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グレアム=グリーン『静かなアメリカ人』解説あらすじ

グレアム=グリーン
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始めに

グレアム=グリーン『静かなアメリカ人』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

グリーンの作家性

 グレアム=グリーンはカトリックの中間小説的作家です。その精神的な柱となったのがフランスの作家モーリアックです。 モーリアックはキリスト教の中心には罪人がいるという視点で人間を描きました。聖人ではなく、救いがたい罪人の中に神の慈悲があるというグリーンの逆説的な信仰観は、モーリアックの影響が見えます。

 グリーンはマージョリー=ボウエン『ミラノの毒蛇(The Viper of Milan)』を読んだグリーンは悪が勝利し、完璧な裏切りが成功する結末に衝撃を受けました。ここから主題について影響をうけました。

 
​ ​グリーンはヘンリー=ジェイムズの写実主義、スティーブンスンのロマン主義にも刺激されました。またスパイ小説やリアリズム要素などはコンラッドからの影響があります。

アメリカと西欧

 アメリカ人パイルが持つ善意や民主主義への純粋な信仰が、現地の状況を無視した結果、かえって凄惨な悲劇を引き起こす様子を描いています。 グリーンは、パイルのような自分が正しいと信じて疑わない若者が、他国の複雑な事情に介入することの恐ろしさを批判的に描きました。


 ​主人公の英国人記者ファウラーは、最初は自分はただの観察者だと決め込み、中立を保とうとします。物語が進むにつれ、ファウラーは傍観者でいられなくなります。愛する女性フオンや正義を守るために、彼は最終的に選択を迫られます。個人のモラルと政治的な決断が切り離せないことを示唆しています。


​ 古いヨーロッパである英国・フランスは既に疲れ切り、シニカルで、現地の現実を知りすぎているファウラーたちが象徴します。新しいアメリカは若く、理想に燃え、第三勢力を支援して世界を救おうとするパイルが象徴します。この対比は、当時の世界の覇権がヨーロッパからアメリカへと移り変わる過渡期の緊張感を反映しています。


​ ヒロインのフオンは、しばしば西洋諸国に翻弄されるベトナムそのもののメタファーとして解釈されます。​パイルとファウラーが彼女を奪い合う構図は、アメリカとヨーロッパが自分たちの価値観をベトナムに押し付け、所有しようとする政治的構図と重なります。

物語世界

あらすじ

 主人公の英国人ジャーナリスト、ファウラーは、ベトナム人女性のフオンと暮らしながら、シニカルに戦争を眺めていました。そこに、若く理想に燃えるアメリカ人パイル(「静かなアメリカ人」)が現れます。


 ​パイルはフオンに一目惚れし、彼女を救い出す(結婚してアメリカに連れて行く)と宣言します。こうして、老練な英国人と純真なアメリカ人の間で、一人の女性をめぐる奇妙な対立が始まります。
 
​ パイルにはもう一つの目的がありました。それは、共産主義でも植民地主義でもない第三勢力を支援し、ベトナムに民主主義をもたらすことです。彼は本で読んだだけの未熟な政治理論を信じ、現地の将軍に爆薬を横流しします。


​ ある日、サイゴンの中心部で凄惨な爆破テロが起きます。パイルの信じた第三勢力が引き起こしたものでしたが、パイルは自分の責任を認めず、これは民主主義のための必要な犠牲だと、なおも理想を語ります。​その無垢ゆえの残酷さに恐怖を感じたファウラー。

 ​ファウラーはパイルを罠にかけ、彼が殺害されるのを黙認します。邪魔者がいなくなったファウラーのもとにフオンは戻り、彼は望んでいた生活を手に入れますが、その心には消えない後悔と虚しさが残ります。

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