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フラナリー=オコナ―『賢い血』解説あらすじ

フラナリー=オコナ―
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始めに

 フラナリー=オコナ―『賢い血』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

オコナ―の作家性

 オコナーの作品の根底には、カトリックの厳格な世界観があります。​トマス=アクィナス『神学大全』の影響で「本質」を捉える視点を継承します。​ジャック=マリタンはフランスのカトリック哲学者で、彼の著書『芸術とスコラ学』は、オコナーにとっての創作のバイブルでした。


​ ​​オコナーはまた、フローベールの徹底した写実主義と、文体へのこだわりを称賛していました。​ヘンリー=ジェイムズにおける視点の厳格な制御について学びました。​キャロライン=ゴードンからも示唆を受けました。


​ ​ほかにホーソーンのゴシック、象徴主義的な手法に影響を受けました。ドストエフスキーの保守主義にも刺激されました。フォークナーの南部ゴシックからも影響が顕著です。

賢い血とは

 主人公ヘイゼル=モーツは、「キリストのいない教会」を設立しようと奔走します。彼は徹底して無神論を説き、救済を拒絶しようとしますが、その必死さこそが、彼がどれほど強く神を意識しているかを逆説的に証明してしまいます。ヘイゼルにとって、キリストを否定することは単なる無関心ではなく、激しい戦いです。オコナーは、どれほど否定しようとも、魂が神を求めてしまう人間の本質としての原罪と恩寵を描きました。
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 タイトルの「賢い血」は、登場人物の一人エノク=エマリーが持つ血筋としての直感を指しています。都会の即物的な生活の中でも、人間の中には説明のつかない原始的・本能的な渇望があることを示しています。エノクが博物館からミイラを盗み出し新しいキリストとして崇めようとする行為は、信仰を失った現代人がいかに滑稽で不気味な代用品を作り出すかを皮肉っています。

​ 作品全体を通して「目」が重要な象徴となっています。 ヘイゼルは最初、車を頼りに自分の力でどこへでも行けると考えています。しかし、最終的に彼は自ら失明を選びます。 肉体の目を潰すことで、初めて彼はそれまで拒絶していた霊的な真実を見つめるようになります。これはオコナーが好んだ、暴力的な衝撃を介してのみ、頑固な魂は恩寵を受け入れるというパターンです。

物語世界

あらすじ

 ​第二次世界大戦から復員した青年ヘイゼル=モーツは、説教者だった祖父の影(「イエスはお前の魂を求めている」という強迫観念)から逃れるため、信仰を捨てる決意をします。彼はタウリンビルという街へ向かい、自らを「説教者」と称して、キリストのいない教会を設立すると宣言します。「罪はない。救いは必要ない」​「救済などないという真実」を人々に説こうとします。


​ ​ヘイゼルは街で、彼の反宗教をかき乱す奇天烈な人々と出会います。​エイサ=ホークスは信仰のために自分の目を潰したと称する盲目の説教者です。ヘイゼルは彼に反発しながらも、執着します。


 ​サバス=リリーはエイサの娘で、不道徳で世俗的な少女で、ヘイゼルを誘惑しようとします。エノク=エマリーは孤独な青年で、自分の血の中に宿る「賢い血」、すなわち本能に従い、ヘイゼルを勝手に師と仰ぎます。彼は博物館から盗み出した「縮んだミイラ」を、ヘイゼルの教会の新しいイエスとして捧げようとします。


 ​ヘイゼルの活動はうまくいきません。彼の無神論を金儲けに利用しようとする詐欺師(フーヴァー=ショーツ)が現れ、ヘイゼルの偽物を用意して説教を始めさせます。


​ 激昂したヘイゼルは、自分の偽物を殺害し、さらに警察官に唯一の心の拠り所だった中古のエセックスを崖から突き落とされます。


 逃げ場を失い、自らの無力さを突きつけられたヘイゼルは、皮肉にもかつて自分が軽蔑した盲目の説教者の真似をするように、生石灰で自らの両目を潰します。


 ​彼は下宿の女主人フローッド夫人のもとで、靴の中に石やガラスを入れ、体に有刺鉄線を巻きつけるといった過酷な苦行を続けながら静かに死んでいきます。夫人は、失明したヘイゼルの虚ろな眼窩の奥に、これまで自分が見ることのできなかった何かを感じ取るのでした。

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