章の「自由を捨ててパン(幸福)を取るか、苦悩を伴う自由を取るか」という葛藤は、ザミャーチンの代表作『われら』のテーマです。​『地下室の手記』における合理主義に反旗を翻す姿勢は、『われら』の主人公D-503の葛藤に反映されています。


​ ​ザミャーチンはネオ・リアリズムの旗手でもありました。アレクセイ=レミゾフから、ロシアの古い民話的な語り口や、イメージを凝縮した独特の文体を吸収しました。


​ アナトール=フランスの皮肉と、権威に対する冷ややかな視点も継承します。


​ また造船技師でもあったザミャーチンにとって、科学理論も重要でした。非ユークリッド幾何学、​熱力学第二法則(エントロピー)などが重要なモチーフとなります。

自由と幸福

​ ​物語の核心は、人間は自由を捨ててこそ、数学的に確実な幸福を得られるという極端な功利主義への問いかけです。自由な意志は迷いや過ちを生むため、すべての行動を時間割で管理し、個人の「I(私)」を「We(我ら)」へと溶け込ませることで、苦悩を消し去ります。自由な不幸と不自由な幸福のどちらを選ぶかという、『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」が提示した問いをSFの設定で再現しています。

 ​ザミャーチンは物理学の概念を社会論に持ち込みました。​エントロピー(静止)は国家が目指す完全な秩序で、それは変化のない「死」の状態を意味します。エネルギー(革命)は秩序を破壊し、新たな命を吹き込む力で、ザミャーチンは革命に最後の一回はなく無限に続くべきものとし、完成して止まってしまった社会を批判しました。

抑圧と幸福

 主人公D-503の葛藤を通じて、論理の世界では説明できない人間らしさを描いています。国家にとって真理は常に一つですが、主人公は恋や嫉妬といった割り切れない感情に目覚めてしまいます。単一国家において、想像力や魂を持つことは病気と見なされます。結末で施される大手術は、人間から不確実性を排除し、機械に変える行為の象徴です。

 ​単一国家を囲む「緑の壁」は、高度に文明化された空間と、外側の混沌とした自然界を隔てています。​壁の外側には原始的な森、毛むくじゃらの人々、情熱、予測不能な生命力がいて、 この壁は理性によって抑圧された本能の境界線でもあります。


 ​ザミャーチンは、ソ連初期の全体主義化をいち早く察知し、完成された楽園がいかに人間を窒息させるかを警告しました。

物語世界

あらすじ

 日記形式で綴られる物語です。数学者であり、宇宙船インテグラル号の設計者D-503が主人公です。


​ ​舞台は26世紀。人類は単一国家という巨大な都市で暮らしています。建物はすべてガラス製。プライバシーはなく、すべての行動は国家に監視されています。セックスの時間だけはカーテンを閉める権利が与えられます。人々には名前がなく、「D-503」のような番号で呼ばれます。全市民が同じ瞬間に起き、同じ瞬間にスプーンを口に運び、同じ瞬間に散歩します。


​ ​忠実な市民だったD-503は、ある日、魅惑的でミステリアスな女性I-330に出会います。​彼女は法律で禁じられた酒や煙草を嗜み、古風な服を着て彼を誘惑します。​彼女との接触を通じて、D-503は数学的に説明できない愛や嫉妬、そして単一国家では病気とされる「魂」を持ってしまいます。
​ 

 I-330は、国家を転覆させようとする秘密組織「メフィ」のメンバーでした。​彼女はD-503を利用して、彼が建造している宇宙船インテグラル号を乗っ取り、外の世界の「野生」と合流させようと計画します。


 ​D-503は、管理された幸福な家畜としての自分と、苦悩に満ちた自由な個人としての自分の間で激しく揺れ動きます。


​ ​反乱計画は密告により失敗に終わります。指導者「恩人」は、混乱を収めるために全市民に命令を下します。想像力を司る脳の一部を切除する手術(大手術)の義務化です。

 ​D-503は強制的に手術を受け、脳から想像力と感情を奪われます。手術によって「正常」に戻ったD-503は、かつて愛したI-330が拷問され、処刑される様子を、何の感情も抱かずに平然と見守ります。彼はこう確信します。「理性が勝たねばならぬ。なぜなら、2+2は4だからだ」

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