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谷崎潤一郎『蓼食う虫』解説あらすじ

谷崎潤一郎
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始めに

谷崎潤一郎『蓼食う虫』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

象徴主義(ワイルド)と古典主義(スタンダール)、ヴィクトリア朝文学(ハーディ)

 谷崎潤一郎は英仏の象徴主義、古典主義からの影響が顕著です。オスカー=ワイルドの作品は『ウィンダミア卿夫人の扇』などを共訳で翻訳していますし、『サロメ』的なファム=ファタールを描いた『痴人の愛』もあります。ワイルドの戯曲作品のような、卓越したシチュエーションのデザインセンスとその中での心理的戦略的合理性の機微を捉えるのに長けているのが谷崎文学の特徴です。

 スタンダール(『赤と黒』)的な心理劇、古典主義も谷崎の顕著に影響していますし、またウィルキー=コリンズに影響されつつ、ダイナミックなリアリズムを展開したハーディ(『ダーバヴィル家のテス』)からの影響も顕著です。

 この辺りはフォロワーの河野多恵子(「」)、円地文子(『朱を奪うもの』)、田辺聖子(「感傷旅行」)などへと継承されます。

伝記的背景

 1930年8月、佐藤春夫との間で「細君譲渡事件」があり、これは谷崎の妻の千代を巡る「小田原事件」の決着となり、千代を譲りました。嵩夏のモデルが佐藤春夫とされています。

 本作の発表はこれに先駆けるものですが、とはいえ冷めきった夫婦の関係、妻の不倫、妻の相談相手の存在など、多分にこの伝記的背景が手伝っています。

三角関係

 現実において三角関係を経験した谷崎において、三角関係のなかでの心理劇は得意とする手法となりました。それは『』『』などにも描かれます。

 天敵(?)である夏目漱石(『こころ』『行人』)や、彼が私淑したヘンリー=ジェイムズ(『鳩の翼』)のように、心理劇のシチュエーションデザインの手腕に、谷崎は秀でていました。

物語世界

あらすじ

 要と美佐子の夫婦仲は冷え切っています。幼い子供、弘の前では取り繕うものの、美佐子は恋人である阿曾の住む須磨に通っています。ある日、義父から人形浄瑠璃の見物に誘われ、夫婦で出掛けます。要は人形の動きに惹かれ、義父の愛人のお久のことも人形のようだと思い、惹かれます。

 要の従弟の高夏が要の家に来ると、要と美佐子はそれぞれ離婚について相談。高夏は弘を連れて東京に行きます。

 義父とお久が淡路の人形浄瑠璃を見に行くのに要も同行します。義父とお久の関係がうらやましく思われました。義父たちと別れた要は、神戸でなじみの娼婦ルイズと会います。

 要が離婚の件を義父に手紙で書き送ると、義父は驚いて夫婦を京都の自宅に呼びます。義父は美佐子と2人で話したいと言って、近くの懐石料理店に出掛けるのでした。

参考文献

・小谷野敦『谷崎潤一郎伝 堂々たる人生』(中央公論社.2006)

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